「ニンジャZX-4RR/4R SE」登場でさらに熱い400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ!  Z世代、リターンライダーにおすすめの1台

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
ニンジャZX-4RR/4R SEの登場でさらに注目度がアップした400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
カワサキが2023年7月に発売した400ccスーパースポーツ「ニンジャZX-4RR/4R SE」が話題を呼んでいる。

250ccモデルがベースのコンパクトな車体に、最大80PSものパワーを発揮する高性能エンジンを搭載するのがこのモデル。400ccクラスで久々に登場した4気筒のスポーツバイクであることもトピックだが、より排気量が大きい650ccや700ccなどのモデルと価格帯が近く、パフォーマンスも互角、またはそれらを凌駕することも注目だ。

近年、400cc~700ccのいわゆる「ミドルクラス」フルカウルスポーツは、主に10代〜20代前半のZ世代や、レプリカ世代などのリターンライダーなどに大きな支持を受けているだけに、ニンジャZX-4RR/4R SEの新規参入は、このジャンルをよりホットにすることが予想できる。

そこで、ここでは、ミドルクラスに属するフルカウルモデルの中でも、特にスポーツバイク好きの若い世代やリターンライダーなどにおすすめのモデルにスポットを当て、その魅力などを探ってみたい。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●本田技研工業、ヤマハ発動機、カワサキモータースジャパン、山田俊輔

普通二輪免許で乗ることができるモデル

まず、400cc〜700ccのフルカウルスポーツのおすすめモデルを、新車で購入できる国産車を例に免許別に紹介する。

最初に、近年若い世代の取得者が増加している「普通二輪免許」で乗ることができる最大排気量の400ccモデルをピックアップする。

普通二輪免許では、車検がないことで維持費も安い250ccのフルカウルモデルも選べるが、高速道路などでより余裕走りを楽しめるのは、やはりこのクラスだろう。

カワサキ・ニンジャZX-4RR/4R SE

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
カワサキ・ニンジャZX-4RR


250ccスーパースポーツ「ニンジャZX-25R」をベースとする新設計の高張力鋼トレリスフレームに、399cc・水冷並列4気筒DOHCエンジンを搭載。走行風を採り入れることでパワーを増大させるラムエアシステムの採用で、最高出力を77PSから80psまでアップさせることを可能とする。

足まわりでは、専用セッティングの「SHOWA SFF-BPフロントサスペンション」を採用。プリロード調整機構も装備することで、好みや走行状況などに応じてスプリングの硬さを変更することができる。また、さまざまな状況下で安定した車体の挙動維持をサポートする「KTRC(カワサキトラクションコントロール)」、クラッチやアクセルの操作なしでアップ・ダウン両方のギアチェンジが可能な「オートブリッパー付きKQS(カワサキクイックシフター)」など、充実した装備も魅力だ。

ラインアップには、WorldSBK(スーパーバイク選手権)を闘うカワサキ製ワークスマシンのカラーを再現した「ニンジャZX-4RR KRTエディション」と、USBソケットなどツーリングにも便利な装備を持つ「ニンジャZX-4R SE」がある。

<主要諸元>
エンジン:399cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
最高出力:57kW(77PS)/14500rpm *ラムエア加圧時59kW(80PS)/14500rpm
最大トルク:39N・m(4.0kgf・m)/13000rpm
燃費:WMTCモード値20.4㎞/L
車体サイズ:全長1990mm×全幅765mm×全高1110mm
シート高:800mm
車両重量:189kg〜190kg
価格(税込):112万2000円〜115万5000円

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
カワサキ・ニンジャZX-4R SE

カワサキ・ニンジャ400

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
カワサキ・ニンジャ400(写真は2023年9月15日発売予定の2024モデル)


最高出力35kW(48PS)を発揮する400cc・並列2気筒エンジン搭載のハイパフォーマンス・スポーツ。167kgの軽量スリムな車体は扱いやすさ抜群。φ41mmの大径フロントフォークやラジアルタイヤなど、高い動力性能を支える充実した機能を備える。優れたコントロール性やアップライトなライディングポジションにより、ツーリングからスポーツ走行まで幅広いフィールドをカバーする。ラインアップにはスタンダード仕様のほか、ワークスレーサー風カラーの「KRTエディション」も用意する。

<主要諸元>
エンジン:399cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒
最高出力:35kW(48PS)/10000rpm
最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/8000rpm
燃費:WMTCモード値25.7㎞/L
車体サイズ:全長1990mm×全幅710mm×全高1120mm
シート高:785mm
車両重量:167kg
価格(税込):77万円

ホンダ・CBR400R

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ホンダ・CBR400R


最高出力46psを発揮する400cc・2気筒エンジンを搭載したライトウェイトモデル。ホンダ最高峰スーパースポーツ「CBR1000RR-Rファイヤーブレード」を彷彿とさせるアグレッシブなスタイルを採用しつつも、比較的楽なライディングポジションにより、街乗りからツーリングまで、マルチに楽しめる懐の深さが魅力。2021年の一部改良では、フロントフォークに倒立タイプのショーワ製SFF-BPを採用したほか、フロントブレーキをダブルディスク化するなどで、より装備を充実させている。

