ホンダN-VAN&バイクライフ|CBR650Rのトランポに! サーキット遊びで使える実例|オーナー’Sインプレッション

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ホンダの軽バン「N-VAN」をバイクのトランポにしている筆者の体験を紹介
「バイクが載るんですね! 」
ホンダ「CBR650R」でサーキット遊びをしている筆者は、ホンダの軽商用バン「N-VAN(エヌバン)」に愛車を載せて移動中、高速道路のPAやSAなどで、こうした声をよく見知らぬ人からかけられる。

原付などでない大きなバイクが軽自動車に積載できることが、驚きのようだ。もちろん、トヨタ「ハイエース」など、荷室がより広い大型の商用バンと比べれば、載せるのにある程度のコツは必要。だが、なんといっても維持費は安いし、意外によく走る。見た目もちょっとカワイイし、なかなか気に入っているのだ。

ここでは、そんなN-VANをバイクに載せて運ぶトランスポーター、いわゆるトランポとして使っている筆者が、なぜこのクルマを選んだのかや、使ってみた感想、維持費などを紹介。バイクのトランポ購入などを考えている人などの参考になれば幸いだ。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●平塚直樹、山田俊輔、本田技研工業、スズキ

N-VANとはどんなクルマか? 

2018年7月に発売されたN-VANは、ホンダの軽自動車でもっとも売れ筋の軽スーパーハイトワゴン「N-BOX(エヌボックス)」をはじめとする、「N」シリーズに属するバンタイプの軽自動車だ。同シリーズには、ほかにも、軽トールワゴンの「「N-WGN(エヌワゴン)」、走りも魅力の「N-ONE(エヌワン)」があり、N-VANはシリーズ4番目のモデルとして登場した。

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ホンダ・N-VAN +STYLE FUNターボ(FF)

大きな特徴は、N-BOXのプラットフォームを活かした広い荷室スペースや高い積載性だ。燃料タンクを前席の下に搭載するホンダ独自の「センタータンクレイアウト」を採用することで、荷室を低床化し、背が高い荷物でも積載を可能とするなど、軽自動車としてはかなり広い荷室空間を実現する。

また、2列目シートはもちろん、助手席にもダイブダウン機構を採用する。運転席以外のシートをすべて収納できることで、助手席から2列目シート、テールゲートまでフラットな空間を作ることが可能だ。

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N-VAN +STYLE FUNターボは、2列目シートや助手席もフラットにできる

加えて、助手席側のスライドドア開口部は、軽バン初のセンターピラーレス仕様とすることで、車体橫からでも荷物を積みやすくするなどの工夫が施されている。

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助手席側のスライドドア開口部は、センターピラーレス仕様

パワートレインには、658cc・直列3気筒のNA(自然吸気)とターボを設定。駆動方式には2WD(FF)と4WDを用意し、トランスミッションは全車にCVTを設定するほか、一部グレードを除き6速MTも選べる。

また、グレード展開は、いわゆる商用向けの「G」と「L」を用意するほか、内外装に遊び心を演出した「+STYLE FUN(プラス・スタイルファン)」も設定。価格(税込)は、127万6000円〜187万2200円だ。

N-VAN +STYLE FUNを選んだ理由

筆者は、N-VANを2021年8月に購入した。選んだのは、+STYLE FUNのFFターボ車。このグレードは、GやLといったグレードが‪ハロゲンヘッドライト‬を採用するのに対し、丸目のフルLEDヘッドライトを装備することで、ちょっと愛らしいフェイスデザインを持つことが特徴だ。

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N-VAN +STYLE FUNターボのフロントビュー

また、フロントグリルの中央やフォグライトのカバーにはクロームメッキのパーツも備えることで、スタイリッシュさも加味。ほかにも、ホイールキャップにカジュアルなシルバーと黒のツートーンタイプを装備、室内にはシルバー加飾のインパネなども採用し、高級感も演出する。

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N-VANのLグレード。いわゆる軽商用バンらしい装備やスタイルだ

これら装備により、宅配などのビジネスだけでなく、普段使いや遊びにも使いやく、乗用車的な乗り方もできるのが+STYLE FUN。筆者は、ライターなどの仕事や買い物など日常の足、そしてサーキットなどでの遊びを主目的とするため、そのコンセプトがまさにピッタリだった。

さらに、軽自動車なのに650ccのバイクを載せられる懐の深さも魅力だった。ちなみに、+STYLE FUNには、NA車もあるが、バイクを載せて高速道路などを移動することを考えると、パワーなどが少し物足りないだろうと予想し、ターボ車を選んだ。

カタログ上の数値では、NA車は最高出力53ps/6800prpm、最大トルク6.5kgf-m/4800rpm。対するターボ車は最高出力64ps/6000rpm、最大トルク10.6kgf-m/2600rpmと、NA車より出力がより大きく、しかもより低い回転域で発生する。車両重量206kgのCBR650Rを積載し、発進時はもちろん、高速道路の合流などでも、ストレスなく走るには、ターボ車は必須だと考えて選んだのだ。

