Cはコミューター・スクーター、Eはエレクトリック、では04は何だろう?|BMWの電動スクーター、CE04の実力を検証

BMWにとって電動スクーターの第2弾となるCE04は、既存のCエボリューションに対して、いろいろな面でダウンサイジングを敢行している。もっとも筆者はこのモデルを通して、電動バイクの難しさを実感することとなった。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

BMW CE04……1,610,000円~

上記の161万円はホワイトカラー車で、今回試乗したマジェラン・グレー・メタリックカラー車は163万9000円。

急成長を遂げている電動バイク市場

 かつてと比べると少なくなったけれど、老舗と呼ばれる2輪雑誌の多くは、世界のバイクが一望できるカタログ本、あるいはそういった特集記事を、年1回のペースで製作している。僕が十年ほど前から関与しているカタログ本の場合は、メーカー別ではなく、オンロード、アドベンチャー、クルーザーなど、ジャンル別に掲載しているのが特徴で、それらの中で最近になって急激な成長を遂げているのが、モーター+バッテリーが動力源の電動バイクである。

 具体的な話をするなら、2015年頃は1ページ/数台だった電動バイクのスペースが、昨今は10ページ前後/30台以上に増えているのだ。しかも掲載車両のほとんどは、バイク好きには馴染みが薄い新興メーカー製で、既存の2輪メーカーはまだ様子見といった印象。そんな中で、コミューターの範疇に収まらない趣味性を考慮した電動バイクに、早い段階から積極的な姿勢を示している貴重な2輪メーカーが、ヨーロッパでは2014年、日本では2017年にCエボリューションの発売を開始した、ドイツのBMWである。

 もっともBMWの電動バイクは、2022年型として登場したCE04で2台目なので、ラインアップの幅広さという点ではZERO-MOTORCYCLESやSUPER SOCO、Gogoroといった新興メーカーには及ばない。とはいえ、時代の変化に柔軟に対応し、2輪メーカーとしての矜持を示す同社の姿勢に、僕としては頼もしさを感じているのだった。

普通2輪免許でOKで、車検は不要

 CE04の最大の注目要素はモーター+バッテリーを動力源としていることだが、実際にこのモデルと対面したら多くの人が驚くのは、未来的にして独創的なルックスだろう。BMW自身のCエボリューションも含めて、これまでに販売されたモーター+バッテリー車の多くが、既存のバイクやスクーターに通じるルックスだったのとは異なり、CE04は見るからに特別なのだ。おそらく、このモデルで多くの人が集まる都市部を走ったら、“なんだあれは?”という感じで、かなりの注目を集めるんじゃないだろうか。

 ちなみに、CE04という車名を分解して考えると、CはBMWのスクーター用の記号で、EはElectricの略である。そして04は電動バイクの4番目かと思いきや、400ccクラスのレシプロエンジンスクーターに相当する動力性能を意味するとのこと。ただしCE04は、日本の法規では軽二輪扱いになるので、251cc以上のような車検は不要だ。

 CE04の特性を把握するうえで、最も簡単な手法は、前任に当たるCエボリューションとのスペックの比較だろう。以下に重要な項目を記すと、装備重量は275→241kg、満充電での航続可能距離は160→130km、最高速は129→120km/h、定格/最高出力は26/48→20/42ps、最大トルクは72→62Nmに変化。欲張りな感があったCエボリューションとは異なり、CE04では現実の使用環境を考慮して、いろいろな意味でダウンサイジングを行っているのだ。

 なおリチウムイオンバッテリーは、133→148Vに高電圧化を図りつつ、容量を約35%縮小している。その最大の理由は軽量化のようだが、バッテリー容量の縮小は充電時間の短縮にも大いに貢献。BMW純正のWallboxや200V用の設置型普通充電器(Mode3)を使用した場合、Cエボリューションでは80%:約3時間/100%:約4時間が必要だったのに、CE04なら約1時間/約1時間20分(いずれもBMWの参考データ)。残念ながら、日本で普及が進んでいる急速充電器のCHAdeMOには非対応だが、利便性という面でも、CE04は大幅な進化を果たしているのである。

電動ならではの魅力が実感できる

 電動バイクは面白くない。世の中にはそんな意見の人がいるようだけれど、バイクの面白さはパワーユニットだけで決まるものではなく、レシプロエンジンでもつまらないモデル、電動にも面白いモデルは存在する。ではCE04がどうなのかとう言うと、僕自身の電動バイクの経験が少ない……という事情はあるのだが、非常に面白かった。

 まずは誰もが気になるモーターの印象を記すと、思わず、笑っちゃうほどパワフルである。0−50km/h加速が2.6秒という数値は伊達ではなく(Cエボリューションは2.8秒)、迂闊にスロットルを大きくひねると、頭が後方にのけ反り、ハンドルから手が離れそうになるのだ。もっとも、だからと言って操作がシビアなわけではない。スロットルをジワッと開ければモーターはジワッと反応するし、4種のライディングモードの中から反応が穏やかなエコかレインを選べば、加速も自ずと穏やかになる。いずれにしても調教は行き届いているので、どう扱うかは乗り手次第だろう。

