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ポルシェを象徴する「9」で始まる3桁のナンバー
1967年、ポルシェ 911に続き、より小型で軽量なミッドシップスポーツカーとして「914」が登場。その後、「924」「928」「944」といった様々なモデルがラインナップに加わり、モデル名として型式ナンバーがそのまま付けられている。こうして「9」で始まる3桁の数字は、ツッフェンハウゼンで開発された信頼できるスポーツカーの代名詞として世界的に定着することになった。
ところが時を経て、900番台がなくなる可能性が出てきた。公道走行可能なモデルに加えて、純粋なレーシングカーにも社内の型式ナンバーを割り当てる必要があったからだ。1969年のジュネーブ・ショーで公開され、1年後のル・マン24時間レースで総合優勝を果たした917は、型式ナンバーを車名として与えレースで成功した最初の例である。
「911」を名乗りながら進化を表す型式ナンバー
やがて、ポルシェのネーミングは型式ナンバーの採用だけででなく、柔軟性が求められるようになった。エンジンの違いや派生モデルなどが、続々と加わったのである。911は1968年のモデルイヤーに初めて「Aシリーズ」という名称を採用。1969年には「Bシリーズ」、1970年には「Cシリーズ」と続き、1973年には大幅なデザイン変更を施した「Gシリーズ」が発表された。日本国内で俗に「ナロー」と呼ばれるのは「A~Fシリーズ」まで、同じく「ビッグバンパー」と呼ばれるのは「Gシリーズ」以降だ。因みに、「ナロー」も「ビッグバンパー」も型式ナンバーは「タイプ901」としている。
ただし、シリーズ内の特別なモデルには、時折、独自の型式番号が与えられる。たとえば「911 ターボ」と名付けられた「タイプ930」や「タイプ954(911 SC RS)」は、その一例だ。
そして1988年、911の歴史に大きな区切りがつけられることになった。デザインを一新した「タイプ964」シリーズが登場したのである。続いて1993年に「タイプ993」が登場。その後、伝統の水平対向エンジンを水冷化した「タイプ996」「タイプ997」「タイプ991」と世代を重ね、現行モデルの「タイプ992」がデビューした。
911以外のモデルでは、カレラGT(型式ナンバー980)、ボクスター/ケイマン(初代がタイプ986、以降987、981)、カイエン(955)など。現行モデルの718 ボクスター/ケイマン(タイプ982)に与えられた「718」とは、1950~60年代に活躍したレーシングカーの名称から採られ、現在では718シリーズとして復活を遂げたカタチだ。3桁の形式ナンバーの伝統はある程度の自由度を持ちつつ、今日も維持されている。
【L】
「L」は「ラグジュアリー(Luxury)」の意味。1967年、初代911の3世代目モデルに、この文字が登場した。
【SC】
1964年に登場した最高出力95psを発揮する「356 SC(スーパーカレラ)」で登場。シリーズの最後を飾るモデルとして投入された。1977年に登場した「911 SC」も、当初は911のラストモデルとなる予定だったが、結果的に911 カレラ 3.2がデビューし、最後のモデルとはならなかった。
【T】
1967年に登場した 911 Tに付けられた「T」は「ツーリング(Touring)」を意味し、エンジンのパワーを抑えたエントリーバージョンとなっている。
「カレラ」の由来はメキシコの公道レース
ポルシェの社員は、正式なモデル名や社内型式ナンバーに加えて、いくつかのモデルに愛着を込めたニックネームを付けている。例えば、356は「Dame」、ル・マンに参戦した917/20は「Sau」や「Pink Pig」と呼ばれた。また、数多くのモデルバージョンを表す、様々なネーミングが存在する。
【ボクスター(Boxster)】
1993年に初めて登場した造語で、ボクサー(boxer)とロードスター(roadster)が組み合わせられた。
【カレラ(Carrera)】