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高速道路も考慮してターボ車を選んだ

バイクの積み方にはコツも少し必要

N-VANの荷室スペースは、2列目シートと助手席をすべて倒してフラットにした状態で、最大スペース長が2635mm。また、荷室幅は1390mm、荷室高1365mm。CBR650Rのボディサイズは、全長2120mm×全幅750mm×全高1150mmなので、カタログ数値上でいえば、積載することは十分可能だ。

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筆者が所有するホンダ・CBR650R(2020年型)

ただし、それほど余裕があるわけでもないため、積み方にはややコツがいる。まず、バイクを荷室に積み込むには、テールゲート開口部にラダーレール(アルミ製のハシゴ)をセットして行うが、この作業自体は比較的楽だ。

N-VANのテールゲート開口部は、幅1230mm、高さ1300mmあるので、スペース的には十分だ。また、荷室床面地上高(地面からテールゲート開口部にある床面までの高さ)が525mmと低いため、ラダーレールが急な角度にならず、バイクがレールに引っかかるようなこともない。比較的安定して積載することが可能だ。

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テールゲート開口部が広いので、バイクの積み込みは楽

問題はバイクを積んだ後。まず、室内の高さは、カタログ上の荷室高(前述の1365mm)を見ると、全高1150mmのCBR650Rを積んでも余裕だと思っていた。だが、バイクを前方まで入れていくと、助手席側にあるアシストグリップ(手摺り)周辺のルーフ部に出っ張りがあり、バイクのバックミラーが干渉する。

また、N-VAN +STYLE FUNには、運転席に回転式のアームレスト(肘掛け)があり、長距離走行などで疲労を軽減してくれる。ところが、これがバイクのサイドカウルに当ってしまい、車体を無理に前まで押し込むとカウルが変形しそうになった。

そこで、一度バイクを降ろし、バイクのバックミラーと、クルマのアームレストを外して再度積み込んでみる。今度は成功だ。いずれも、ボルトで固定されているだけなので、作業自体は簡単だが、積載する前準備としては、少し時間が必要だ。

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最初は、何度も積んだり降ろしたりを繰り返し、ベストな積載方法を探した

バイクの固定も慣れるまで苦労した

最後はバイクの固定。筆者の場合は、フラットにした荷室の最前部、ちょうど倒した助手席の背もたれ部分に前輪を固定するメンテナンス用のスタンドクランプを設置し、そこにバイクの前輪をセットしている。

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バイクの前輪はメンテナンス用のスタンドクランプで固定

スタンドクランプの固定には、荷物の固定用ベルトで、バックル部で長さ調整が可能なタイダウンベルトを使う。2本のタイダウンベルトをスタンドに巻き、各ベルトの両先端にあるフックを、N-VANにもともと付いている荷掛けフック4カ所へ掛ける。

そして、この作業でも問題が発生。スタンドクランプを置く位置が微妙なのだ。あまり前すぎると、インパネにあるエアコンスイッチ部のパネルと干渉し傷が付くし、後ろにしすぎると、バイク後部が荷室からはみ出し、テールゲートが閉められない。

何度もバイクを積んだり、降ろしたりしながら、スタンドのちょうどいい設置場所を見つけるのにひと苦労した。荷室に余裕がないクルマで、筆者の場合は作業も1人だったので、余計に時間がかかった。もし、誰かお手伝いしてくれる人がいれば、慣れるまではお願いした方がいいだろう。

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スタンドクランプの設置位置は、ちょどいい場所を決める必要がある

あとは、バイク後部フレームの左右2カ所も、やはりN-VANの荷室後部に用意された荷掛けフック2カ所とタイダウンベルトで連結し、リヤサスペンションなどバイク後部を固定。走行中に路面の凹凸などで車体が上下動した場合に、バイクも一緒にはねて不安定になることを防ぐためだ。

バイクを揺さぶってみて、グラグラしなければ、積み込み完了。ラダーレールや工具、レザースーツやヘルメットなどの装具を積み込むと、車内はパンパンとなるし、当然ながら1人乗りとなってしまう。だが、なんとかサーキットに向かうことができる。

ちなみに、N-VANには、計8カ所に荷掛けフックが用意されており、タイダウンベルトやロープなどで、バイクだけでなく、自転車や大きな荷物などの固定もできる。アウトドアのスポーツやキャンプ好きにも、使い勝手がいいクルマだといえるだろう。

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バイクのほか、サーキット走行に必要な装備を入れると、荷室はパンパン

バイクを積んで高速道路を走るのも比較的スムーズ

筆者は、よく茨城県の筑波サーキットへ走りに行く。自宅からの距離は片道約120kmあるので、途中は高速道路を使うが、バイク積載時でも、N-VANの走りには、それほどストレスを感じない。

