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通勤快速として長年親しまれてきたスズキ・アドレス125が2022年10月にフルモデルチェンジして発売された。すでにご存知のように、そのスタイルは従来モデルから大きく変貌。通勤快速らしいシャープなデザインではなく、丸みを帯びたヨーロピアンテイストに溢れるデザインなのだ。これには従来からファンはもとより、ジャーナリストのケニー佐川も違和感を抱いた。そこで新車発表会で開発陣に質問をしまくることになったわけだが、どうしてこのようなデザインへ生まれ変わることになったのだろう。そこで今回はユーチューブでさまざまな動画を無料配信しているモトチャンプTVの中から「SUZUKIアドレス125&アヴェニス125 実車で解説!」という回の内容をまとめてみた。
アドレス125はどう変わった
今回の動画は発売前に新車発表会が開催されたタイミングで収録されている。しかも発表会場で撮影したもので、いわば速報的な内容。それだけにスズキの開発陣から語られた内容がそのまま紹介されている。アドレス125がこのように変貌をとげた理由として、まず第一にグローバルモデルとしての位置付けが挙げられる。新型アドレス125は日本国内ではなくインドで生産されている。もちろんインドなど諸外国でも販売されるグローバルなスクーターであるため、デザインには普遍的なものが求められる。さらに開発陣からも従来モデルの後継車種ではないとハッキリ語られており、アドレスという名前こそ継承したものの、内容としては新たなグローバルスタンダードを目指したスクーターというのがふさわしい。
アドレスという名前は2ストロークエンジンだった1987年発売の初代にまで遡ることができる。その後1991年にアドレスV100が発売されたことで通勤快速の異名を持つようになるわけだが、それから早くも32年が経過している。アドレスに乗り続けてきたライダーだって高齢化してきており、さすがに戦闘的なスタイルを敬遠する傾向だってある。そこで上質なヨーロピアンテイストのデザインに落ち着いたという面もあるようだ。
生産国がインドであることから、車体のディメンションに与える影響も表れている。まずシート高は770mmで従来型より25mm上がっている。さらに最低地上高が従来型より40mm上がっている。実際に跨ってシート高が上がったことは感じづらく、それはフラットなシートの先端が絞られ、徹底的にフラットな形状とされたフロアの後ろ側が絞られたデザインであるため、足つき性を向上させているのだ。また最低地上高が高くなったのは海外に多い減速帯のハンプに対応するためだったりするのだ。
装備としてはシート下とレッグシールド側にそれぞれフックがあり、左にはグローブボックスとUSBポートが配置されている。スピードメーターはアナログ式を採用してコストアップを抑制しつつエコランプを備え、スズキ車に採用例が多いワンプッシュでエンジン始動が可能なイージースタートシステムを採用している。普段使いのスクーターとして及第点だろう。
エンジンはSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)エンジンでパワフルさと省燃費性能を両立させたもの。基本設計は従来型を踏襲しつつ、吸排気系を見直して新型車らしいマナーを備えた。ところが最高出力は従来型の9.4馬力から8.7馬力へ落とされている。最高出力を発生するエンジン回転数も低くなり、スタイル同様に落ち着いた走りを目指したものに思える。ただし最大トルクは従来型と同じ10ニュートンメートルで同じ。タンデムバーをアルミにするなど車体の軽量化が進められた結果、街中でのスタートダッシュなどは従来型と互角な性能を確保している。
新型アドレス125の特徴として、マフラー形状を見直した結果、リヤタイヤを交換するのにマフラーを外す必要がなくなった。これは現場のメカニックからの声を反映したもので、スズキ開発陣が気合を入れて設計したのだろう。ユーザー自らタイヤ交換をするような場合でも、こうした新設設計は有難いものだ。
兄弟車のアヴェニス125はどんなモデル?
アドレス125と主要骨格を共有するのが新型アヴェニス125。スポーティなデザインはシートフレームの形状を見直して実現したものだが、アンダーフレームなどはアドレス125と共通。ヨーロピアンテイストなデザインとされたアドレスに対し、シャープでスポーティなデザインをアヴェニスに与えられている。どちらかというとこちらをアドレスと名乗ると違和感がなさそうなほど、スポーティなデザインなのだ。この2台の違いは主にスタイルと言っていいから、どちらが好みかで選べばいいだろう。
アドレスに対してアヴェニスでは装備がグッと充実している。まずメーターはフローティングデザインのフルデジタルとされ、グローブボックスは左右にある。また給油口はキーで開閉するのはアドレス同様ながら、ワンタッチで給油口が跳ね上がり、ヒンジがあるためキャップを手で取り外さなくて良い。これは給油時のストレス軽減になることだろう。
給油口をシート下ではなく車体後部としたのも、実はインドならではの理由がある。インドではシートを上げて給油していると、ライダーの手が塞がっている間に中の荷物が盗まれることがあるとか。実は盗難対策にもなっているのだ。またアヴェニスだけの装備としてパーキングブレーキが採用されていることも触れておきたい。操作にコツはあるものの、パーキングブレーキレバーを押し込んでブレーキを握ると操作しやすい。他メーカーのものだとブレーキレバーを強く握らないとロックできないことがあるが、アヴェニスのパーキングブレーキはコツさえ掴めば楽に操作できるはずだ。
ライディングポジションもアドレスと大きく異なり、前寄りに座る戦闘的なポジション。ここまで大きくデザインが違うと今回の2車でどちらにするか迷うことはなさそう。注目の新車価格はアドレス125が27万3900円(税込)でアヴェニス125は28万4900円。その差は実に1万1000円しかない。アドレスより装備が充実しているアヴェニスが安いのか、それとも28万円を切るアドレスが安いのか、判断は買う人により異なるかもしれない。いずれにしても原付2種スクーターとして買いやすい価格帯であることに間違い無いだろう。