<主要諸元>
エンジン:399cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒
最高出力:34kW(46PS)/9000rpm
最大トルク:38N・m(3.9kgf・m)/7500rpm
燃費:WMTCモード値27.9㎞/L
車体サイズ:全長2080mm×全幅760mm×全高1145mm
シート高:785mm
車両重量:192kg
価格(税込):84万1500円

大型二輪免許で乗ることができるモデル

次は、排気量制限がない「大型二輪免許」で乗ることができるモデルだ。普通二輪免許から大型二輪免許へステップアップした若い世代はもちろん、久々にバイクに乗るリターンライダーでも、比較的乗りやすいモデルを挙げてみる。

ホンダ・CBR650R

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ホンダ・CBR650R


扱いやすいパワー特性やスポーティな走りが魅力の650ccロードスポーツ。スチール製ツインチューブフレームに搭載する648cc・水冷4気筒エンジンは、低回転から発生するトルクフルな特性を持ち、街中などでも扱いやすく、それでいて、直列4気筒らしい高回転域まで吹け上がる伸びやかな回転フィーリングも楽しめる。2021年のマイナーチェンジでは、フロントフォークに倒立式のショーワ製SFF-BPを採用。さらなる軽快性や高い路面追従性などを実現している。

<主要諸元>
エンジン:648cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒
最高出力:70kW(95PS)/12000rpm
最大トルク:63N・m(6.4kgf・m)/9500rpm
燃費:WMTCモード値21.5㎞/L
車体サイズ:全長2120mm×全幅750mm×全高1150mm
シート高:810mm
車両重量:208kg
価格(税込):107万8000円〜111万1000円

ヤマハ・YZF-R7

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
ヤマハ・YZF-R7


ネイキッドモデルの「MT-07」をベースにした、扱いやすいエンジンや軽量スリムな車体を持つフルカウルスポーツ。外観は、ヤマハのスーパースポーツ「YZF-R」シリーズの特徴であるM字ダクトを踏襲したフロントフェイスが印象的。最高出力54kW(73PS)を発揮する688cc・直列2気筒エンジンは、スポーツバイク初心者でも「扱いきれる」特性が魅力だ。急なギヤダウン時に過度なエンジンブレーキを抑止する「アシスト&スリッパークラッチ」、フルアジャスタブルの倒立フロントサスペンション、ブレンボ製・純ラジアルマスターシリンダーを装備するフロントブレーキシステムなど、サーキット走行にも対応する数々の装備が満載だ。

<主要諸元>
エンジン:688cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒
最高出力:54kW(73PS)/8750rpm
最大トルク:67N・m(6.8kgf・m)/6500rpm
燃費:WMTCモード値24.6㎞/L
車体サイズ:全長2070mm×全幅705mm×全高1160mm
シート高:835mm
車両重量:188kg
価格(税込):105万4900円

カワサキ・ニンジャ650

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
カワサキ・ニンジャ650 KRTエディション


車両重量194kgという軽くスリムな車体に、低中回転域の力強さを重視した649cc・並列2気筒エンジンを搭載したフルカウルモデル。外観は、カワサキのスーパースポーツモデル「ニンジャ(Ninja)」シリーズ共通のスポーティなイメージを踏襲。LEDヘッドライトや4.3インチTFTカラー液晶スクリーンを採用することで、先進性と高級感も演出する。2023年のモデルチェンジでは、独自のトラクションコントロールシステム「KTRC」も採用。スポーツライディングを意識した制御を行うモード1と、滑りやすい路面でのスムーズな走行に対応するモード2から選択が可能だ。スタンダード仕様のほか、ワークスレーサー風カラーの「KRTエディション」もラインアップする。

<主要諸元>
エンジン:649cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒
最高出力:50kW(68PS)/8000rpm
最大トルク:63N・m(6.4kgf・m)/6700rpm
燃費:WMTCモード値23.6㎞/L
車体サイズ:全長2055mm×全幅740mm×全高1145mm
シート高:790mm
車両重量:194kg
価格(税込):99万円

高性能な600ccスーパースポーツとの違い

ミドルクラスのフルカウルスポーツには、ほかにもホンダ「CBR600RR」や、カワサキの「ニンジャZX-6R」などもある。いわゆる「600ccスーパースポーツ」と呼ばれるミドルスポーツだが、ここではおすすめには挙げていない。その理由は、これらモデルは、本格的なレースにも対応するほどのハイパフォーマンスなマシンたちだからだ。

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
ホンダ・CBR600RR。ちなみに、2023年8月の鈴鹿8耐では新型の市販予定車も先行展示された

例えば、CBR600RRの場合は、599cc・4気筒エンジンを搭載し、最高出力89kW(121PS)/14000rpm、最大トルク64N・m(6.5kgf・m)/11500rpmを発揮する。しかも、車両重量194kgという軽い車体により、ワインディングやサーキットなどで、俊敏な加速やコーナリング性能を発揮する。

