カッコいい125ccバイクをお探しならコレ! スクランブラースタイルのブリクストン・フェルスベルクXC125

鈍色に輝くクロームメッキのタンクにドキッとしたら、あなたはすでにフェルスベルクXC125の虜になっている。気軽に走り出せる現代のビンテージマシン、その大らかな乗り味を楽しもう。

REPORT●宮崎正行(MIYAZAKI Masayuki)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●モトーリモーダ 銀座

ブリクストン・フェルスベルク125XC……495,000円

ビンテージブランドはオーストリアから

そのブランド名、見たことも聞いたこともない人はきっと多いと思う。「ブリクストン」はオーストリアの新興メーカーで、生産国は中国だ。2018年の創業なのでまだわずか5年しか経っていない。にもかかわらずラインナップはすでに4車種13バリエーションを誇っており、カバーする排気量は125ccから1200ccまでと幅広い。なかなかアグレッシブな販売戦略と言える。

“クラシック・ブリティッシュ”のイメージを前面に押し出すブリクストンだが、その中でも「フェルスベルク」はその名が示すとおり、ドイツはヘッセン州にある砂礫採取跡や丘陵地帯などで有名な町の名に由来している。ビンテージスタイルの基本ラインはそのままに、ストリートスクランブラー(フェルスベルク125)やフラットトラック(フェルスベルク250FT)などの車種が揃うラインナップにあってもっともオフロード色の強いクロスカントリー仕様のモデルがフェルスベルク125XCだ。

ピンクナンバーが似合わない?

はじめて目の当たりにしたブリクストン・フェルスベルクXC125はかなりスタイリッシュだった。まずは車体の写真をじっくり見てほしい。生まれたてバイクのわりには、やけに洗練されたデザインじゃないだろうか。直線を上手に織り込んだフォルムにはオリジナリティがあるし、凝りすぎていないところにも好感が持てる。いい意味で初々しさが微塵もない。トライアンフがミニバイクを発売したらこんなカンジになる? と言っても誉めすぎではないだろう。

キャラが立っているなあ、と思った最大の理由はクロームメッキで覆われたされたプレーンな造形のガソリンタンクだ。ものすごく目を引く。日本で売られている内外のバイクの中で、タンクの全面がメッキなのはこのフェルスベルクXC125のみである。

また、大排気量車に比してどうしても貧弱になりがちなエンジンまわりのアピアランスだが、それらをデフォルメするために多くの125ccマシンは巧みにプラスチックのカバー類を加飾させている。それが通例だ。

しかしこのフェルスベルク125XCにその類の足し算はいっさいなし。理由は簡単で、まず空冷単気筒エンジン(スズキ製)の存在感が明確にあり、その上に乗るガソリンタンクのデザインがシンプルで美しいからだ。この抜群なコンビネーションが、フェルスベルク125XCのモーターサイクルとしての存在感をよりハッキリと際立たせている。そういう意味では外装の高い質感に対してピンクナンバーが似合わない気がしないでもないが、そこは言っても詮無きこと。まずは試乗してみよう。

デザインはビンテージマシンの流儀

跨っての足着きにはなんの問題もない。身長172cmの筆者であればご近所を気軽にひとっ走りできる気やすさがうれしいし、シートの体積にはたっぷりとボリュームがあるので長い距離でもラクに身を任せられる。シート自体の前後長もロングゆえタンデムも余裕だろう。おかげでライディングポジションと積載の自由度はすこぶる高かった。そこには「125ccのミニバイクだから」という手抜きはいっさいない。

ボディ各所のデザインもビンテージマシンの流儀をていねいに踏んでいる。まずショートなアップフェンダーの直下にはトライアル風のノビータイヤが収まっており、マフラーのエンド部分は後方に向かって跳ね上げられ、さらにブリッジがかけられたハンドルバーもエキパイに巻かれたバンテージも、みなクラシカルな趣きだ。

この手の懐古バイクは国産車のラインナップからほとんど消えてしまったことを懐かしみつつ(カワサキのWシリーズくらい?)、このあたりのフェルスベルク125XCの徹底ぶりに感心してしまった。

自由な雰囲気をデイリーユースで

深く刻まれた空冷フィンの単気筒エンジンは信頼度の高いスズキ製だ。始動はインジェクションゆえあっけなく、スロットル操作にリズミカルに呼応するサウンドは穏やかで心地いい。クラッチをつないでいざ走り出せば“11ps”なりに加速する。排気量が倍の250ccあればもっとトルクフルにスピードを乗せていくだろうし、楽もできるだろう。しかし「そこまで急ぐわけでもないし」とノンビリを決め込めば不足を感じるほどではなく、むしろこのくらいのパワー感が車体のオーソドックスな雰囲気に似合っていると思った。

