実質20万円以下だから買い時かも?|ホンダの新型電動スクーターが意外と安いんです!

2023年5月19日、青山にあるホンダ本社において、原付一種新型スクーターの報道発表会が開催された。開発関係者が「そろそろeかも」のキャッチコピー共に我々を待ち受けたのは、すっきりとシンプルなデザインを披露する電動二輪パーソナルコミューターの「EM1 e」である。

PHOTO & REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
取材協力●株式会社ホンダモーターサイクルジャパン

ホンダ・EM1 e…….299,200円(消費税込み)

パールサンビームホワイト
デジタルシルバーメタリック

冒頭の写真は、左から順に室岡克博(ホンダモーターサイクルジャパン代表取締役社長)、後藤香織(本田技研工業・電動事業開発本部・EM1 e開発責任者)、石見英昭(ホンダモーターサイクルジャパン営業部部長)が顔を揃える。
ホンダにとって、電動二輪開発の歴史は、1994年3月にデビューしたCUV ESに始まっているが、最近はビジネス用への電動モデルを積極投入。BENLY eが日本郵便に大量納入されている話題はまだ記憶に新しい。
今回注目すべきは、ホンダ初となる「一般向け」の電動二輪車がラインナップされたこと。エンジン車と違い排気や揮発(蒸発)ガスを出さない電動バイクの普及に同社が本腰を入れ始めたことが示されているわけだ。
まず注目すべきは、税込みで30万円を切る299,200円というメーカー希望小売価格の設定にある。ちなみに先行発売されているヤマハ・E-Vinoは314,600円。
しかもバッテリーや充電器を除いた車両本体価格が、税込みで156,200円という。現在市販されている量販商品のどれよりも廉価設定されていることに驚かされた。
初代電動スクーターのECV-ESは限定リース販売で価格は850,000円だっただけに、誰にも親しみやすいEM1 eの登場が、電動二輪車の普及促進に貢献することだろう。国内の販売計画台数は年間3,000台。全国のHonda二輪EV取扱店で8月24日に新発売される。
カーボンニュートラルへ取り組む手段のひとつとして、ホンダが電動バイクの普及促進に乗り出す。EM1 eの市場投入には、そんな積極的な姿勢が込められているのである。

後輪に組み込まれた交流同期電動機(EF16M)。
モード切り替えで、パフォーマンスを控え、後続距離を伸ばすことができる。
家庭電源(AC100V)から充電中の場面。
チャージャー(充電器)は55,000円。バッテリー(右)は88,000円。

初代EVのホンダ・CUV ES

1994年3月に官公庁や地方自治体などに200台限定発売された。価格は850,000円(3年間リース販売)

EM1 eは原付一種、つまり50ccスクーターに相当する電動スクーターである。プレスリリースから引用すると、開発のねらいは「日々の生活スタイルにマッチするちょうどe:Scooter 」。手軽で便利、そして安心して使える、乗り手を選ばないパーソナルコミューターである。
ごく簡単に説明すると、同様のコンセプトを持つタクト(前後10インチ)と比較するとEM1 eは少しばかりサイズに余裕を感じさせる。フロントに12インチ、リアに10インチホイールを履き、ホイールベースは1,300mm。全長も軸距もタクトより120mm長い。
シート高は20mm高い740mm。車重は13kg重い92kgある。もっとも搭載バッテリー(Honda Mobile Power Pack e)の重さが10.3kgだから、車体の重さはほぼ同レベルにあると理解して良いだろう。

「シンプル&クリーン」をコンセプトに仕上げられたスタイリングは、スッキリと端正な雰囲気。フラットなステップスルーのフロアは前後長が330mmもあり、スチールパイプ製アンダーボーンフレームのフロア下スペースにある厚みもそれほど目立たない。
ちなみにそのスペースには灯火や補機類用の12V鉛バッテリーとPCU(パワー・コントロール・ユニット)が搭載されている。
初代CUV ESの場合はここにニッカド電池を搭載。充電器も車載されていた。車体サイズはEM1 eより少しコンパクトだったが、車重は何と130kgもあったのだから、リチウムイオンバッテリーの高性能ぶりが良く理解できる。
ただ、シート下のメットイン構造は残されていた。EM1 eではバッテリースペースに使われてしまい、メットインと言う意味での使い勝手の便利さがスポイルされたのは少々残念。EM1 eには、ヘルメットホルダーがシート下前方2ヶ所に装備されており、写真で示す通り収納スペースは3.3Lと小さい。
もっとも、モバイルパワーパックeは脱着が簡単で、部屋に持ち込んで充電できることと、今後は汎用バッテリーとして活用用途が膨らむことが期待されている。将来展望としては同電池の普及促進を進め、例えば出先で充電済みバッテリーとの交換制度などが広まれば、スクーターのみならず、多方面で役立つ電池となる可能性は大きい。
技術の進歩と今後の展開によっては、規格変更の可能性も残されてはいるだろうが、ユーザーサイドの感覚としては、多業種とのコラボなど、用途が拡大されることで、大胆なコストダウンに期待したいところである。
新しいポイントとして見逃せないのは、インホイールモーターの採用にある。駆動系統を持たないダイレクトドライブ方式が採用されているのも電動ならではの特徴。
ゼロから6時間で満充電となるバッテリーで航続距離は53km走れると言う。もちろん実用的には何割かの数値低下があるが、日常的な足としての乗り方で一般的なニーズを賄うには十分な性能だろう。

なお、電動バイクの購入には、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」制度がある。ここでは内容詳細についての説明は割愛するが、場合によっては、補助額が10万円近くなることもあるそう。実質的に格安で、真新しい電動スクーターが購入できるチャンスが巡ってきている点も気になる存在なのである。

単純に言うと、バッテリー容量を倍にするとバッテリーの重量も倍になる。同時に後続距離も倍に伸びる。つまり基本的に比例関係となる。その中で重量及びコストそして搭載スペースとの兼ね合いも考えられた。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…