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国産バイクのカフェレーサーにはどんなモデルがあるのか?
まずは、国産バイクを例に、カフェレーサーにはどんなモデルがあるのか紹介しよう。
【ホンダ】
「ホーク11」
1082cc・直列2気筒エンジン セパレートハンドル フロントカウル付き
「CB1000R」
998cc・直列4気筒エンジン バーハンドル フロントカウルなし
「CB650R」
648cc・直列4気筒 バーハンドル フロントカウルなし
「CB250R」
249cc・単気筒 バーハンドル フロントカウルなし
【ヤマハ】
「XSR900 ABS」
888cc・直列3気筒 バーハンドル フロントカウルなし
「XSR700 ABS」
688cc・直列2気筒 バーハンドル フロントカウルなし
【カワサキ】
「Z900RSカフェ」
948cc・並列2気筒 バーハンドル フロントカウル付き
「W800カフェ」
773cc・並列4気筒 バーハンドル フロントカウル付き
【スズキ】
「SV650X ABS」
645cc・90°Vツイン(2気筒) セパレートハンドル フロントカウル付き
共通点はレトロでスポーティ
このように、国内メーカーだけでみても、カフェレーサーと呼ばれるモデルは数多い。各モデル名の下には、エンジンのタイプや排気量、カフェレーサーとしての装備に関連する特徴なども入れてみた。ご覧の通り、フロントカウル付きもあればカウルなしもあるし、バーハンドル仕様があるかと思えば、セパレートハンドル仕様もある。
これらの共通点は、前述の通り、レトロな雰囲気を醸し出しつつも、スポーティなフォルムや走りも合わせ持つことだ。
たとえば、ホンダが2022年に発売したホーク11は、FRP製のロケットカウルと呼ばれるフロントカウルを採用。ほかにも、カワサキのW800カフェやZ900RSカフェ、スズキのSV650X ABS(以下、SV650X)にもフロントカウルがあり、いずれも丸味を帯びた昔風のデザインが特徴だ。
また、ハンドルは、ホーク11やSV650Xがセパレートタイプを採用。そのほかは、バーハンドルを装備しているが、バータイプのモデルについても、ハンドル位置は比較的低めに設定する。セパレートハンドルのモデルと同様、やや前傾がきつめのスポーティなライディングポジションになることが共通点だといえる。
ほかにも、ヤマハのXSR900 ABS(以下、XSR900)には、ハンドルマウントのサイドミラーを採用。海外メーカー製モデルにも多い仕様だ。また、ホーク11のミラーも、カウルマウント式ではあるが、ハンドルの高さに近い低い位置へ設定。こうした低い位置にあるサイドミラーも、カフェレーサーが持つ特徴のひとつだといえる。
ルーツは公道レーサーたちが乗ったカスタムバイク
これらモデルが、なぜこうした装備を特徴とするかについては、カフェレーサーのルーツが関連している。元々、カフェレーサーは、1960年代にイギリスで生まれたカスタムバイクのスタイルを意味し、それらの特徴を採り入れているからだ。
当時、イギリスでは、毎晩のようにカフェへ集まり、そこを起点に公道レースを楽しむ「ロッカーズ」と呼ばれる若者たちが数多くいた。
そうした若者たちの特徴は、レザー製のジャケットやパンツを履き、カスタムバイクに乗っていること。しかも、彼らが乗る愛車の多くが、当時のレーシングマシンを模倣したスタイルに改造されていたという。
ベース車両の多くは、トライアンフやBSA、ノートンといった、当時のレースシーンで大活躍した英国メーカーのモデルたち。公道レースなどでバイクのスピードやスリルを味わうことを好んだ当時の若者たちは、マン島TTレースなどバイクの世界選手権シリーズでダイナミックに走るレース用マシンに憧れ、それらを参考にしたカスタムを愛車に施すようになったという。
ちなみに、カフェレーサーの由来は、当初、こうしたカフェで集まり(公道)レースをする若者たちを指していたのが、いつの日か彼らの愛車も意味するようになったといわれている。
前傾姿勢となるカスタムが主流だった
当時の主な改造は、例えば、ハンドルをセパレートタイプやフラットなバータイプなど、低く幅が狭い仕様にし、ステップを後方にするバックステップなども装着。また、シートも車体後方に座れるようなシングルタイプにするなどで、上体を伏せるライディングポジションになるようにしていた。
当時のバイクは、ほとんどがカウルレスだったこともあり、今で言うネイキッドのスポーティ版的なスタイルも多かったが、なかにはオリジナルのフロントカウルを装着するカスタムバイクもあり、こちらも人気だった。
