目次
Toyota Crown Sport RS
少し導入が遅れていたPHV
クラウン4兄弟の中でも、もっともアグレッシブというか、わかりやすく言うと「今風SUV」スタイルなのがクラウンスポーツだ。グレードはハイブリッド(HV)のスポーツZとプラグインハイブリッド(PHV)のスポーツRSの2種類があり、HVの方はすでにデリバリーも始まっている。対してPHVは少し導入が遅れていたが、今回ようやくその準備が整った。
搭載されるエンジンはHVと同じで、2.5リッターの直列4気筒。だがピークパワーはHVの186PSに対してPHVは177PS、トルクは同じく221Nmから219Nmと、いずれも僅かに下げている。そのかわりにフロントモーターはHVの120PS/202Nmに対してPHVは134PS/270Nmと大幅にアップ(リヤモーターは54PS/121Nmで同じ)。と言ってもこのあたりの数字はRAV4とほぼ同じなので、システム自体はそのままキャリーオーバーされていることがわかる。
PHVで注目したいのはむしろシャシーだ。サスペンションはショックの減衰力や摩擦特性をチューニングし、さらに減衰力を4輪独立制御するAVSを採用。フロアトンネルにはブレースを追加するなど、ボディ剛性の向上も行っている。また重量増に対応してブレーキはフロントに6ポット対向キャリパーが奢られており、これはルックス的にも効果抜群。
冒険したインテリアデザイン
インテリアはブラックとレッドの2トーン。センターから助手席側に効果的にレッドのレザーを配して、運転席側はブラック中心でまとめ、さらにドア内張りの色まで左右で変えるなど、トヨタらしからぬ(?)色使いは新鮮だ。このレッドのレザーは表面に微妙にシルバーが被っているような、不思議な色合い。PHVのスポーツRSのインテリアカラーはこれ一択のみというのも、なかなかに思い切った設定だが、この躍動的なボディデザインにはインテリアもこれくらい冒険した方が似合っている。
満充電であればEVでの走行可能距離は約90kmというだけのことはあり、都内を走り回る程度ではまったくエンジンは始動しない。アクセルの動きに対して必要なだけのパワーとトルクを黙々と供給するモーターによる走りは、当然ながら一切のノイズを発生しないので室内は極めて静か。高速道路で多少踏み込んでみても、モーターのみの力であっという間に制限速度まで達してしまうから、長距離移動でもしない限り、エンジンの出番はほぼないだろう。
HVよりも落ち着いたしなやかさ
加えてサスペンションが絶妙だ。路面からの入力をしなやかにいなし、極めて快適な乗り心地を実現してくれている。ボディ剛性も非常に高いので、足下でサスペンションが素直にダンピングして衝撃を吸収してくれるのだ。21インチの大径タイヤ&ホイールということをまるで意識させないこの上質な乗り心地は、高級車クラウンの面目躍如というべきか。PHVはフロア周りにバッテリーを搭載し、車重はHVよりも220kg重い2030kg。この重量増も乗り心地には有利に働いているようで、HVよりも明らかに「落ち着いたしなやかさ」を感じられる。
極めて静粛な走りと必要にして十分な速さ、そして上質な乗り心地。HVとの価格差は175万円だが、もし購入するのであれば装備などの差を考えても、PHVを積極的に選びたくなるだろう。
REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 4月号
SPECIFICATIONS
トヨタ・クラウンスポーツRS
ボディサイズ:全長4720 全幅1880 全高1570mm
ホイールベース:2770mm
車両重量:2030kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:2487cc
最高出力:130kW(177PS)/6000rpm
トルク:219Nm(22.3kgm)/3600rpm
フロントモーター:134kW(182PS)/270Nm(27.5kgm)
リヤモーター:40kW(54PS)/121Nm(12.3kgm)
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後235/45R21
車両本体価格:765万円
【問い合わせ】
トヨタ自動車お客様相談センター
TEL 0800-700-7700
https://toyota.jp