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SUPER FORMULA 2024
FIA-F2と並ぶF1への登竜門
全日本スーパーフォーミュラ選手権は、1973年にスタートした国内トップフォーミュラレースの現在の呼称です。国内はもちろんアジア圏最高峰のレースシリーズで、F1世界選手権直下のカテゴリーに位置し、同じくヨーロッパで行われているFIA-F2と並びF1への登竜門と言えます。
スーパーフォーミュラのマシンは全チームが同じシャーシ(SF23)と横浜ゴムのタイヤを使用します。エンジンは2.0リッター直列4気筒ターボで、トヨタとホンダの2種類がありますが調整され、ほぼ同等の性能を発揮します。毎戦、1000分の1秒を争う非常にハイレベルな戦いが繰り広げられるレースですが、同時にドライバーの実力とチームの技術力と戦略がものを言うフォーミュラカーシリーズです。
現役女子大生選手など豊富な話題
2024年シーズンは、開幕前の3月の鈴鹿公式テストからスタートしました。今シーズンは昨年のチャンピオンである宮田莉朋選手が活躍の場をヨーロッパに移すこととなり、勢力図に変化が出ることが予想されました。逆にヨーロッパFIA-F2からF1候補生の岩佐歩夢選手が強豪であるTEAM MUGENに加入し、鳴り物入りで参戦します。ルーキーと言えば2023年スーパーフォーミュラライツのチャンピオン木村偉織選手、そして日本人初の女性レギュラードライバーとなる現役女子大生のジュジュ選手にも注目が集まります。
まだ寒さの残る鈴鹿で2024年シーズンが幕を開けました。予選で輝きを放ったのはフル参戦4年目の坂口晴南選手で、チャンピオン経験者を寄せ付けず自身初のポールポジションをゲット。しかし決勝は坂口選手がスタートで失速、3番手の野尻智紀選手がトップに出ます。2~5番手の争いが目まぐるしく変わる中、野尻選手は危なげなくトップチェッカー。2度の王者の貫禄を見せました。2位には山下健太選手、3位には昨年の大怪我から復帰の山本尚貴選手が入りました。
参戦6年目で初優勝
5月の第2戦九州オートポリスで、ルーキー岩佐選手が参戦2戦目にして初のポールポジションを獲得。2番手の牧野任祐選手にコンマ3秒の大差をつけました。決勝レースでは予選での悔しい思いを晴らすように牧野選手が抜群のスタートを見せます。1コーナー手前で岩佐選手をかわすと、後続とのギャップを保ちつつ見事なタイヤマネージメントを見せ快走。参戦6年目にして初の優勝を飾ります。ゴール後は嬉し涙が止まらず、ポディウムで喜びを爆発させました。2位は悔しい表情の岩佐選手、3位は坪井翔選手がVANTELIN TEAM TOM’Sへの移籍後初表彰台に立ちました。
第3戦は仙台スポーツランドSUGO。予選は気温31℃、路面温度50℃という6月とは思えない真夏のようなコンディションの中で行われ、野尻選手と岩佐選手によるTEAM MUGENチームメイト同士の一騎打ちの様相を呈しますが、野尻選手が今季初のポールポジションを獲得し、岩佐選手が僅差で続きます。決勝日は朝から降雨と濃霧の荒天となり、セーフティカー先導でのスタートでレースが始まります。しかし最終コーナーでクラッシュが多発、天候の回復が見込まれず、14周終了時点で打ち切りとなります。結果は予選順位そのままに、野尻選手、岩佐選手、坪井選手がトップ3で表彰台に立ちました。
「第1回遥子女王杯」開催
第4戦の富士スピードウェイは、7月ということで夏本番。直前に同じ富士で公式テストが行われているので、各陣営その成果を持ち挑む週末となりました。トップ4台が0.003秒に入る大接戦となった予選は、Kids com team KCMGの福住仁嶺選手がチーム初のポールポジションをもたらしました。酷暑の決勝ではポールの福住選手がスタート決め、レースをリードします。練習走行から好調の予選2番手の岩佐選手大きくポジションダウン、中盤まで下がってしまいました。一方今回は予選が振るわなかった野尻選手は5番手まで順位を上げます。先頭の福住選手はタイヤ交換に手間取り後退。ここからピット作業のタイミングで順位の変動がある展開となります。終盤4番手の坪井選手が激しい追い上げを見せて、大逆転で今季初優勝を飾ります。2位は今年からベルテックスパートナーズ セルモ・インギングに移籍の大湯都史樹選手、3位にはしっかりと野尻選手が入りました。ちなみに併催レースのKYOJO CUPでは坪井選手の妻、斎藤愛未選手も優勝しており、夫婦で週末を制覇することになりました。
このレースは「第1回遥子女王杯」と銘打たれ、ポディウムでは「大のモータースポーツファン」である遥子女王殿下から坪井選手に杯が手渡されました。
シーズン前半戦を終え、後半戦の残りは5戦。ポイントランキングは野尻智紀選手とTEAM MUGENが頭ひとつ抜け出した感じではありますが、僅差の戦いはどのような展開になっていくのか非常に楽しみです。
PHOTO/田村弥(Wataru TAMURA)