市販車から姿を消したレトロ・アメリカンスタイルのマストアイテム『スプリンガーフォーク』を知る|国内ではプロトが本格派のハーレー用アフターパーツをリリース中

1998年に国内でリリースされた400ccクラスの本格派アメリカモデル・ホンダ スティード VLS。同車はレトロなスプリンガーフォークを新設計して採用した超こだわりの1台。
2011年を最後に、ハーレーの新車ラインナップから姿を消したスプリンガーフォーク。その後はハーレーの純正リペアパーツとしての供給も終了し、現在では貴重なお宝パーツの1つとして扱われている。ここではスプリンガーフォークの歴史や特徴、国内で人気のアフターパーツをレポートしよう。
REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
プロト https://www.plotonline.com/

定番のテレスコピック式とは異なる、レトロな雰囲気と存在感を主張

スプリンガーフォークを採用したゼロデザインワークス製作のレトロなハーレーカスタム(東京モーターサイクルショー2022)。
プロトが発売するハーレー用の「スプリンガーフォーク(FLタイプ/FXタイプ)」。商品の詳細は下記参照! ※写真は東京モーターサイクルショー2023に出展されたもの。
後ろ側の「リジッドフォーク」と前側の「可動フォーク」を、下部のリンクアームで連結。フロントホイールが路面の凸凹に合わせて動くと、可動フォークが上下し、その上にあるスプリングによって衝撃を吸収するしくみ。
2種類のバネを同一線上に配置し、上下のバネが逆方向に伸縮することでサスの動きを安定化。路面からの突き上げによって可動フォークが上に動くと、下側のバネは縮み、その上に備えたもう一つのバネは伸びるという構造。

バイクのフロントサスペンションシステム「スプリンガーフォーク」は、これまでアメリカのハーレーダビッドソンを始め、一部の国産車などに採用。また、テレスコピックフォークを採用したハーレー、ホンダのスティードやシャドウ スラッシャー、ヤマハのドラッグスターやビラーゴ、スズキのイントルーダ―やデスペラード等々をベースに、スプリンガーフォーク仕様へと変更したハイエンドなアメリカンカスタムにも多用されている。

スプリンガーフォークは、ステムの前部にショックアブソーバーやスプリングを設置。むき出しになったスプリング、リジッドフォーク・可動フォーク・リンクアームを持つ複雑に入り組んだメカニカルな外観など、シンプルなスタイルのテレスコピックフォークとは趣きの異なる、古き良きレトロなスタイルに導いてくれる。

スプリンガーフォークを採用したゼロデザインワークス製作の個性的なハーレーカスタム(東京モーターサイクルショー2022)。
スタンダードな正立型のテレスコピックフォーク。写真は1973年発売の超お宝ビンテージモデル、カワサキZ750RS(通称ZⅡ/ゼッツー)。
テレスコピックフォークのスポーツ版である、倒立型フロントフォーク。正立型とは逆に、スプリング&フォークオイルの入ったアウターチューブ(太い筒)を上側、インナーチューブ(細い筒)を下側にレイアウトすることで、バネ下の重量を軽減し、路面への追従性を向上。人気の現行モデル、カワサキZ900RSにも採用。

現在多くの市販車に採用のテレスコピックフォークは、径の異なる2本の筒の内部に、スプリングと油圧ダンパーを備えているのが特徴。スプリンガーフォークに比べ、外観がすっきりしていること。またストローク長を稼ぎやすいため、街乗りはもちろん、オフロード走行やロードコースでのスポーツ走行に適しているのがポイント。

一方スプリンガーフォークは、テレスコピックフォークが誕生する以前に主流だった、今となっては非常にレトロなタイプ。緩衝を担う部分と懸架を担う部分が別になった方式で、スプリング部がフロント前方に露出し、ビンテージ感溢れる外観が特徴だ。

テレスコピックフォークの誕生で、進化が止まったスプリンガーフォーク。構造上、テレスコピックフォークよりもストローク長を稼ぎにくい。また、テレスコピックフォークよりも路面追従性などのレスポンスに劣るなどのデメリットがある。

国内でもかつてホンダ・スティードが、1998年のモデルチェンジでスプリンガーフォーク仕様車の「スティード VLS」を設定。しかしその後は、スティードを含め、ハーレーを除く市販車に採用されることはほぼなくなった。これはレトロで高額=コスト高なスプリンガーフォーク仕様車よりも、高性能かつ安価=コスト安なテレスコピックフォーク仕様車を選ぶユーザーが多かったことが主な理由だと思われる。