もちろん、空荷時の方が加速はいい。だが、高速道路を制限速度内で巡航するのであれば、意外なほどスムーズだし、合流などでも加速が鈍すぎて他車に迷惑を掛けるようなこともない。やはり、NA車でなく、ターボ車を選んで正解だったといえる。

それに、バイクを積んだ状態で、急加速や急減速をしたり、コーナリングの速度を上げて車体を傾けると、バイクを固定しているタイダウンベルトがゆるみ、荷室内でバイクが倒れる危険性もある。特に、バイクを積んでいるときは、できるだけゆっくりと、穏やかに走らせることが必要なので、その範囲内なら問題ないレベルの走りといえるだろう。

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N-VAN +STYLE FUNターボのリヤビュー

ちなみに、N-VAN +STYLE FUNには、高速道路などで車間距離を自動で保ちながら先行車を追従するACC(アダプティブ・クルーズコントロール)が装備されている。高速道路の巡航時は、これがかなり便利だ。

アクセルやブレーキの操作が不用なため、長距離を走っても疲れにくい。特に、自分的にがんばってサーキットを走った後は、帰路に少し疲労がでる場合もあるので、クルマの運転は楽な方がいい。

なお、バイクを積んで自宅と筑波サーキットを往復した際、N-VANの燃費はだいたい14〜15km/L程度。1人乗りの空荷で高速道路を100km程度走った場合は、20km/Lを記録したこともあるので、ターボ車でも意外に燃費性能はいい。

おそらく、低中速トルクが比較的豊かなため、発進や加速の時にアクセルをベタ踏みするなど、燃費が悪化する操作が不用なことが要因だと思う。

維持費がリーズナブルなのもうれしい

筆者は、N-VANに乗る前は、マツダのSUV「CX-5」の初期型(2.2Lのディーゼルターボ車)を所有していたが、維持費などが格段に安くなったこともうれしい点だ。

まず、車両はローンで購入したが、月々の支払いは2万円。+STYLE FUNのFFターボ車は、車両本体価格(税込)が173万9100‬円で、フロアマットなどのオプションや諸費用込みの総額が200万円ちょっと。CX-5の売却代などを頭金として入れ、147万円を84回の分割払いに。2万円くらいであれば、 苦もなく毎月支払える額だと考えて設定した。

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N-VAN +STYLE FUNターボのシート

また、毎年払う、いわゆる自動車税が格段に下がった。CX-5の自動車税種別割は毎年4万5000円。対して、N-VANの軽自動車種別割は5000円だ(自家用の場合)。

さらに、車検の期間は、4ナンバーの軽貨物自動車となるN-VANは、新車購入後から2年毎。同じ商用車でも、ハイエースなどの4ナンバー普通貨物車の場合は、新車購入後の初回が2年で、その後は1年毎だ。毎年車検があるのと、2年毎では、車検費用にも差がでる。

ほかにも、N-VANは軽自動車なので、高速料金が安い。筆者のように、筑波サーキットの往復などで、必ず高速道路を使うユーザーには、ハイエースなどと比べると、移動費が比較的リーズナブルで、お財布にやさしいといえる。

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休日に、サーキット走行を楽しむ筆者

遊びが楽しめる軽バン

このように、N-VANは、トランポとしても意外に使えることを実感している。特に、軽自動車としては、かなり広い荷室スペースは魅力だ。筆者はバイクの積載に使っているが、例えば、趣味はキャンプなどのアウトドア・レジャーであっても十分対応する。まさに「遊びも楽しい軽バン」なのだ。

ちなみに、軽自動車のトランポとしては、スズキの「エブリイ」を使っているユーザーをよくサーキットで見かける。荷室が、やはり軽自動車としてはかなり広く、N-VANが発売される前から使ってるユーザーも多い。だが、個人的にいえば、いわゆる商用バンらしい無骨なエブリイの外観より、ちょっと遊びの要素を備えたN-VAN +STYLE FUNの方が好きだ。

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スズキ・エブリイ
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エブリイの荷室も広い

また、エブリイの現行モデルは、ターボ車の設定がなく、すべてNA車。高速道路などでの移動では、やはりN-VANのターボ車の方が余裕があることが想像できる。

サーキットで、エブリイのオーナーからよく「クルマを見せて欲しい」など、声を掛けられることが多いのも、そうしたN-VANのメリットからかもしれない。ともあれ、今のところは買って満足。思う存分、休日のお供として使っている。

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N-VANとCBR650Rをお供に、休日を満喫

※バイクの大きさ、車両の固定方法、ドライバーの体格によって、視認性が大きく左右されます。視界が著しく遮られると、道路交通法第55条第2項「乗車又は積載の方法」に対する違反となる場合があります。

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