BMW G310RとヤマハYZF-R25、勢力の変化が対象的な2車に注目。<2023年のもて耐に参戦したマシン②>

全国各地のBMWモトラッドディーラーが積極的な姿勢を示しているからか、近年のもて耐ではG310Rを使用するエントラントが着実に増えている。そんなG310Rとは対象的な存在がヤマハYZF-R25で、2023年は参加台数が大きく減少することとなった。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

着実に台数が増えているG310R

門外漢にとっては意外な話かもしれないが、前方吸気・後方排気の水冷単気筒をスチール製トレリスフレームに搭載するBMW G310Rは、近年のもて耐で年を経るごとに勢力を拡大している。その背景には、全国各地のBMWモトラッドディーラーによる手厚いサポートがあるようだ。

排気量的が313ccのG310Rが、もて耐出場を認可されたのは2017年で、当初は1台のみのエントリーだったものの、2023年は、3耐に8台、7耐に7台が参戦。ちなみに、今年度のG310Rの総合最上位は9位だが、2022年には3台のCBR250RRに次ぐ4位という好成績を収めている。

PWF

今回がもて耐初参戦となったPWFは、ミニバイクを中心に草レースを楽しんでいるチームで、G310Rを選択した理由はたまたま……だったそうだ。その事情を、当日は不在だったオーナーの藤巻正人さんに代わって教えくれたのは、これまでに多種多様なレースで栄冠を獲得してきた小山勝則さん。「以前の藤巻さんに、G310Rに乗りたい、もて耐に出たい、という意識は無かったと思いますが、たまたまモトラッド高崎さんが製作したレーサーが手に入って、モノは試しでG310トロフィーに出たら好感触が得られたので、じゃあもて耐にも出てみようかと。戦闘力に関してはまだ何とも言えませんが、同じバイクを使用する他チームの状況を見ると、長く楽しめそうな気はしますね」

現在のBMWが販売しているフルカウルスーパースポーツはS1000RRとM1000RRのみだが、G310Rレーサーの定番になっているエーテック製フルカウル+シングルシートを装着したPWFの車両を見たら、このまま市販して欲しい‼と感じる人が多いんじゃないだろうか。なおPWF車のマフラーはヨシムラ、フルアジャスタブル式リアショックはナイトロンで、バックステップはベビーフェイスを選択。

ハンドルはバー式からセパレート式に変更。ラップタイマーと水温計は、ハンドルポスト用の穴を利用したステーに取り付け。
ノーマルマフラーはダウンタイプだが、後方排気の美点を活かすためか、もて耐に参戦するG310Rはアップタイプが主流になっている。

YZF-R25ともて耐の相性はいまひとつ?

前述したG310Rとは対象的に、ヤマハYZF-R25は今年のもて耐で台数が減少。2022年は18台が参戦していたが、2023年は3耐:2台+7耐:10台=12台。もっとも改めて考えると、YZF-R25がもて耐で主役級の人気を獲得したことはなく、総合最上位は2015年の6位である。

余談だが、全日本ロードレース選手権と併催のJP250では、あまりにも強すぎるCBR250RRへの対抗策として、2022年からYZF-R25の兄貴分に当たるYZF-R3(320cc)の参戦がOKとなった。この規定をもて耐に導入したら、ヤマハ好きの中には喜ぶ人が多いと思うけれど、他の車両を使用するエントラントから猛烈なクレームが来そうである。

モトールエンジニア+尾形ファクトリー

モトールエンジニア+尾形ファクトリーのライダーは、全員がNSR250Rオーナー。もて耐への参戦を開始したのは2018年で、2019年からはマシンをCBR250R→YZF-R25に変更。以下はチームの代表を務める尾形智幸さんの言葉。「車両の選択にコレといった理由はないですが、20年以上前に生産が終了したNSRとは異なり、最近の車両はトラブルや補修部品の心配をせずに、サーキットで全開走行が楽しめるので、やっぱり気分的にはかなり楽ですね(笑)」

基本整備はモトールエンジニアの藤田さんが行っているこの車両だが、エンジンの定期的なメンテナンスは山崎ポーティングが担当。なおリアショックはオーリンズ、マフラーはペンタグラム、バックステップはバトルファクトリーで、クランクケース左右の2次カバーはGBレーシングを選択。

シートカウル内に収まるのは、燃料噴射マップや点火時期のセッティングで使用するaRacer。フルコンなので、ノーマルのECUは撤去。
オーリンズ製リアショックには、プリロード調整を容易にするカラーを装着。ドライブチェーンはRKで、スプロケットはISAを使用。

タイヤはピレリがダントツ人気

2023年のもて耐には、3耐:34台+7耐:65台=99台が参戦。そしてタイヤに注目すると、なんと70台もの車両がピレリ・ディアブロスーパーコルサを選択。他のブランドは、ダンロップが15台、ブリヂストンが14台だった。

ちなみに、ピレリを使用するチームに理由を聞いてみると、“トレッド面が暖まる前でも不安がない”、“サスセッティングの許容範囲が広い”などという答えが返ってきたのだが、その一方で“絶対的なグリップ力はダンロップやブリヂストンのほうが上かも?”という声もあった。いずれにしてもピレリの守備範囲は、相当に広いようである。

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…