そうしたフロントカウルについても、当時のレーシングマシンを模倣した流線型のデザインが主流。ホーク11が採用するようなカウルだ。先端が突き出て丸味を帯びた形状がロケットに似ているからだろう、「ロケットカウル」という愛称で呼ばれるようになった。
つまり、現代のカフェレーサーにフロントカウル付きとなしがあるのは、実際に、当時、どちらの仕様もカフェレーサーと呼ばれていたからだ。
その後、こうしたカスタムスタイルは、北米や日本などへも波及し、数多くのカスタムビルダーがオリジナルのマシンを製作。1990年代頃から世界的に人気となり、カフェレーサーというスタイルが確立される。
そして、ご存じの通り、2000年代に入り、国内外のバイクメーカーが、そうしたスタイルを採り入れたモデルを数多くリリース。ちょうど同じような時期に、クラシカルなスタイルに現代的なテイストを融合させたネオレトロというスタイルが流行となったこともあり、その1ジャンルとして、スポーティなテイストを持つ(メーカー製の)カフェレーサーが登場してきた。
余談だが、レーシングマシンがお手本だったという意味で、カフェレーサーは1980年代後半から1990年代前半に流行したレーサーレプリカや、現代のスーパースポーツに近いといえる。もちろん、昔のカフェレーサーはメーカー製でなく、あくまでユーザーがカスタムしたバイクだが、WGPや今のMotoGPといった世界最高峰レースに参戦するマシンのスタイルをオマージュしている点は同じだからだ。
ネイキッドとの違い
カフェレーサーは、このように、元々はカスタムバイクが発祥という点で、いわゆるネイキッドと呼ばれるモデルとは成り立ちなどが異なる。どちらも、レトロな雰囲気を持つという点では共通で、世界中で流行しているネオレトロというジャンルに属することは同じ。
だが、例えば、1990年代から根強い人気を誇る国産ネイキッドは、どちらかといえば、1970年代などに世界的ヒットを飛ばした日本製スポーツ車をオマージュしたモデルだといえる。あくまで、当時の「純正」バイクを彷彿とさせるフォルムや雰囲気を演出している。
例えば、カワサキのネイキッド「Z900RS」。2017年の発売以来、大型バイクのなかでも特に大きな支持を受けている大ヒットモデルだが、そのルーツは1972年に登場した900ccモデル「900スーパー4」、通称「Z1」だ。ティアドロップタイプの燃料タンクやテールカウルなどを採用することで、Z1のスタイルを現代に蘇らせている。
一方、それをベースにカフェレーサー的スタイルにしたのが、Z900RSカフェ。Z900RSと同様にバーハンドルを装備するが、ベースのZ900RSがアップライトなポジションになる高めのタイプなのに対し、Z900RSカフェでは、より前傾姿勢となる低いタイプを採用。また、フロントカウルやシングル風の専用シートなど、先に述べたカフェレーサーの特徴を採り入れた装備を持つ。
つまり、Z900RSカフェは、メーカーが施したZ900RSのカスタム仕様だといえる。カワサキでは、W800とW800カフェでも同様の手法を採ることで、クラシカルなモデルのラインアップを充実させている。
競合ひしめくカフェレーサー
ちなみに、海外メーカー製で、日本でも買えるカフェレーサーには、トライアンフの「スピードトリプル1200RR」や「スラクストンRS」、ロイヤルエンフィールドの「コンチネンタルGT650」などもある。
特に、2005年に初代モデルが出たトライアンフのスラクストンは、いわばメーカー製カフェレーサーの先駆的モデル。同名のサーキットで開催された耐久レースに優勝した往年の名車を現代に復活させたモデルで、現行のスラクストンRSは、1200cc・水冷並列2気筒エンジンを搭載。
低いバーハンドルや丸目1灯ヘッドライトなどを装備するほか、ハンドルマウントのサイドミラーも採用。ヤマハのXSR900なども採り入れるこうしたミラーも、昔からカフェレーサー・カスタムの代表例として有名だ。
これらに、倒立フロントフォークやトラクションコントロールなどの電子制御システムといった最新装備をマッチングさせ、俊敏な走りも実現する。
さらに、2022年に国内投入されたスピードトリプル1200RRは、180psを発揮する1200ccの水冷並列3気筒エンジンを搭載。レトロなロケットカウルを持つそのスタイルは、まさにホンダ・ホーク11のライバル的な存在といえるだろう。
魅力的なモデルがひしめくカフェレーサーのジャンル。排気量も、前述の通り、250ccの軽二輪から、1200ccのビッグバイクまでランアップされ、幅広いライダーが楽しめることも魅力だ。
クラシカルなスタイルだけでなく、ワインディングなどでスポーティな走りも求めるユーザーには、とても気になるジャンルのひとつではないだろうか。
(価格や仕様は2023年1月末現在)