フルモデルチェンジのトリシティ125、何が変わった? 乗って確かめてみた。

ヤマハ初となるフロント2輪の原付二種コミューターとして2014年9月に発売されたトリシティ。軽二輪枠のトリシティ155が追加されたのは2017年1月のことだ。両車とも基本的なスタイリングは初出時から大きく変わらないが、125の方は2018年のモデルチェンジを経て、2023年には125、155ともフレームから新設計となるなど、さらに進化している。ここでは新型125のファーストインプレッションをお届けしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハ・トリシティ125……495,000円(2023年2月28日発売)

カラーリングは写真のホワイトメタリック6(ホワイト)のほか、ダークグレーイッシュブルーソリッドB (グレーイッシュブルー)、マットグレーメタリック3(マットグレー)をラインナップ。
2021年モデル
2023年モデル

左が2021年モデルで、写真は新色のライトリーフグリーンソリッド6(イエロー)だ。STDは42万3500円、ABSは46万2000円だった。なお、2023年モデルではABS仕様がディスコンに。

SMG&アイドルストップ採用でエンジンの上質感がアップ

まずはトリシティ125の変遷を時系列で説明しよう。日本での発売は2014年9月で、このときの正式名称は“トリシティ MW125”、車両価格は35万6400円だった。翌2015年4月にABS仕様が追加され、価格は39万9600円。そして2018年には可変バルタイ機構のVVAを搭載した水冷ブルーコアエンジンとなり、合わせて足元スペースの拡大に貢献する新設計フレームや新サスペンション、LEDヘッドライトなどを採用。さらに今年のフルモデルチェンジでは、再びフレームが新しくなり、水冷ブルーコアエンジンはスマートモータージェネレーターやアイドリングストップなどを新採用。加えて、トリシティ125/155では初となるLMWアッカーマン・ジオメトリの導入や、ホイールベースの延長などを実施している。ほかにも、NMAXと同様のスマホ連携機能やスマートキーシステムが追加されており、車両価格は50万円をわずかに下回る49万5000円となった。

水冷単気筒のブルーコアエンジンは、インドネシア生産のNMAX、台湾生産のシグナス グリファスと同系だが、アイドリングストップとトラコンの両方を備えるNMAX、どちらも装備しないシグナス グリファスに対し、タイ生産のトリシティ125はアイドリングストップのみを備えるので、この3機種は絶妙に差別化されていることが分かる。新採用のスマートモータージェネレーターは、エンジン始動時のギヤ鳴りがないので静かであり、アイドリングストップと合わせて上質感が大きく向上した。

停車状態からスロットルを開けてスタートすると、遠心クラッチがつながる際にやや振動が発生するものの、その後はスムーズかつ静かに加速する。車重がNMAXより37kg重く、さらにフロント2輪による転がり抵抗の増加もあって、加速感としては110ccクラスに近いが、交通量の多いバイパスでもパワー的に不足を感じることはほとんどなかった。


操舵性の印象は大きく変わらないが、乗り心地は改善された感あり

続いてはハンドリングだ。この2023年モデルでは、845ccのナイケンやトリシティ300で実績のあるLMWアッカーマン・ジオメトリが新採用された。旋回時にフロント2輪が車体と同調してリーンするヤマハのLMW(リーニングマルチホイール)機構は、パラレログラムリンクと片持ち式テレスコピックサスペンションから成る。新型は操舵軸(ナックルエンド)とリーン軸をずらすオフセットジョイントを装備しており、内外輪差の生まれるフロント2輪が常に旋回方向を向く設計を成立させるのがLMWアッカーマン・ジオメトリだという。

これまで操舵軸上に交差していたリーン軸をオフセットさせることで、深くリーンさせてもパラレログラムリンクとタイロッドの平行が保たれ、フロント2輪の軌道が同心円を描くのがLMWアッカーマン・ジオメトリだ。これにより狙ったラインをトレースしやすく、自然で上質感のある操舵性をもたらすという。

実際に走らせてみると、トリシティ125に対する操舵性のイメージは大きく変わっていないというのが正直な感想で、おそらく新旧を同時に乗り比べて初めて体感できる程度の差ではないだろうか。とはいえ、フロント2輪による接地感やグリップ感の高さは相変わらず群を抜いており、特にハイスピードで深くバンクさせながら轍を斜めに横断するような場面において、これほど安心かつ安定して旋回できる原付二種スクーターを他に知らない。

そして、けっこう良くなったように感じたのは乗り心地だ。ホイールベースが1,350mmから1,410mmへ延びたこと、新フレームが縦剛性とねじり剛性を強化しつつ、適度なしなりを確保したこと、さらにリヤショックのバネレートと減衰力を最適化したことなどが功を奏したのだろう。これらも上質感の向上に貢献しているのは間違いない。

ABS仕様がディスコンになったこと、シート下トランクの照明が省略されてしまったこと、さらに標準装備だったDCジャックがオプションになってしまったことなど、新型にはマイナス要素はいくつかある。その一方で、スマートキーシステムとスマホ連携機能の追加は、多くのユーザーに歓迎されるだろう。前年比で車両価格は7万1500円、約17%もアップしてしまったが、トリシティ125の走りは唯一無二であり、今後も継続して販売されることをうれしく思う。


ライディングポジション&足着き性(175cm/67kg)

新フレームの採用やリヤショックの最適化などにより、シート高は5mmアップして770mmに。とはいえ初代の780mmよりは低く、ご覧のとおり足着き性は良好だ。新型はフットボードスペースの前後長が20mm延長されたが、足元が狭いというネガティブな印象は大きく改善されておらず。最小回転半径は2.6mで、原付二種スクーターとしては小回りが利かない(シグナス グリファスは2.0m)。なお、タンデムステップも改良されている。

キーワードで検索する

著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…