グローバルモデルとなったクラウンの世界戦略を考察する

新型クラウンはグローバルで成功するか? その成功の鍵は話題となった4車型にある

発表会場に並べられた新型クラウン。左からクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートと呼ばれる。
発表会場に並べられた新型クラウン。左からクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートと呼ばれる。
16代目となる新型クラウンが発表された。事前に噂されていたとおりセダンだけではなく、エステート(ワゴン)はもちろん、スポーツ(SUV)やクロスオーバーまで一気に4車型がラインナップされる予想外の展開となった。さらに今回のクラウンはグローバルモデルとして展開するという。その戦略と展望をブランドの観点から考察してみよう。

Toyota Crown

クラウンが4車型で世界に挑戦する理由

全長4930mm、全幅1840mm、全高1540mmの堂々たるサイズのクラウン クロスオーバー。ホイールベースは2850mmとなる。
全長4930mm、全幅1840mm、全高1540mmの堂々たるサイズのクラウン クロスオーバー。ホイールベースは2850mmとなる。

7月15日、16代目となるクラウンがお披露目となった。クラウンといえば3ボックスセダンという固定観念があるが、16代目は4つの車型からなるワイドバリエーションでの展開となった。

クラウンの歴史を振り返れば、決して3ボックスだけであったわけではなく、11代目まではステーションワゴンがあったし、エレガントな2ドアクーペのほか、商用のライトバンやピックアップトラックがあった時代もある。その意味でクラウンのワイドバリエーション化は元の姿に戻ったともいえる。

なぜこのような展開になったのか。最大の要因はクラウンというブランドをトヨタのメインストリームに返り咲かせたいという豊田章男社長の執念だ。クラウンとカローラは絶対に守らなくてはならないトヨタのビッグネームという認識なのだろう。最初に復活に着手したカローラは一気にCセグメントの世界水準にまで商品力を上げて、車種バリエーションも拡大、欧州でも車名をオーリスからカローラに戻した。結果として国内販売でヤリスに次ぐ2位にまで挽回(本年1〜6月)、トヨタの代表車種に返り咲かせることに成功したのだ。

国内のみで知れ渡る代表車種

全長4930mm、全幅1840mm、全高1540mmの堂々たるサイズのクラウン クロスオーバー。ホイールベースは2850mmとなる。
16代目となる新型クラウンは4車型のうち、まずはクロスオーバーから登場する。

カローラとは異なり、クラウンは事実上国内市場専用車だったため、クラウンがトヨタの代表車種として認識されていたのは日本だけである。しかしクラウンは1955年発売と最長の歴史を誇り、トヨタのトップレンジを長く担ってきたフラッグシップとしてトヨタとしては非常に愛着のあるブランドなのだろう。

今回、クラウンをメインストリームモデルに復活させるにあたって、おそらく最初に考慮したことがグローバル展開であったのではと推察する。クラウンを日本市場に留まらず、グローバルにトヨタブランドのフラッグシップモデルに育てようという作戦である。世界中で支持されるトヨタを代表するモデルとなるためには、カローラと同様に様々なニーズに対応する車種バリエーションが必要となる。現在売れ筋のSUVは必須だろう。エリアによってはフォーマルニーズを満たすセダンも切り捨てられない。

まさにゼロからの発進となるクラウン

海外ではクラウンの知名度は事実上ゼロで、ほとんどの人にとってはまったくの新モデルとなるため、今までの歴史や伝統にこだわらない斬新で魅力的なデザインも必要だ。それが結果として、クラウンをよく知る日本人にとってはやや違和感のあるデザインを纏った4車型バリエーションということになったのだろう。果たして日本市場ではどう受け止められるのであろうか。

REPORT/山崎 明(Akira YAMAZAKI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 9月号

新型クラウンの発表会では4車型のうちクロスオーバーのみインテリアまで見ることができた。

新型クラウン クロスオーバーを見て思い出した「あのクルマ」とは? ヒントはBMW

16代目となる新型クラウンが4車型同時に発表され、話題を呼んでいる。クラウンはここ数代にわた…

キーワードで検索する

著者プロフィール

山崎 明 近影

山崎 明

1960年、東京・新橋生まれ。1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年電通入社。1989年スイスIMD MBA修了。…