目次
Range Rover Sport Autobiography D300
23インチのサマータイヤでオフロードコースへ


ランドローバーが誇る、オンロードにおける最強モデル「レンジローバースポーツ SV」を富士スピードウェイのショートコースで堪能したあと、隣接するオフロードコースにも足を運んだ。ただし、こちらでの試乗は「SV」ではなく、3.0リッター直6ツインターボディーゼルを搭載した「レンジローバースポーツ D300」だった。
前日の雨で試乗オフロードコースの路面はかなりぬかるんでいた。レンジローバースポーツのオフロード性能を試すには絶好の条件だったが、装着されていたのはなんと23インチのサマータイヤ。ピレリ スコーピオンMSは一応M+S(マッド&スノー)刻印付きのLR認証タイヤとはいえ、見た目にはオフロード走行を想定したものとは思えなかった。
まずはオフロードモードに切り替える


試乗はプロドライバーのインストラクターを助手席に乗せてスタートした。オフロードモードに切り替えて車高を上げ、ギアをローモードに設定する。もちろん、モードを切り替えずともオフロードコースの走破は可能かもしれないが、このクルマの性能を存分に引き出すには、走行モードとともにドライバーの意識も切り替えた方がいい。
テレインレスポンス2には「コンフォート」「ダイナミック」「エコ」「草/砂利/雪」「泥/わだち」「砂地」「岩場」など7つのモードがあり、今回はインストラクターの勧めに従い「泥/わだち」と「岩場」を選択する。エンジンやトランスミッション、ディファレンシャル、シャシーの設定が最適化され、過不足ない速度(20〜30km/h)で走行可能となる。
実際、3.0リッター直6ディーゼルターボの逞しいトルクで、障害物を乗り越えてもスピードが出すぎることなく、ローギアで高まるアクセルレスポンスもマイルドに抑えられており、極めてスムーズに走行できた。アクセルをそっと踏み込むだけで的確なアクセル制御が働き、大きな段差をじわじわとクリアしていく。前回の走行がいつだったか、思い出せないほど久々のオフロードだったが、まさに技術の進化を体感した瞬間だった。
3Dサラウンドカメラで周囲を確認しつつ


今回のコースには狭い林道のように見通しが利かないシーンもあったが、そんな場面で頼りになるのが360度ビューの3Dサラウンドカメラだ。車体前後左右に備わるカメラの映像を合成した3D映像により、車両のすぐ脇の崖との距離を把握できる。さらに、ステアリングの舵角に応じて後輪の軌跡も表示されるため、内輪差による障害物との接触や脱輪などのリスクの有無も瞬時に判断できる。
急な下り坂ではヒル・ディセント・コントロールが威力を発揮。ACC(アダプティブクルーズコントロール)のように速度を設定して、一定速度で下れる。ローギアで20〜30km/h、ハイギアでは最大40km/hの設定が可能で、「泥/わだち」モードでは自動的に作動するのもありがたい。
レンジローバースポーツなのに


アップダウンの激しい地形では、クリアサイトグラウンドビューも有効だ。フロントカメラの映像で、大きな登り坂の先に何があるかを確認できる。ワイドレンズゆえの歪みが気になる場合は、カメラアングルの切り替えで、より自然な視界に調整することも可能だ。
また、下り坂での速度調整はドライバー自身のブレーキ操作に任せることもできる。加えて、平坦なオフロードを一定速度で走るATPC(オールテレイン・プログレスコントロール)も装備されているのは頼もしい。
これほど過酷な路面をいとも簡単に走破する性能を備えていても、実際のオーナーがこうした場所に足を踏み入れることはまずないだろう。ましてやディフェンダーならともかく、あくまでこれはレンジローバースポーツなのである。しかし、それだけの性能を持っているという事実は、所有するうえでの誇りとなり、クルマへの信頼と愛着をさらに高めるに違いない。
PHOTO/市健治(Kenji ICHI)
SPECIFICATIONS
ランドローバー レンジローバースポーツ オートバイオグラフィ D300
ボディサイズ:全長4960×全幅2005×全高1820mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2570kg
エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2993cc
最高出力:221kW(300PS)/4000rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/1500〜2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ:前後285/40R23
車両本体価格:1579万円