目次
ヤマハ・YZF-R125 ABS……517,000円(2023年10月16日発売)
倒し込みと同時に始まる一次旋回の高さはまさしくスーパースポーツ!
MT-125(インプレはこちら)やXSR125(インプレはこちら)とプラットフォームを共有するYZF-R125。最も歴史が長いのはこのR125で、海外では2008年に登場している。現行のR7フェイスになったのは2023年モデルからで、このタイミングでトラクションコントロールを初採用した。日本で直接のライバルとなりそうなのは、スズキのGSX-R125だろう。車両価格はヤマハの方が約14%(6万3800円)高く、車重は4kg重い。足周りについてはフロントフォークが大きく異なり、YZF-R125はφ37mm倒立式なのに対し、GSX-R125はかなり細めなφ31mm正立式を採用。なお、リヤサスはどちらもリンク式モノショックだ。
まずはハンドリングから。またがった瞬間、シートの高さに驚く。それもそのはず、兄貴分のYZF-R25より35mmも高いのだ。一方、セパレートハンドルの位置も低く、ピンクナンバーの原付二種ながらもかなり戦闘的なライディングポジションとなっている。これはライダーが積極的にフロント荷重を掛けやすい設定であり、ハンドリングに関して一切妥協していないことがひしひしと伝わってくる。
ワインディングロードでは、ライダーの操縦に対してキビキビと反応するMT-125よりもさらにステアリングの反応が鋭く、一次旋回から積極的に向きを変えようとするさまはまさにスーパースポーツのそれだ。GSX-R125も同質のハンドリングを有しているが、YZF-R125は剛性に優れる倒立式フロントフォークを採用しているため、フロントブレーキを残しながら狙ったラインにビシッと乗せていくことができるのだ。そこに車重の軽さも加わるので、タイトコーナーが続く峠道の下りは楽しいことこの上ない。
ただし、これだけ攻められるようになると、MT-125では特に気にならなかった標準装着タイヤの力不足が少しだけ顔を出してくる。グリップ力については十分にあり、ABSやトラコンを採用しているのでいきなり危険な目に遭うこともないのだが、もう少し“グリップ感”が出てくるとより安心感が増すはずだ。
ブレーキについては、フロントは絶対制動力が高く、リヤはコントロール性重視という設定だ。ABSは前後ともに介入する2チャンネル式で、フロントのみだったり、前後連動式が多い原付二種クラスにおいて、最も安全性の高いシステムを採用している1台だ。
パワーバンドを維持したくなるのは小排気量車の醍醐味だ
15psを発生する124ccの水冷SOHC4バルブ単気筒は、セッティングまで含めてMT-125やXSR125らと共通となっている。ちなみに、スズキのGSX-R125はDOHC4バルブでショートストローク比なのに対し、ヤマハは可変バルタイ機構VVA搭載のSOHC4バルブでロングストローク設定と、フロントフォークだけでなくエンジンにも大きな違いがあるのだ。
MT-125やXSR125らと共通エンジンとはいえ、ハンドリングがここまで違うと、自然と使いたくなる回転域も変わってくるというもの。特にワイディングロードでは、気が付けばVVAがハイカムに切り替わる7,400rpm以上を多用していた。具体的には、2速なら40km/hを少し過ぎたあたりから上の領域で、レッドゾーンの始まる1万1000rpmまで引っ張ると、メーター読みで60km/hをわずかに超える。一方、同じルートを3速や4速で走ることも可能だが、トラクションが弱まるからか、二次旋回力がうまく引き出せないような印象に。パワーバンドをキープしたくなるようなエンジン特性とハンドリングの組み合わせは、小排気量スポーツ車ならではの醍醐味だ。
そして、ここまで走りがスポーティだと、純正アクセサリーのクイックシフターがほしくなってくる。シフトアップ時のみクラッチ操作が不要になるシステムで、価格は1万9800円と安価であることから、ぜひ試してみてほしい。
原付二種クラスのフルカウルスポーツ車は、国内メーカー勢では長らくGSX-R125が唯一の存在だったが、ヤマハがYZF-R125を投入したことで勢力図が大きく変わりそうだ。冒頭に記したように、車両価格はヤマハの方が約14%高いが、パーツや塗装の質感、走りのクオリティにおいては価格以上の差が感じられる。一方、スズキはシート高が30mm低く、これが大きなアドバンテージになりそうだ。よって、どちらを買おうか迷っている人は、まずは店頭で足着き性を確認することをお勧めしたい。