1988年に登場したホンダの400ccアメリカン・スティード。1998年リリースの「スティード VLS」は、新設計のスプリンガーフォークを採用。価格はテレスコピックフォークの「スティード VLX」よりも6万円高だった。写真はブラック。
スティード VLS(ブルー)。
テレスコピックフォークのスティード VLXよりも6万円高だったスティード VLS。部品点数が多くてヘビーなスプリンガーフォークは、構造も複雑なためにコスト高となった模様。
1998年に上記の「スティード VLS」と同時発売された、テレスコピックフォーク仕様の「スティード VLX」。当時はスプリンガーフォーク仕様の「スティード VLS」よりも価格は6万円安に設定。

1920年誕生のスプリンガーフォークはハーレーの定番!2011年まで継承

元来、スプリンガーフォークはアメリカのハーレーダビッドソンに採用され、確固たる地位を確立。その歴史は古く、1920年にまでさかのぼる。スプリンガーフォークは登場以来、ハーレーの定番アイテムとして採用されていた。

1949年、ハーレーはスプリンガーフォークを一旦廃止し、現在の主流であるテレスコピックフォークに移行。しかしスプリンガーフォークは、廃止後も根強い人気を獲得。ハーレーはその後もスプリンガーフォーク仕様車を設定するなど、古き良きフロントフォークシステムを継承させてきた。

プロトのスプリンガーフォークを組み込んだレトロなフォルムのハーレーカスタム(ゼロデザインワークス製作)。

2023年現在、ハーレーのスプリンガーフォーク仕様車の最終モデルは、2008年に登場し、2011年まで販売された「FLSTSBソフテイル クロスボーンズ」。ハーレーがスプリンガーフォークを完全に廃止した理由は、前後ABSブレーキシステムの義務化、排気量の拡大による大幅なトルクアップにより、スプリンガーフォークでは走行性能の維持が難しくなった等が考えられる。

スプリンガーフォークに加え、リアサスペンションをもたない「リジッド式サスペンション」の組み合わせは、1940年代以前のクラシカルなハーレーの象徴ともいえるフォルム。

スプリンガーフォーク+リジッド式サスペンションは、“レトロなアメリカンカスタム”として現在でも人気の手法。本場のアメリカはもちろん、国内でも様々なカスタマーが工夫を凝らし、個性的な作品を生み出している。

スプリンガーフォークを採用したゼロデザインワークス製作のビンテージ風ハーレーカスタム(東京モーターサイクルショー2022)。

プロト スプリンガーフォーク(ハーレーFLタイプ/ハーレーFXタイプ)……21万7800円(税込)

写真左はFLタイプ、写真右はFXタイプ。カラーは美しいクロームメッキとブラックパウダーコートの2種類を設定。

2023年現在、大手バイクメーカーからスプリンガーフォークを装備する市販車は消滅。しかしアフターパーツメーカーからは、カスタマーやユーザーの声に応えるべく、各種スプリンガーフォークがリリース中。

写真は国内パーツメーカー・プロトのカスタムパーツブランド「ZERO DESIGN WORKS(ゼロデザインワークス)」がリリースする「スプリンガーフォーク(FLタイプ/FXタイプ)」。同品はロードホッパー用スプリンガーフォークの開発で培った技術を結集。 「ないものは作る」「作るならオリジナルを超えるものを」をコンセプトに、新たなハーレー用のスプリンガーフォークとして開発されている。

FLタイプ/FXタイプともに、ハーレーオリジナルのデザインやディメンションを忠実に再現。もっともこだわったのは、メインレッグの接続方法。社外品にありがちな溶接での接続ではなく、昔ながらのロウ付けを実施。接続部の隙間を埋めるコーキング処理も、知る人ぞ知る製作ポイントとなっている。

強度についても抜かりはなく、変形するまで力を掛け続ける破壊試験を行い、純正品以上の強度を持っていることを確認済み。トップクランプ、ハンドルライザー、ショックアブソーバー、キャリパーサポート、アクスルシャフト等の周辺パーツがキットに同梱され、スムーズな取り付けを可能としている。

純正品のルックスを再現するため、メインレッグ部は古風なロウ付けによる接続を実施。十分な強度とクラシカルなデザインを両立している。
ディメンションの違いにより、FLタイプ/FXタイプではショック部のストローク特性に違いあり。それぞれの特性に合わせた減衰性能を持つショックアブソーバーを標準装備。
メーカー車種年式仕様カラー品番価格(税込)
HARLEY-DAVIDSONSOFTAIL88-11FLタイプクローム/
クロームスプリング
ZSF-FL-C¥217,800
ブラック/
クロームスプリング
ZSF-FL-B¥217,800
FXタイプクローム/
クロームスプリング
ZSF-FX-C¥217,800
ブラック/
クロームスプリング
ZSF-FX-B¥217,800

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