フェルスベルク125XCの素性の良さに気づいたのは、郊外の片側一車線道路や空いたワインディングを走っている時のこと。交通の流れにペースを合わせて主張を控えれば、このパワーで大半のシチュエーションはクリアできる。それほど軽いと感じない車重はたしかに登坂路では物足りないときもある。しかしソフトなタイヤとストロークのある足まわり、ゆったりとしたライディングポジションを利して先を急がなければ、このバイクらしいオーセンティックで自由な雰囲気が手軽に楽しめるのだ。

輝くメッキタンクこそフェルスベルク

ハンドリングに関してもビンテージキャラのままにブレはない。フロント18インチは左右にシャープに旋回し……とはならず、ゆったりまったりと自然に方向を変えていく。過敏じゃない穏やかなスロットルレスポンスと素直なハンドリング。Uターンの時だけはもう少しハンドルの切れ角が欲しくなったが、つとめてあくせくせず、流すように走ることですべてのリズムがシンクロしてくる……フェルスベルク125XCの快感ポイントはそこにあった。

走行中に「もっとパワーを!」と感じたら、スロットルをさらに大きく開ければフェルスベルク125XCは全身全霊で応えてくれる。そのときエンジンはここ一番とばかりに唸るが、その頑張っている感じが健気で愛らしい。

エンジンの回転数を上げてきっちりパワーを絞り出すテクニック、大事。ブレーキレバーをしっかりと握って最短ですみやかに減速するスキル、もちろん大切。でも一方で、125cc単気筒なりにトコトコと距離を重ねることがこんなにも愉快だと言うことをフェルスベルク125XCは教えてくれた。

所用を済ませたのち、バイクに再会したときに感じる

「ああ、かわいいバイクだな」

のキモチこそが、フェルスベルク125XCでももっとも強かった印象だ。

ライディングポジション(身長172cm 体重70kg)

スリムな車体のおかげもあって、シート高820mmというスペックを感じさせない足着きの良さを実現している。両足ともべったりと地面に着地するので安心だ。

ディテール解説

ヘッドライトガードやメインキーなど、車体の各所で反復される「X」イメージはBRIXTONの車名に因んでいる。灯火類はすべてLEDが採用されている。
フェルスベルク125XCのメーターはスピードではなく回転計が主役。速度は液晶パートでさりげなく表示される。ニュートラルインジケーター、残量計などを装備。
ハンドルバーのブリッジにはバーパッドを装着。こちらのおかげ? でメーターの表示が上半分しか見えないのはご愛嬌(笑)。アクセサリー用USBソケットを標準装備。
前後連動のコンビブレーキを備えたフロントブレーキ。ローターの口径はφ276mmで、ノーマルタイヤはKENDA製の100/90R18。車重は134kg(本国サイトより)
回転全域でフラットトルクを発揮する2バルブSOHC単気筒エンジン。ピーキーさは無く、回したぶんだけパワーをつむぐ実直な性格だ。最高速は99km/h(本国サイトより)
しっかりとした張りのあるタックロールシートは前後サイズに余裕があるので、ライポジや積載への自由度がとても高い。もちろんタンデムも難なくこなす。
サイレンサーの後端をテーパー状に絞り込む懐かしのオールドスタイルでビンテージ感を演出する。ローターの口径はφ220mm、タイヤはKENDA製の120/80R17。
リヤのサスペンションはコンベンショナルなツインショックタイプを採用。プリロード調整が可能で、シックな艶消しブラックのペイントが施されている。
テールカウルを設けず、スチール製のグラブバーとショートフェンダーがビンテージマシンらしい雰囲気を醸している。テールライトもウインカーもすべてLED製。

主要諸元

車名:フェルスベルク125XC
全長×全幅×全高:2070mm×850mm×1120mm
シート高:820mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
弁形式:SOHC
総排気量:124cc
最高出力:8.2kW(11PS)/9000rpm
最大トルク:9.7N・m(0.99kgf・m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:5段リターン
懸架方式前:テレスコピック正立式
懸架方式後:スイグアーム・ツインショック
タイヤサイズ前:100/90-18
タイヤサイズ後:120/80-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:-kg
燃料タンク容量:11.5ℓ
乗車定員:2名

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著者プロフィール

宮崎 正行 近影

宮崎 正行

1971年生まれ。二輪・四輪ライター。同時並行で編集していたバイク誌『MOTO NAVI』自動車専門誌『NAVI CAR…