道ゆく人がニヤリとするカタチ。(ロングツーリングはたぶん向かないけれど)「ガンナー125」ってこんなヤツでした!|試乗記

フェニックスエンジニアリングの「ガンナー」に新たに125ccモデルが追加された。一度見たら二度と忘れられない個性のカタマリ、筒型形状のカラフルボディを股間で挟みこみながら、街中と河川敷を走ってみました!

REPORT●宮崎正行(MIYAZAKI Masayuki)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●moto shop クロニクル(https://chronicle521.com/)

フェニックスエンジニアリング・GUNNER125……360,800円(消費税込み)

50/100に加えて125ccモデルが新たに追加

 レジャーバイク。そんなカテゴリーがかつてあった。その定義はかなり曖昧だけど、公道を走るモデルとしては1967年生まれのモンキーZ50Mあたりまでさかのぼるのだろう。そしてこちら「ガンナー」は2020年デビューの50/100ccモデルが“初代”。ひと目見ただけで「うわっ、可愛くてなんだか楽しそう!」となるのがレジャーバイクと勝手に定義すれば、このガンナーはその資格十分だ。

 50年以上の時を経て南国タイで生まれたこのガンナーに、年新たに125ccモデルが追加された。

しっかりモーターサイクルなライポジ

50/100ccモデルからのメジャーな変更点はエンジン形式だ。横型から縦型へと積み直された空冷単気筒エンジンはルックスの印象を少しだけ変え、ファニーなレジャーバイクにちょっとだけシリアスさが足された感じである。とはいえ、そもそもの“砲身”なフレーム形状が形状だけに、ちょっと笑っちゃう3の線イメージは相変わらずキープされている。どのモデルもキャブレター仕様というところに、カスタムへの将来性を感じるライダーもきっといるはずだ。

実際にまたがってみると、スリムなボディは見た目に感じるほど華奢ではない。前後12インチタイヤが遠目には“小さなバイク”と思わせていまうが、タイトなシートに着座して両手でハンドルを握ってみると、想像していたよりもずっとナチュラルなライディングポジションだ。「これはモーターサイクル」ということが直感できる。ボディの全長1770mmは、ホンダ・モンキー125のそれよりも60mmほど長い。

タンデムはもれなくラブラブ付き!

シート自体は低くもなく高くもなく(スペック非公表)、足着きのことはほとんど意識しなかった。もともとシート幅がタイトなので両脚がストンと真下に下ろせることも好影響しているだろう。

そうそう。タンデムステップが設けられて、二名乗車が可能になったこともトピックだ。シートも少ーしだけロングになって、密着度の極めて高い激しく“ラブラブ”イメージなタンデムができる仕様にバージョンアップした。にしてもこのタイトさ……乗せる相手を選びそう。ガンナー125でタンデムすることはつまり、しっぽり(死語)とした抱きつきタンデムが大前提ということになる。

セルでもキックでも一発で目覚める単気筒エンジンのサウンドは、50/100ccモデルに増して迫力と低音が分かりやすくなっていた。横型エンジンのノンビリした優しげな雰囲気も捨てがたいが、125ccのボリューム感、スポーツ感もバイクらしくて楽しくなってしまう。スタンダードなクラッチレバー付きミッション車の愉快さって絶対にあるよな、とひとり言を言いつつ発進。

トルクフルになって運転が楽チンに

そっとクラッチレバーをつないだら、想像よりもずっとイージーに車体が前に出る。原付なりのトルクの細さを裏切って、クイッと加速してくれる様子が頼もしい。「4スト125cc車なんて1980年代に乗ったきり」なんて人は、いまどき125ccマシンのパワフルさにきっと驚くだろう。それでも各ギアで無理に引っ張らずに、ほどよく頃合いでシフトアップが自然体でイイ感じ。ムリしないのがガンナーらしい。

交差点の右左折でのハンドリングは存外、スムーズだった。スパッと曲がってからの高い安定感によって、12インチであることのネガはほとんど感じない。軽いといえば軽いが、バイクのキャラクターには合っているのでヨシとしよう。小径12インチのメリットは街乗りシーンできっと活きてくる。

煮詰めていけば、走りは良くなる

ブレーキは前後にディスクを備えているので、ストッピングパワー自体は105kgのウェイトに対して十分(ちなみにホンダ・モンキー125は重量104kg)。リヤブレーキの効きの感触は、ストローク深いところでやや唐突な感じがした。硬めで狭いシートとストロークをあまりしないリヤサスを含め、これらぜんぶ慣れの範囲と言って差し支えないだろうし、購入後に自分で丁寧にセットアップやカスタムしていく楽しみも残されている。左コーナーでバンクすると、わりとすぐにサイドスタンドステーを擦るのもまあ、ご愛嬌と言うことで(笑)。

メジャーメーカーに比べれば、確かに足りていないところはいくつもある。しかしなにせこのファンキースタイルだ。笑って許せるので「おおむねヨシ!」

もっともっと笑ってほしい!

