“ずっと乗っていたい”ほど心地よく楽しい「レクサス LBX モリゾウRR」

レクサスのコンパクトSUV「レクサス LBX モリゾウRR」に込められたネーミングの意味を試乗で体感

レクサス各モデルの高性能版には通常、「F」のサブネームが与えられる。だが、LBXに限っては「F」ではなく「モリゾウRR」なのだ。そこには何か深い意味があるに違いない。ちなみに「RR」とは、豊田章男氏のプライベートレーシングチーム「ROOKIE Racing」の略称だ。
レクサスのコンパクトSUV「LBX」の上級モデルとして追加された「モリゾウRR」。
レクサス各モデルの高性能版には通常、「F」のサブネームが与えられる。だが、LBXに限っては「F」ではなく「モリゾウRR」なのだ。そこには何か深い意味があるに違いない。ちなみに「RR」とは、豊田章男氏のプライベートレーシングチーム「ROOKIE Racing」の略称である。(GENROQ 2025年4月号より転載・再構成)

Lexus LBX Morizo RR

パワートレインはGRヤリス譲り

レクサス各モデルの高性能版には通常、「F」のサブネームが与えられる。だが、LBXに限っては「F」ではなく「モリゾウRR」なのだ。そこには何か深い意味があるに違いない。ちなみに「RR」とは、豊田章男氏のプライベートレーシングチーム「ROOKIE Racing」の略称だ。
専用のフロントグリルやエアロバンパー、19インチ鍛造ホイールがスポーティなエクステリア。ボディカラーはブラックを除き、ルーフが黒となるバイカラーが標準となる。

フツーのLBXが思いのほか!?よかったので、とても期待していた「モリゾウRR」。ひと言でいえばLBXの高性能バージョンで、パワートレインはGRヤリスの1.6リッター直3ターボ+電子制御AWDを移植。以前、そのGRヤリスの完成度にもたいそう驚かされたので、両車のいいとこ取りなら楽しくないわけないじゃん! ということで、勝手に期待していたのだ。その実車が今ようやく目の前に。さぁ、果たして?

LBXといえば“史上最も小さなレクサス”として2023年に登場したコンパクトSUVだ。コンセプトは「上質なスニーカー」というもので、狙い通りのしっとりした乗り味に過不足のない動力性能、高い静粛性や居心地のよいインテリアに、個人的には今まで何度も登場しては消えて行った「小さな高級車」の新しい可能性を感じていた。それをさらにマスタードライバーである「モリゾウ」こと豊田章男氏が、レーシングドライバーたちとともに走りを磨き上げていったというのだから期待せずにはいられないだろう。

アピアランスは控えめ。高性能化に伴い冷却・空力性能を改善する目的で大きな開口部を持つ専用バンパーやグリルが装着されるものの、オーバーフェンダーや巨大なスポイラーといった派手な意匠はどこにも見あたらない。全幅はフェンダーモールの分だけ15mmワイドになり、車高も10mm下げられた程度である。

だが、中身には大幅に手が加えられている。特にボディだ。スポット溶接の打点を短ピッチ化し、469ヵ所を追加。さらに構造用接着剤を使用する部分も12.8m延長されているという。さらに鋼板の板厚アップ、補強ブレースの追加など、その改良点は枚挙にいとまがない。

またサスペンションには世界初となる「レスポンス向上減衰構造(REDS)」を採用。これはフロントロアアームに熱硬化樹脂を塗布し焼き付けることで、アームの変形を抑えつつ振動を減衰。操舵レスポンスと質感の向上を図ったという。

エンジンもキャラ立ちまくり

エンジンはスペックこそGRヤリスのものと同等ながら、より伸びやかで気持ちのよい加速が得られるようレクサス独自のチューニングが施されたという。トランスミッションは8速ATも用意。
エンジンはスペックこそGRヤリスのものと同等ながら、より伸びやかで気持ちのよい加速が得られるようレクサス独自のチューニングが施されたという。トランスミッションは8速ATも用意。

そんなわけだからボディの剛性感は非常に高い。路面からの入力を一発で車体が減衰する様はまるでドイツ車のよう。その一方で、足まわりはスポーツモデルとしては比較的ソフト。ガチガチに固めて転舵即ゲインを立ち上げるようなキャラではなく、しっかり足を動かして確実な接地を狙うタイプだ。だからロール量は大きめなのだが、傾くスピードが適切なので素早く舵を入れても車体がグラリと傾いて怖い思いをするようなことはない。どちらかというとフランス車のスポーツモデル的な味付けといえるだろう。

1.6リッター直3ターボは304PS/6500rpm、400Nm/3250~4600rpmと、「超」が付くほどにパワフル。面白いのは低回転域から一本調子にトルクとパワーを盛り上げるイマドキな躾けではなく、明確にオイシイバンドが存在するところ。2000rpmあたりからブーストが立ち上り3000rpm以上で弾け飛ぶように加速。アクセルの食いつきがグッとよくなるのは4000rpm台から。ここをキープすればコーナリング中に右足の細かな操作で自由自在にクルマの向きをコントロールすることができる。

気になる部分がひとつもない

6速MTも文句のつけようがない仕上がり。アクセルペダルがGRヤリスの吊り下げ式からオルガン式になっていることもあり、ヒール&トゥがバッチリ決まるのだ。ブレーキペダルの高さ、踵で煽るアクセルの反力、ブレーキを抜く際のコントロールのしやすさなど、「いやーさすがにわかってるなー」と、走りながら思わず口元が緩んでしまうのだ。

AWDの前後トルク配分はインジケーターを見る限り、発進時こそフロント寄りだがそれ以上はほぼ50対50で走る印象。前後デフにはトルセンLSDが装備されていることもあり、ワインディングを気持ちよく飛ばしているレベルでは不安定な挙動に陥ることは一切なかった。

絶対的な速さよりも上質さと気持ちよさを最優先に仕立てられたクルマ。そのことは乗れば誰もが十分に感じ取れるだろう。BMWでいうならばMではなくアルピナ。ネーミングが「LBX F」じゃないあたりには、もしかしたらそんなことが関係しているのかもしれない。

REPORT/市原直英(Naohide ICHIHARA)
PHOTO/郡大二郎(Daijiro KORI)
MAGAZINE/GENROQ 2025年4月号

SPECIFICATIONS

レクサスLBXモリゾウRR

ボディサイズ:全長4190mm 全幅1840mm 全高1535mm
ホイールベース:2580mm
車両重量:1440kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1618cc
最高出力:224kW(304PS)/6500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3250-4600rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ストラット 後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後235/45R19
最高速度:180km/h ※リミッター作動
0-100km/h加速:5.2秒
車両本体価格:650万円

【問い合わせ】
レクサスインフォメーションデスク
TEL 0800-500-5577
https://www.lexus.jp

レクサス LBXとBMW X2

どちらも人気の「レクサス LBX」と「BMW X2」という日独プレミアムコンパクトSUVの違いをチェック

「レクサス LBX」と「BMW X2」は、どちらも同時期に発売を開始したプレミアムブランドのコンパクトSUVだ。それぞれのブランドにおける立ち位置も似ている両車であるが、実際のスペックにはどのような差が見られるのだろうか?

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著者プロフィール

市原 直英 近影

市原 直英

月刊「GENROQ」シニアプロデューサー。早稲田大学を卒業後、自動車メディアの世界へ。月刊自動車誌副編集…