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ホンダ・フォルツァ……78万1000円(2025年1月16日発売)



250ccスクーターとしての完成度の高い走りに感心
250ccビッグスクーターブームのピークから20年もの時が流れ、今や国内のラインナップにはホンダのフォルツァとヤマハのXMAX、この2機種しかない。現在、軽二輪スクーターの売れ筋と言えばPCX160やADV160だが、250ccフルサイズのニーズも未だ根強いのは確かだ。ちなみにフォルツァは、基本設計を共有する形で125と350を海外で展開しており、特に125はヨーロッパで大人気となっている。
筆者がフォルツァに試乗するのは、エンジンが1軸バランサー採用の「eSP+」になった2021年モデル以来だが、あらためて完成度の高さに感心する。まずは動力性能から。アイドリング時を含め、全域にわたってエンジンの微振動が抑えられているが、電動スクーターのような無味無臭感はなく、内燃機関としての上質なフィーリングが実に心地良い。スロットル開け始めの反応、そして戻した時に発生するエンブレともに過度ではなく、ライダーを決して慌てさせることがない。右手を大きく動かせば発進は力強く、186kgもの車体をいとも簡単に加速させるが、エンジンはあくまで裏方に徹している印象だ。なお、メーター読み100km/hでの回転数はおよそ6,000rpm。今回はテストできなかったが、120km/h巡航も余裕でこなせそうだ。

ホイール径およびタイヤサイズは奇しくもXMAXと共通で、フロントは120/70-15、リヤは140/70-14を採用する。フロント13インチ/リヤ12インチだった第1世代から知る身としては、この20年あまりでずいぶんと大径化が進んだものだと感慨深い。

前後の大径ホイールおよび1,510mmという長いホイールベースもあって、ハンドリングは微速域から安定性が高く、発進時にフラつきにくい。フロントの舵角の付き方は常に穏やかであり、バンク角主体でスムーズに向きを変える。XMAXとの大きな違いはフロントフォークの支持方法で、ヤマハは一般的なモーターサイクルと同様にインナーチューブを上下のブラケットでしっかりと固定。これに対してフォルツァは、スクーターでは主流のユニットステアを採用する。これにより、操縦に対する反応の俊敏さやフロント周りの剛性感はXMAXの方が上だが、フォルツァはそうしたスポーティさよりもコンフォートな乗り心地を優先したような印象で、ここに両モデルのコンセプトの違いが感じられる。

サスペンションの作動性は前後ともスムーズで、クッション性の高いシートと合わせて乗り心地は優秀だ。ブレーキはリヤの制動力が高い上にコントロール性も優秀で、右手はスロットル、左手は減速に集中できるのも快適に感じられる要因だ。なお、電動式可動スクリーンは、速度や風向きによって刻々と変化する快適な高さをスイッチ一つで無段階に調整でき、これがXMAXに対する決定的なアドバンテージの一つになっている。

Honda RoadSyncは旧型オーナーが嫉妬するほど便利だ
さて、今回試乗した2025年モデルの目玉は、5.0インチTFTフルカラー液晶メーターの新採用だ。ゴージャスな雰囲気から一転、シンプル・イズ・ベストを地で行くようなメーターパネルになったわけだが、スマホおよびインカムとの接続機能「Honda RoadSync(ホンダ・ロードシンク)」は非常に便利であり、旧型オーナーは悔しがるのではないかとすら感じた。
実際に筆者のスマホにHonda RoadSyncアプリをダウンロードし、フォルツァとのブルートゥース接続を実施。ヘルメットに装着しているインカムはあらかじめスマホと連携しているので、これで準備完了だ。試乗中、知り合いから何度かLINEが届いたのだが、それが誰からのメッセージなのかを音声で知らせてくれ、しかも左ハンドルのセレクトスイッチを操作すれば「読み上げ」や「返信」も可能だ。
ナビゲーション機能については、XMAXのような地図画面表示はなく、曲がる方向とそこまでの距離を表示するターン・バイ・ターン方式ではあるが、目的地を音声で入力できるのは便利だと感じた。その他、電話をかけたり、スマホ内のミュージックアプリを操作したりと、さまざまな機能が盛り込まれている。

こうした機能は、アフターマーケットに数多あるスマートモニターの方がハイスペックではある。だが、筆者もすでに愛車に導入しているが、コックピットにモニターを増設することの煩雑さや視線の移動量、手元で操作できないことに少なからずストレスを感じている。その点、Honda RoadSyncはセレクトスイッチの形状も含めて実に良く考えられており、これを軽二輪スクーターに導入したのは大英断だろう。
シート下のラゲッジボックスには、トランクライトが新設された。今までなかったのかという小さな驚きもあるが、これでXMAXと肩を並べることができた。ただし、車載工具を収めるための奥まったスペースに設置されており、自動的に点灯する機能はなく、しかも光量が非常に少ないので、過度な期待はしない方がいいだろう。

コンフォートかつコンビニエントなコミューターとして一段と磨きをかけたホンダ・フォルツァ。昨今の値上げトレンドを反映して価格は13%もアップしたが、それでも軽二輪スクーターの完成形の一つといっても過言ではないだろう。