目次
Volvo XC60 Recharge Ultimate T6 AWD Plug-in hybrid
Volvo C40 Recharge Ultimate Twin Motor
日本で販売する全モデルを電動化したボルボ
ボルボの電動化への舵切りの素早さは目にも鮮やかだった。日産やルノーやテスラといった先行メーカーと比べれば後発とも言えたはずだったが、2010年代終盤から瞬く間にマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッドの拡充を推し進め、2020年にはボルボ初のBEVとなるXC40 Rechargeをリリース。そして2021年3月にはBEV専用モデルのC40 Rechargeをワールドプレミアさせている。気がつけば電動化の旗振り役のようなブランドイメージを確立させていたのだ。
ちなみに2020年11月には日本で販売するすべてのモデルを電動化(ハイブリッドを含む)させている。これはテスラのようなBEV専門ブランドを除けば初めての快挙である。
そんなボルボが用意するさまざまな電動パワートレイン車を一気に乗り比べできる機会を得た。出発地は福岡空港で、ここを拠点に自由なルートを走り回れるとのこと。
任意に行えるパワーマネジメントが気持ちいいXC60 Recharge
まずはPHEVモデルのXC60に乗り込む。正式にはXC60 Recharge Ultimate T6 AWD Plug-in hybridだ。PHEVの場合、満充電でなるべく長い距離を電気モーターのみで走行してガソリンの消費を減らすことが、最もそのアドバンテージを活かせる使い方となる。
そのため、ボルボを含むほとんどのPHEVは走行用バッテリーが空になるまではエンジンをかけずにEV走行をさせる制御になっている。
当たり前だがEV走行時は燃料消費量はゼロ。つまり平均燃費は充電量に大きく左右されるわけだが、今回は車両を受け取った時点で満充電状態ではなかったため、燃費を計測するのはやめた。
走り出しはBEVと同様にスムーズそのもの。アクセルを踏む右足の動きと車体が前に進む動きが完全に一致したような感覚は電気モーターならではのものだが、その加速フィールはボルボらしく良識のあるもので、ググーッとシートに背中が押しつけられるような感覚ではない。必要なときに必要なトルクが得られるからドライバーは一切のストレスを感じない一方で、パッセンジャーが恐怖感を覚えることもないだろう。
先ほど満充電ではなかったから燃費計測はやめたと述べたが、そんなときこその楽しみ方を紹介しよう。ボルボのPHEVには「チャージモード」と「ホールドモード」があり、前者はバッテリー充電を最優先、後者はなるべくバッテリー残量をキープ(使わないということではない)するマネジメントとなる。
そこで高速走行時のように、エンジンがかかっても気にならない、もしくはむしろエンジンの動力で走った方が気持ちがいい、といった場面でチャージモードに切り替えて電力を蓄え、住宅地のようになるべく静かに走りたい、電気だけで走った方が効率が良さそうな場面で通常モードに戻すのだ。
……なんて、まぁ誰でも思いつきそうなアイデアではあるけれど、以前2台のXC60のPHEV車で効果を検証したことがあり、1000kmほど走った結果、この作戦をとった方が明らかに良好な燃費をマークしたのだ。そしてなにより「電気を貯める」「電気だけで走る」といったパワーマネジメントを任意に行えることが気持ちいいし楽しい。
屈強なフィジカルと闘志を併せ持つC40 Recharge
今回もそんな知的なゲームを楽しんでいるうちに、あっという間に目的地である長崎・平戸に到着した。ポルトガルやオランダとの貿易、キリスト教の布教など、早くから海外との交流の要衝として栄えた平戸には、今も数々の教会や復元された商館などが点在し、往時の風情を残している。
ここからは今回一番のお目当てであるC40 Recharge Ultimate Twin Motorに乗り換える。コクピットに起動ボタンはなく、キーを携えたまま乗り込めば自動的にスタンバイ状態になる。シフトレバーをDに入れ、アクセルを踏み込むと、C40はスーッと滑らかに、かつ力強く走り始めた。
C40は基本的にワンペダルドライブだ。アクセルから足を離せば強めに回生ブレーキがかかり、そのままブレーキを踏まずに完全停止させることも可能だ。もちろんこのワンペダル制御はオフにすることもできる。前が空いたチャンスを見計らって、アクセルをグッと踏み込んでみる。するとドーンと身体が後ろに引っ張られ、両手でステアリングを握りしめないと置き去りにされそうな気がするほどの強烈な加速に見舞われた。
先ほどXC60 Rechargeの加速フィールを「ボルボらしく良識あるのもの」とお伝えしたが、C40のそれはなかなか表現に悩む。普段は知的で理性的だが、その実、屈強なフィジカルと闘志を併せ持っているスウェーデン人が牙を剥いたという感じ?