タイの新興ブランドであるフェニックスエンジニアリングが開発した初号機、「ガンナー」シリーズ。50cc、100cc、125ccの3モデルの中で、もっともバイクらしかったガンナー125は、エンジンの存在感がもっとも濃かったモデルでもあった。フォルムこそそっくりなものの、50cc/100ccモデルと125ccモデルはフレームのサイジングが完全に異なるので、走行フィールもひとまわり大人っぽかったのは間違いない。

よって「1台選ぶならどれ?」と問われれば、パワー面で有利な125ccモデルを選んでしまいそうだ。しかし一方で、排気量のビッグなモデルがいちばん偉い! とはならない代表例のようなバイクがガンナーでもある。

たぶん、ガンナーに乗ってロングツーリングに向かう人はあまりいない。近距離のシティライドを無難にこなしてくれれば、それでいい。ガンナーに求めたいのは……やっぱり笑顔。街ゆく人に、クスッと笑ってほしい。ピリピリした街角を、ホッと和ませてほしい。もちろん自分も、ニンマリ和みたい(笑)。そんな願いを叶えることがガンナー乗りの本懐! そんなパフォーマンスを持ったデザインバイク、いまどきガンナー以外にありますか?

ライディングポジション&足着き (172cm/69kg)

50/100ccモデルに比べて長くなった“バズーカ”な上部フレームと、それに伴うタンデム用スペース増加のおかげで、ソロでのライポジ自由度はグッと高まった。

ディテール解説

ヘッドライトはLEDを装備し、50/100よりも上級グレードであることをアピール。フロントフォークを含む可動部のすべてを一体化したユニットステアを採用した。
タコメーターがメインに座る単眼式メーター。パネル下部には速度計やオドメーター、燃料計、そしてギアポジションインジケーターなどが備わる。
上から見ても”筒感”がかわいいガソリンタンクの容量は、50/100から1ℓアップの5.5ℓを確保する。ニーグリップはほぼ不可能なタイトフォルムだ。
ちょっと大きな自転車用サドル並みにタイトなシート。クッションもそれなりにハードだが、幅の狭さのおかげで素直に両脚を地面に下ろせるので足着き自体はとても良好だ。

ピンスライド式2ポッドキャリパーを組み合わせたフロントディスクブレーキ。前後タイヤは「FUJIYAMA」製で、フロントのサイズは100/90-12。ABSは装着せず。
新規に採用された縦型エンジンには、いまや絶滅の危機に瀕しているキャブレターが組み合わされている。50/100の4速ミッションに対し125は5速ミッションを搭載する。
50/100よりもリッチな雰囲気のステンレス製テーパードメガホンマフラー。
車体右側の円筒ボックスに収められるのはエアクリーナーだ。
車体左側の円筒ボックスには電装パーツを収めるとともに、後端はキー付きの小物入れにもなっている。
リヤディスクのブレーキローター径はフロントと同サイズでφ190mm。リヤのタイヤサイズは120/70-12となっている。
リラックスできるアップライトなライポジをつくるハンドルまわりのレイアウト。細部には若干のチープさが拭えないものの、あるべき位置にレイアウトされている各種スイッチ類はとても扱いやすい。
キャプション入力欄
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ガンナー125 主要諸元

全長:1770mm
全幅:720mm
全高:1070mm
軸距:1200mm
最低地上高:─mm
シート高:─mm
乾燥重量:105kg
タンク容量:5.5L
エンジン形式:4ストロークSOHC空冷単気筒
ボア×ストローク:56.5mm×49.5mm
排気量:124cc
圧縮比:9.2:1
最高出力:─kw/─rpm
最大トルク:─Nm/─rpm
始動方式:セル/キック
ギアボックス:5段リターン
タイヤサイズ前・後:100/90-12・120/70-12
価格:36万800円(消費税込み)

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著者プロフィール

宮崎 正行 近影

宮崎 正行

1971年生まれ。二輪・四輪ライター。同時並行で編集していたバイク誌『MOTO NAVI』自動車専門誌『NAVI CAR…