見た目は上品な150ccスクーター、KYMCOアローマ150。さて走りの実力は?

主力製品であるスクーターだけじゃなく、ATV、UTVメーカーとしても世界的に知られるようになった台湾のKYMCO。お膝元のアジア市場はもちろんのこと、欧州市場においても高い人気を誇り、同時に信頼性も高めてきました。そんなKYMCOのスクーターラインナップで唯一のモダンクラシックモデルがアローマ150です。このモデルのテリトリーである市街地から郊外の道を走ってみました。

写真●山田俊輔
協力 キムコジャパン https://kymcojp.com/
   コネクティングロッド https://connrod.com/

キムコ・アローマ150……359,700円(消費税込み)

ひとクラス下のコンパクトボディはコミューターとして高い利便性を発揮

クラシックスタイルのスクーターといえば真っ先にベスパやランブレッタが思い浮かびます。それらは長年に渡ってクラシカルなデザインのスクーターを中心モデルに展開していて、世界中で多くのファンを獲得しています。アローマ150はそうした普遍的なカテゴリーに投入されたモデルということになります。ライバルとなるのはベスパ・スプリント150とランブレッタV200あたりになるかと思いますけど、359,700円(消費税込)というアローマ150の価格は、ライバルモデルより15~20万円ほど安価なので、大きいなアドバンテージといえるでしょう。エンジンスペックに関してはほぼ互角ですし、車重は軽くシート高も低くなっているので、取り回しの面でも有利だと思います。

モダンクラシックに位置するスタイリングデザインはイタリアで販売している『LIKE』を踏襲したもので、極端にヴィンテージに振ったものではなく、スクーターの王道というか、トラディショナルなスタイルだと感じました。奇抜なところがないぶん、何年乗り続けても時代遅れの印象は受けないですし、飽きが来ることもないのではないかと思います。ボディに樹脂製パーツを多用しているのは現代的ですが、所どころにクロームメッキパーツをあしらっているので、外観から安っぽさを感じることはありません。女性が街を颯爽と走ったら似合うだろうな~というファッショナブルな印象が強いのですが、クラシカルな雰囲気は熟年ライダーにも違和感がありません。要するに、幅広い年齢層にマッチするスタイリングだと思います。

足つき性

軽量・コンパクトなボディは取り回し性に優れ、だれにでも気軽に乗れる良さがある。それでいてポジションにはゆとりがあって快適な走行ができる。キムコならではのフラットフロア構造で乗り降りがしやすいのも親しみやすさにつながっている。シート高は760㎜で、このクラスのスクーターではトップクラスの低さを実現している。なので足つき性に不満はない

150なので軽二輪クラスに属すモデルですが、ボディサイズは125㏄クラス並みにコンパクトで、車重も128㎏と軽量です。さらにシート高も760㎜と低くされているので、取り回し性が非常にしやすいのがうれしいポイントです。そして、キムコでは積極的に採用されているフラットフロアをアローマ150でも導入しているので、乗り降りのしやすさも併せ持っています。気軽に乗れるというスクーターならではの良さを体現したモデルだということができます。ボディサイズはコンパクトでもポジションは快適で、メインステージである市街地での移動はもちろん、高速道路を利用したツーリングまで幅広く対応してくれるはずです。

セル一発で目覚めたエンジンは、静かにアイドリングします。そしてアクセルを開けるとリニアに加速していきます。ものすごくパワフルといった感覚ではないのですが、必要十分なトルクを発生し、素早く交通の流れに乗ることができます。フラットフロアは足を前方に投げ出すスタイルはとれませんが、足元が広々としているので窮屈感がありません。シートの着座位置にも自由度があるので、さまざまな体格のライダーに快適でムリのない乗車姿勢がとれると思います。アナログ式のメーターも見やすく、「スクーターらしいなぁ」という感覚を抱きながら走ることができました。

エンジンには伸びもあり、60km/hまでの加速に不満はありません。アクセルを開け続ければさらにスピードは上昇していきます。とはいえ、高速道路では全開に近い状態を維持することにはなりそうです。最近は120㎞/h区間もありますが、アローマ150で高速走行する場合には100km/h維持が最良の選択となるでしょう。