また、ニンジャZX-6Rは、636cc・4気筒エンジンを搭載し、最高出力93kW(126PS)/13500rpm、最大トルク70N・m(7.1kgf・m)/11,000rpmを発揮。走行風を採り入れることでパワーを増大するラムエアシステムも持つことで、最高出力を最大97kW(132PS)までアップさせることが可能だ。さらに、車両重量はこちらも197kgと超軽量。高速道路での合流時などはもちろん、サーキットのコーナー出口などでも鋭いダッシュ力を発揮する。

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
カワサキ・ニンジャZX-6R KRTエディション

ちなみに、現在、新車では購入できないが、かつてラインアップにあったヤマハの「YZF-R6」やスズキの「GSX-R600」なども、ハイスペックな点は同じだといえる。

これら600ccスーパースポーツは、前述の通り、全日本ロードレース選手権のST600クラスなど、本格的なレースにも対応する高いパフォーマンスを持つことが特徴だ。その動力性能は、ホンダ「CBR1000RR-Rファイヤーブレード」やヤマハ「YZF-R1」、カワサキ「ニンジャZX-10R」など、200PSを超えるパワーを持つ1000ccスーパースポーツにこそ及ばないものの、自在に乗りこなすにはかなりのスキルも必要だ。

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
ホンダ・CBR1000RR-RファイヤーブレードSP

扱いきれる100PS未満のパワーと軽い車体が魅力

一方、今回おすすめとして挙げたモデルたちは、乗ることのできる免許や排気量に違いはあるものの、いずれも最高出力は100ps未満。パワーは600ccスーパースポーツに劣る。だが、その分、例えば、大型二輪にステップアップしたばかりの若いライダーなどには、比較的扱いやすいといえる。

また、レプリカ世代などのリターンライダーが、久々に乗るバイクとして選ぶなら、スポーティなスタイルを持ち、特性がよりマイルドな最新のミドルスポーツの方がより安全だと思う。また、600ccスーパースポーツが持つ120PS以上のハイパワーを持てあますよりも、自分が操っている感があって楽しいはずだ。

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
軽い車体とほどよいパワーが注目のニンジャZX-4RR

ちなみに、50代後半、16歳からずっとバイクに乗ってきたオジさんライダーの筆者も、ミドルクラス・フルカウルスポーツの愛好者だ。3年前に、スズキの1300ccメガスポーツ「ハヤブサ」(2代目)からCBR650Rへ乗り換えたのだが、抜群の乗りやすさから年間の走行距離がいっきに増えたほどだ。ハヤブサを所有していた時は、おそらく年間3000km程度だった走行距離が、CBR650Rでは年間8000km以上も乗るようになった。

主な用途はツーリングだが、このバイクを購入してからは、たまにサーキットのスポーツ走行も楽しんでいる。特に、サーキットでは、2代目ハヤブサの最高出力197PSというパワーと、車両重量が260kgを超える重さに苦労した。CBR650Rの場合、パワーこそ95PSとハヤブサには劣るが、よりアクセルを全開にしやすいためストレスを感じないし、車体も60kg近く軽いことで、軽快なハンドリングを楽しめる。愛車の性能をより使い切れることで、「上手くなった」感じもして、今では大満足している。

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
筆者はCBR650Rでサーキット走行も楽しんでいる
400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
筆者が所有していた2代目ハヤブサ(2008年型の輸出仕様)

ニンジャZX-4RRはベテランライダーも注目!?

このように、絶対的パワーこそ1000ccクラスには及ばないものの、若い世代やリターンライダー、筆者のようなオジさんライダーなどにとって、ちょうどいいパワーと軽い車体で乗りやすいのが、最新の400cc〜700ccフルカウルスポーツだ。

特に、新しく発売されたニンジャZX-4RRは、リヤサスにフルアジャスタブルタイプの「SHOWA BFRC-liteリヤサスペンション」を採用していることも注目点だ(ニンジャZX-4R SEには未設定)。縮み側、伸び側の減衰力調整やプリロード調整もできることで、ライダーの好みに合わせた細かいセッティングが可能。サーキット走行などよりハイレベルな走りに対応している。

400cc〜700cc国産フルカウルスポーツ
ニンジャZX-4RRのリヤサスペンション

そして、こうした充実装備を持つことから、ニンジャZX-4RRは普通二輪免許を取ったばかりのZ世代やリターンライダーだけでなく、長年バイクに乗っているベテランからも注目されていることが予想できる。

いずれにしろ、レーシーなスタイルと、幅広いスキルのライダーに対応する動力性能を持つ400cc〜700ccのフルカウルスポーツは、街乗りからツーリング、ワインディングからサーキットまで、さまざまなシーンで楽しめることが魅力だ。幅広い層のスポーツバイク好きにとって、かなり注目のモデル群だといえるだろう。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…