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大規模ハイテクファクトリーに
昨年11月をもってBMWグループの内燃機関エンジンのミュンヘンのエンジン工場が役目を終え、BMWの伝統とも言える「Made in München」のエンジンが消滅した。そんな大きな衝撃が走ってからまだ日が浅い年明け早々、BMWはミュンヘンの本社敷地内の第1工場が、2027年度末からEVのみの生産拠点になる事を発表し、再びミュンヘン市民やBMWファンに大きなショックを与えた。
第1工場では長年BMWの顔ともいえる「3シリーズ」や、近年では「i4」等のモデルが1日約1000台製造され、世界へデリバリーされているが、BMWは6億5000万ユーロをこの第1工場へ新たに投資し、物流拠点も含めた大規模ハイテクファクトリーへと変貌するという。
昨年地元ミュンヘンで開催されたIAAモビリティにおいてワールドプレミアとなった「ノイエクラッセ」を、2026年からこの地で製造を開始するのだが、その一方で2027年末には、EV車両のみの生産拠点第1号として正式に稼働開始する。それを意味するのは、BMWの本社のあるミュンヘンで作られる内燃機関車両がいっさい無くなるということだ。「M3」や「M4」さえも、別工場での製造となってしまうという寂しい未来が待っている。
「501」が発表された1952年から75年後
ドイツ国内の他の工場では引き続き内燃機関車両の製造は行われるが、エンジンも車両も第1工場製にこだわる熱心な3シリーズファンは世界に多く存在する。彼らにとって、とても悲しいニュースであるのはもちろんの事、ミュンヘン市民の誇りでもあった地元ミュンヘン産の3シリーズが、数年の内に姿を消してしまうという事実が目の前に突き付けられた。
それにあたり第1工場は、多くの建物が建て替えのため壊されており、大規模な改修工事が行われている途中で、周辺には工事用の大型トラックがひっきりなしに出入りしている。
ミュンヘンで「501」が発表された1952年から75年後の2027年、ミュンヘンでの内燃機関時代の終わりが告げられる。第二次世界大戦後の復興期に自動車が精力的に製造された75年前のミュンヘン市民も、当時大半が平野だったこの何もない街の北部に建設された大きな工場を前に、同じような時代の流れや、一抹の寂しさ、喪失感を胸に抱いていたのだろうか。
しかし内燃機関生産は継続
ただしBMWはアウディやメルセデス・ベンツのように、内燃機関の完全終了期間を宣言していない。ユーザーが必要とする様々なモビリティの選択肢を与えられるよう、EVの生産拡大へ精力的に投資する一方で、根強い要望に応えるべく内燃機関生産を継続するとオリバー・ツィプセ代表取締役社長は表明している。さらに2035年から段階的に内燃機関廃止するというEUの指針に対し反対を唱えて、ユーザーのみならず他の自動車メーカーやサプライヤー関連会社からも大きな称賛と賛同を得ている。