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125cc以下用ヘルメット(半キャップ)で、オーバー125ccモデルに乗ったら法律違反?
結論:道路交通法違反には問われないが、スピードの出る125cc超のバイクで使用するのは危険
「125cc以下用の半キャップヘルメットで、オーバー125ccモデルに乗ってはダメなの?」バイクビギナーの中には、そんな疑問を抱いている人も多いと思う。
結論からいえば、125cc以下用の半キャップヘルメットで大型バイクに乗っても、道路交通法違反には問われない。
ハーフ形の半キャップヘルメットは、下記「内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)乗車用ヘルメットの基準」を満たしており、125cc超のバイクで使用しても道路交通法違反には該当しないのだ。(※注1)。
市販のバイク用ヘルメットには、「125cc以下用」と「排気量無制限」の2種類が存在する。「125cc以下用」や「排気量無制限」という分類は、『JIS規格(日本工業規格)』や『(PSC)消費生活用製品安全法時術基準』が定めた、メーカーや販売店による自主規制であり、国会で制定された法律ではない。
このため、一般公道を走っているライダーの中には、手軽さやファッション性を重視し、125cc以下用の半キャップヘルメットで大型バイクに乗っている人も存在する。
『JIS規格』や『PSC』が定める「125cc以下用」のヘルメットは、ハーフ形(半キャップ形)やスリークォーターズ形(耳までカバーされたタイプ)が主流。一方、「排気量無制限」のヘルメットは、オープンフェイス形(ジェット形)やフルフェイス形がメイン。国内販売されている「125cc以下用」のヘルメットには、分かりやすいようにステッカーも貼付済みだ(下記参照)。
注意したいのが、日本のバイク用ヘルメットは『消費生活用製品安全法』によって特定製品に指定されているため、PSC規定をクリアした「PSCマーク」を付けることが義務付けられているということ。そのため「PSCマーク」のない、いわゆる“装飾用ヘルメット”は、国産品・輸入品にかかわらず、国内ではバイク乗車用ヘルメットとして使用不可となっている。
※注1
●道路交通法 第七十一条の四
1. 大型自動二輪車又は普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転し、又は乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転してはならない。
2. 原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない。
(3〜5.省略)
6. 第1項及び第2項の乗車用ヘルメットの基準は、内閣府令で定める。
●内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)乗車用ヘルメットの基準
1. 左右、上下の視野が十分とれること。
2. 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
3. 著しく聴力を損ねない構造であること。
4. 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
5. 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
6. 重量が二キログラム以下であること。
7. 体を傷つけるおそれがある構造でないこと。
125cc以下用ヘルメット(半キャップ)の特徴は?
手軽で涼しい反面、高速域での走行には不向き
国内販売されている半キャップなど「125cc以下用」のヘルメットは、街乗りなど定速度での使用を想定しているのが特徴。ヘルメット本体には分かりやすいように、ステッカーが貼付されている。
特に半キャップのヘルメットは、フルフェイスなど「排気量無制限」のヘルメットに比べ、軽量なために頭部や首への負担や圧迫感も少なく、夏場は蒸れにくいのが特徴。
ただし顔面部や側頭部の露出も大きく、スピードの出る125cc超のバイクで使用するのは危険だといえる。
一般道はもちろん、特に危険なのはスピードを出して走行する高速道路。仮に半キャップで高速道路を走行しても、道路交通法違反には問われない。ただし80km/h~で転倒した時のことを考え、ほとんどのメーカーや販売店では125cc超バイクでの使用を不可としている(この矛盾は法律の盲点ともいえる)。
筆者の経験上、風圧が高まる高速域では、半キャップよりもフィット感が高くてシールドの付いたジェット形やフルフェイス形の方が断然快適。
また、高速域での半キャップは風切り音が凄いのがネック。加えて風圧によって“凧のように”上方へ持ち上がってしまい、アゴ紐によって喉元を強く締め付けられる。高速域での半キャップ着用は、「不快感」「運転に集中できない」「露出が多くて危険」という最悪の事態を招く。百害あって一利なしだ。
一方、高速域での排気量無制限ヘルメットは、整流効果で疲れづらく、風切り音も少なくて非常に快適。高速道路を半キャップで走るライダーを見て、「自傷行為だ」「自分なら怖くてできない……」「バイク事故による死亡理由は、頭部損傷が多いんだけど……」というベテランライダーも多いはず。
バイク事故による死亡理由は、頭部の損傷が多いって本当?
本当です。ヘルメットは正しく選び、正しく被るべし
グラフは警視庁WEBサイトより。
グラフは警視庁の調査による、都内で起きたバイク事故の損傷主部位を示したもの(平成30年及び、平成26~30年の5年間の平均)。死亡事故を招いた原因となる損傷主部位は、頭部が大部分を占めている。
平成30年中に発生したバイク乗車中の死者のうち、40.9%が事故時にヘルメットが脱落していたという。事故による身体の被害を防ぐには、ヘルメットのアゴ紐をしっかり締めること。また排気量に適応したヘルメットを選ぶことが重要だ。
半キャップと125cc超のバイクの組み合わせは、“PL法”や事故時の保険金受取額にも影響する?
事故時の査定額、実際の受け取り額、PL法でも不利になる可能性あり
「125cc以下用」のヘルメットで、125cc超のバイクに乗った時に厄介なのが、事故に遭い、ヘルメットが原因で頭部など身体が大事に至った時。
上記の場合、保険会社に「排気量に適合していないヘルメットを被っていなかったから、大事に至ったんじゃないか?」と、“痛いところ”を突っ込まれる可能性がある(保険会社は保険金の支払い額は少ない方がいい)。
また、「JIS規格やPSCでは認められていない」125cc以下用のヘルメットを被り、125cc超のバイクに乗った場合、事故時の保険金の査定額や、実際の受け取り額に加え、『PL法』でも不利になる可能性もあり。
『PL法』とは、製品の欠陥によって生命・身体・財産などに損害を被ったことを証明した場合、被害者は製造会社や販売店などに対し、損害賠償を求めることができる法律。
まとめ
125cc以下用のヘルメットは、街乗りなど低中速度域での使用を想定して設計されている。そのため、スピードの出る大型バイクには向いていない。自分の身を守るためにも、125cc超のバイクには125cc以下用ではなく、メーカーや販売店が推奨する排気量無制限のヘルメットを被ることをオススメしたい。