ハンドリングは実に素直でニュートラルです。前後12インチタイヤとショートホイールベースは軽快な操縦性を生んでくれ、小回りもしやすくなっています。路地が多い街中を俊敏に走ることができる性能を持っているのです。ただし、荒れた道では衝撃を前後サスペンションが吸収しきれず、跳ねるような走りになってしまいます。まあスクーターの場合、サスペンションストロークが短く、ユニットスイング方式を採っているので、どうしても乗り心地を悪化させてしまいがちです。なのでアローマ150自体の欠点ということはできないのですが、無茶な走り方は禁物だということはたしかです。

クラシカルなボディスタイルでもブレーキにはシングルディスクを装備しています。安全性の面からいってそれは正解です。実際にブレーキは前後ともに不足のない制動力を発揮してくれますし、ABSも装備しているのでタイヤロックによる転倒のリスクも少ないので、安心して走行できました。  手頃な価格で軽二輪クラスのモダンクラシックスクーターが入手できるのは大きな魅力です。ベスパやランブレッタのような長い歴史はありませんが、しっかりとした造り込みがされているので、広い用途にスクーターを活用したいと考えている人には最適なモデルだといえます。

主要諸元

エンジンは150㏄空冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒で、13.3psの最高出力を発揮。低回転から不測のないトルクを発生してくれ、高回転までスムーズにレスポンスしてくれるので、扱いやすいリニアな加速性を見せる
フルカバードされたステアリング周りが、モダンクラシックなスタイリングデザインによくマッチしている。ハンドル幅も広すぎず、混雑する都市部を走るのにじゃまにならない
とても見やすいアナログ式スピードメーターと、燃料、時計、外気温計などさまざまな情報を表示する液晶ディスプレイを組み合わせたメーターパネル
パッシング一体ヘッドライト切り替え、ウインカー、ホーンの各スイッチが並ぶ左手側スイッチ
右側スイッチにはセルスタータースイッチのみ配置される。グリップはレトロなデザイン
ユニークなデザインのヘッドライトはLEDを採用。クラシカルなデザインの中にも現代感覚をうまく取り入れている
フラッシュサーフェス化されたテール周り。テールランプ、ウインカーランプはすべてLED。シート後部に取り回されたクロームメッキのグラブバーがクラシックな雰囲気を醸し出している
フロントカウルインナーはスッキリとしたデザインで嫌みがない。メインキーも使いやすい位置に設置してある
インナーパネルはグローブボックスになっている
フラットフロアの前方に給油口が設置してある
パイピングが施されたダブルシートはちょっとレトロなデザイン。座面はワイドで座り心地は良好。タンデムツーリングも快適にできる
シート下のラゲッジスペース。前方にあるピンがヘルメットホルダーだ
ラゲッジスペース内にはシガーソケットが装備されている
ABS装備のフロントシングルディスクブレーキは、十分な制動力を発揮してくれる。タイヤは前後とも12インチ
リアサスペンションはツインショックタイプで、5段階のプリロード調整が可能
リアブレーキにもシングルディスクを装備。こちらも使いやすくて制動力に不足なし

主要諸元

エンジンタイプ:空冷4ストローク 4バルブ単気筒 SOHC
燃料装置:フューエルインジェクション
総排気量:150cc
内径 × 行程:59 × 54.8mm
圧縮比:10.9
最高出力:9.8kw / 8,500rpm
最大トルク:12Nm / 6,500rpm
変速機型式:CVT
始動方式:セルフ式

車両重量:128 kg
全長 × 全幅 × 全高:1,920 × 675 × 1,125mm
シート高:760mm
軸距:1,320mm
燃料タンク容量:6.5リットル
タイヤ(前):110 / 70-12
タイヤ(後):130 / 70-12
ホイール:アルミニウム
サスペンション形式(前):テレスコピック式
サスペンション形式(後):ユニットスイング式
ブレーキ形式(前):ディスクブレーキ
ブレーキ形式(後):ディスクブレーキ
ABS:前後標準装備

カラーラインナップ:
・パーリーホワイト(NH193PA)
・マットシルバークリスタル(NH263FA)

メーカー保証:3年保証(距離無制限)
生産地:中国

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…