 レシプロエンジンとの大きな違いとして、僕が興味を惹かれたのは、スロットルを戻した際に発生する回生ブレーキだ。まずTFTモニターに表示されるエネルギーの回収度合を観察するのが楽しいし、慣れてくると通常のブレーキをあまり使わず、強めのエンジンブレーキを制御するような感覚で、スロットル操作だけで加減速をするのが面白くなってくる。ちなみに回生ブレーキの利き方は、ダイナミックとエコが強め、ロードが普通、レインが弱めという印象で、個人的にはロードが最も自然で扱いやすかった。

 一方の車体に関しては、普通に乗っているぶんにはナチュラルでフレンドリーなのだが、その気になって峠道を飛ばし始めると、曲がらない?と感じる場面に何度か遭遇した。その主な原因は、1675mmという長大なホイールベースと(Cエボリューションは1610mm)、フロア下にバッテリー下を敷き詰めたことによる極端な重心の低さのようで、このあたりは改善の余地がありそう。とはいえ、峠道におけるCE04のハンドリングは、丸太に乗って川下りをするかのような楽しさがあって、僕は決して嫌いではない。

購入のハードルは相当に高い?

 そんなわけでCE04に好感を抱いた僕だが、試乗後にインターネットで電動バイクの充電環境を調べたところ、何となく微妙な気持ちになってしまった。と言うのも今現在の日本で、電動バイクで快適なツーリングを楽しむには、事前の充電スポットの下調べが必要で、しかもレシプロエンジン車のように、サクッと給油して出発は出来ないのである(充電時間自体が長いし、順番待ちの可能性もある)。

 もちろん、自宅に充電環境を整えるのが大前提で、都市部の移動がメインのコミューターとして使うのであれば、そのあたりは問題にならないだろう。ただし、価格が161万円~、装備重量が241kg、軸間距離が1675mmのCE04を、コミューターとして使うためには、ある程度以上の財力と体力が必要で、一般的な日本人ライダーの視点で考えると、購入のハードルは相当に高いのではないかと思う。

ライディングポジション&足着き性(182cm/74kg)

現代の400cc前後のスクーターの基準で考えると、シートはやや高めの800mm。両足がベッタリ接地するためには、175cm以上の身長が必要だ。なお既存のCエボリューションは765mm、レシプロエンジンのC400GT/Xは775mmだったから、このモデルでは足つき性に対する配慮は、あまり行われなかったのかもしれない。

ディティール解説

ホワイトカラー車はオーソドックスなクリアだが、マジェラン・グレー・メタリックカラー車のスクリーンはオレンジ。ヘッドライトは4灯式LED。サイドパネルはどことなく、ウイングレットを思わせる構成だ。
横長のTFTフルカラーモニターは10.25インチ。この写真ではバッテリー残量を大きく表示しているが、走行中は出力ゲージ/回生ブレーキの状況観察が楽しかった。
レッグシールド左側のラゲッジボックスは電磁キー式で、内部に見えるETC2.0車載器は日本仕様独自の標準装備品。右側には充電用ソケットが設置されている。
付属する充電器は200V普通充電に対応。なお一般家庭に単相200Vを導入する費用は状況によりけりで、最小は1万円前後だが、最大だと10万円以上になる模様。今回の取材中は、編集担当自宅のエアコン用コンセントがら充電を行なった。
左右スイッチボックスの基本構成は他のBMWと共通。左側の中央に見えるのはR=リバースボタン。電動バイクの場合、リバース機構の導入は比較的簡単なのである。
スロットルはライドバイワイヤ式。グリップヒーターの利きのよさと違和感の無さは、長きに渡ってこの機構にこだわってきたBMWならではと言いたくなる仕上がり。
スケートボードを思わせるシートは決して肉厚ではないものの、前後に自由に動けるからだろうか、意外にストレスは感じなかった。日本仕様はシートヒーターを標準装備。
シート下にはヘルメットが収まるトランクスペースを設置。ここにバッテリーを搭載すれば航続距離が伸びるし、このスペースを無くせばシートが下げられそうな気が……?
リアホイールはディッシュタイプ。タイヤサイズはCエボリューションと同じ120/70R15・160/60R15で、試乗車が履いていたのはマキシスSUPERMAXX SC。
フロントブレーキはφ265mmダブルディスクで、ラジアルマウント式4ピストンキャリパーはスペンのJ.JUAN。φ35mmフォークはショーワが生産を担当する。
直押し式のリアショックは魅せることを意識したデザインで、調整機構は無段階のプリロードのみ。
スイングアームは片持ち式。Cエボリューションと同じく、後輪駆動にはコグドベルトを使用する。

主要諸元

車名:CE04
全長×全幅×全高:2285mm×855mm×1150mm
軸間距離:1675mm
シート高:8000mm
キャスター/トレール:26.5°/120mm
モーター型式:液冷オルタネーター/永久磁石式同期電動機
定格出力:15kw(20ps )
最高出力:31kw(42ps)/4900rpm
最大トルク:62Nm/0~4900rpm
最高速度:120km/h
0-50 km/h加速:2.6秒
走行可能距離:130km (WMTCに準拠)
バッテリー:空冷リチウムイオン高電圧
バッテリー電圧:148V
駆動方式:ベルトドライブ
フレーム形式:スチール製ダブルクレードル
懸架方式前:テレスコピック式φ35mm
懸架方式後:直押し式モノショック
タイヤサイズ前後:120/70R15 160/60ZR15
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:231kg
乗車定員:2名

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…