そもそも、カレラはエルンスト・フールマン博士が設計した「タイプ547」の4カムエンジンの名称。ポルシェが「550 スパイダー」で大成功を収めたメキシコの耐久レース「カレラ・パナメリカーナ(Carrera Panamericana)」に由来している。その後、ポルシェはこのネーミングを356 A 1500 GS カレラや、911 カレラRS 2.7など、シリーズで最もパワフルなエンジンバージョンに使用するようになった。
【E-ハイブリッド(E-Hybrid)】
内燃機関に加えて電気モーターも搭載したハイブリッドパワートレイン搭載モデル。
【エグゼクティブ(Executive)】
「エグゼクティブ」は、リヤシートのレッグスペースを拡大した、パナメーラのストレッチボディ仕様として登場した。
【タルガ(Targa)】
911 タルガは、911のオープンルーフ仕様で、特徴的なロールオーバー・プロテクションバーと、取り外し可能なルーフトップが特徴となる。車名はシチリアで開催されていた伝説的なロードレース「タルガ・フローリオ(Targa Florio)」に由来し、英語では「プレート」を意味する。
【スパイダー(Spyder)】
馬車用語に由来する「スパイダー 」は、2人乗りの軽量オープンカー。ポルシェにおいては「ロードスター」と同様にオープントップのミッドエンジン搭載スポーツカーにのみ使用されている。
【スピードスター(Speedster)】
「スピードスター」は、フロントガラスをベーシックモデルより大幅に低くすることで、流線型のシルエットを実現した。その代わり、ドライバーの快適性が犠牲にされている。356 アメリカ ロードスターの廉価版として、1954年に「356 1500スピードスター」としてデビュー。2019年には、タイプ991の「911 スピードスター」が1948台限定で生産された。
ハイパフォーマンス仕様に与えられた称号
【GTS】
GTSとは「グラン・ツーリスモ・スポーツ(Gran Turismo Sport)」の略で、もともとはモータースポーツにおけるクラス規定だった。1963年に「904 カレラ GTS」で初めて導入され、1991年には「928 GTS」がこの伝統的な名称を復活させた。現在、「GTS」はポルシェのモデルシリーズの中でも、特にスポーティなモデルに使用されている。
【RS】
「RS(RennSport:レンシュポルト、ドイツ語の「レーシングスポーツ」の意)」は、モータースポーツ由来で公道走行可能なモデル。しかし、この名称は911(タイプ964) RS アメリカのような、スポーティなスペシャルモデルにも使用されている。
【RSR】
「RennSport Rennwagen(レンシュポルト レンヴァーゲン)」は、レーシングスポーツ・レーシングカーと訳される、純粋な競技専用車。公道走行は不可能となっている。
【S】
「S」は「Super」または「Sport」の略で、よりパワフルなエンジンを搭載したバージョン。現在「S」は一貫して「Sport」を意味しており、スポーティなエンジンに加えて、ベーシックモデルよりも強化された装備が採用されている。
【4】
車名に「4」が与えられている車両は、4輪駆動を意味する。
現代でも高い人気を誇る968 CS
【CS】
1992年から販売された「968 CS(クラブスポーツ)」は、標準仕様と同じエンジンを搭載しながらも、スポーツ性を高めるために軽量化が施された仕様。電動パワーウインドウ、リヤシート、エアコンが取り外されていたため、快適性は劣るものの抜群の走行性能を誇った。FRポルシェの軽量仕様・968 CSは非常に希少価値が高く、現代でも人気の1台となっている。
【GT】
グランツーリスモ(GT)は、ベーシックモデルのスポーツ仕様を意味する。「GTS」と同様、モータースポーツにおいて、クラス規定名に使用されたのが始まりとされている。ポルシェでは、1955年に「356 A 1500 GS カレラ GT」で初めて登場。1989年にデビューした「928 GT」で再びこの名称が使われるようになった。
【GT-Cup】
ポルシェ・カレラカップなどで使用されている、市販モデルに近いレーシングバージョン。公道走行はできない。