これまでのボルボ車オーナーにすんなり受け入れてもらわなければならないXC60 Rechargeと、BEVならではの新しい世界観を示すC40では担う役割が異なるということだろう。ちなみに0-100km/h加速に要する時間はたったの4.7秒だという。
クルマ好きを唸らせるキャラクター
その加速力もさることながら、4輪がガシッと爪を立てて路面を掴むようなトラクション感も強烈だ。500kgものバッテリーは床下に収められ、前後重量配分は51:49。モーター最高出力と最大トルクは前後とも204PS&330Nmと同等だが、個人的には前後のタイヤのトレッド面に伝わっているトルク配分は3:7のような感覚で、コーナー出口でアクセルを踏み込むと、リヤからグイグイ曲がっていくようなフィーリングがあった。それでいてフロントの接地感もあるから安心してコーナーに飛び込んでいける。
と、まるでスポーツカーのインプレを書いているかのような錯覚に陥りかけたが、それほどまでにクルマ好きを唸らせるようなキャラクターを隠しもっていたのである。
なおC40の2024年モデルはシングルモーターの後輪駆動(!)のみのラインナップとなるらしい。AWDモデルに比べてリーズナブル(699万~739万円)となるのが魅力的なシングルモーター仕様だが、よりスポーツカーライクな身のこなしが楽しめるのではないかと勝手に期待している筆者である。
ちなみにC40ツインモーターのWLTC航続距離484km。今回のテストドライブは、弊社別媒体のレポーターが運転した往路も含めてトータル260kmで、平均速度は48km/h、平均電費は17.6kWh/100kmだった。この程度の距離では充電スポットを探す心配はまったくいらない。
REPORT/小泉健治(Kenji KOIZUMI)
PHOTO/平野陽(AKio HIRANO)
SPECIFICATIONS
ボルボXC60 Recharge Ultimate T6 AWD Plug-in hybrid
全長×全幅×全高:4710mm×1915mm×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:2180kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン Rマルチリンク
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0×93.2cc
最高出力:186kW(253PS)/5500rpm
最大トルク:350Nm/2500-5000rpm
モーター形式:交流同期モーター
モーター定格出力:F 32.5kW R 99kW
モーター最高出力:F 52kW/3000-4500rpm R 107kW/3280-15900rpm
モーター最大トルク:F 165Nm/0-3000rpm R 309Nm/0-3280rpm
駆動方式:AWD
トランスミッション:8速AT
WLTCモード燃費:14.3km/L
車両価格:999万円
ボルボC40 Recharge Ultimate Twin Motor
全長×全幅×全高:4440mm×1875mm×1595mm
ホイールベース:2700mm
車重:2150kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット Rマルチリンク
モーター形式:交流同期モーター
定格出力:160kW
最高出力:F 150kW(204PS)/4350-13900rpm R 150kW(204PS)/4350-13900rpm
最大トルク:F 330Nm/0-4350rpm R 330Nm/0-4350rpm
駆動方式:AWD
バッテリー:リチウムイオン電池
総電力量:78kWh
総電圧:403V
WLTC交流電力量消費率:188Wh/km
一充電走行距離WLTC:484km
車両価格:759万円