最新型のSLに直4ターボ+後輪駆動の「43」を投入

新型メルセデスAMG SLにエントリーモデル登場! F1技術を投入した量産車初の直4ターボ搭載

メルセデスAMG SL 43のフロントビュー
メルセデスAMGの最新ロードスター、SLにエントリーモデルの「43」が加わった。搭載するM139型直列4気筒エンジンには、F1由来のテクノロジーを採用した先進のターボチャージャーを組み合わせている。
メルセデスAMGは、新型SLにエントリーグレードとなる「43」を追加したと発表。搭載する2.0リッター直4ターボエンジンには“量産車初”となるF1由来のテクノロジー「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー」を採用している。

Mercedes-AMG SL 43

量産車初! F1由来の画期的ターボを搭載

メルセデスAMG SL 43のエンジンコンパートメント
メルセデスAMG SL 43のエンジンコンパートメントには、A45やCLA45で横置きされているM139型直4ユニットが縦置き搭載されている。

メルセデスAMGが告知していた画期的ユニットが、いよいよ市販モデルに搭載された。最新型のSLのエントリーグレード「43」に採用されたのは、量産車初となる「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー」を装備した2.0リッター直4ターボユニットだ。

AMG系のコンパクトモデルに導入されてきた直4シリーズ、M139型が最新の過給システムを得て進化を遂げた。それがSL 43で採用された「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー」である。ターボチャージャーに電動化技術を組み合わせることで、いわゆる“ターボラグ”を解消するための最新機構だ。AMGではこれを「F1のテクノロジーから直接採り入れた」システムであると謳っている。

ターボの“隙間”を電動モーターが埋める

メルセデスAMG SL43の4気筒に採用するエレクトリック エキゾースト ガス ターボチャージャーの概念図
メルセデスAMG SL 43が採用する4気筒の技術的ハイライト「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー」の概念図。約4cm厚のスリムな電動モーターをセンターハウジング部に搭載する。ギャレットモーションとの共同開発により誕生したユニットは、量産車として初めてSLに採用した。

「エレクトリック・エキゾースト・ガス・ターボチャージャー」は、およそ4cm厚の電動モーターをセンターハウジング部に組み込んでいる。ターボチャージャーのシャフトを直接電動駆動することで、コンプレッサーホイールを回転させる仕組みだ。排気エネルギーを利用してタービンホイールが回転するまでの“隙間”を、電動モーターのアシストで埋めることができる。

48Vシステムを組み合わせ、コンプレッサーは最高17万rpmの回転数を達成。ターボチャージャーと電動モーター、パワーエレクトロニクス機構はエンジンの冷却回路に繋げられており、常時最適な温度がキープされるようになっている。

縦置き直4+9速ギヤボックス+後輪駆動

メルセデスAMG SL 43のリヤビュー
上位機種の「63」「55」が4WDの4MATICを採用するのに対し、SL 43は後輪駆動となっている。車重も8気筒モデルに比べて160kg軽い。

結果、SL 43が搭載する2.0リッター直4ターボユニットは、最高出力381hp/6750rpm、最大トルク480Nm/3250〜5000rpmを実現している。さらに、ベルト駆動のスタータージェネレーター(RSG)のアシストにより、一時的に14hpのブーストも可能。使用しているのは第2世代のRSGで、48Vシステムのマイルドハイブリッドシステムとしてエネルギー回生も行うなど、効率性の向上にも寄与している。

A 45やCLA 45ではフロントに横置きされているM139型ユニットだが、SLではそれをロングノーズのボンネット下に縦置き搭載。そこに湿式多板クラッチをスターティングデバイスに使うAMG SPEEDSHIFT MCT(マルチクラッチ・トランスミッション)を組み合わせている。また、8気筒モデルの「63」と「55」はいずれも全輪駆動である一方、「43」は後輪駆動を採用しているのも特徴。

ちなみに車重は、「63」「55」の1970kgに対して「43」は1810kgと160kgも軽い。後輪駆動、シャープなレスポンスの4気筒ターボ、そしてトランスミッションという要素も鑑みると、「43」はより軽快で積極的に操縦を楽しみたくなるキャラクターが与えられているようだ。

最新SLは“戦うエンジニア集団”が開発を主導

メルセデスAMG SL 43のトップビュー。ルーフ開
メルセデスAMG SL 43は2+2のシートレイアウトを採用。後席には身長1.5mまでの乗員に対応した空間を確保している。

最新型のSL(R232型)は2021年10月28日に登場。AMG専用モデルとして、アファルターバッハの“戦うエンジニア集団”が主導して開発された。歴代SLの“ほとんど”は2シーターを貫き続けてきたSLだが(1989年のR129では、欧州仕様にのみ後席がオプション設定されていた)、新型ではすべてのモデルが2+2のレイアウトを採用した。ちなみにこの後席には「身長1.5mまでの乗員に対応する空間」が与えられている。

また、近年はメタルトップを採用してきた従来のSLと異なり、新型モデルはあえてクラシカルなソフトトップを装着。幌屋根の採用により伝統的なロードスターらしい趣が生まれているのはもちろん、上屋を軽く仕上げられるため重心高も下がり、ハンドリングにも好影響をもたらしているという。

ボディシェルも白紙から開発

メルセデスAMG SL 43のサイドビュー。ルーフ閉
メルセデスAMG SL 43のサイドビュー。先代までのメタルトップをやめ、あえてクラシカルなソフトトップを採用。これにより、荷室にはゴルフバッグ2個が搭載できるようになった。

後輪操舵システム「リヤアクスルステアリング」を採用するのもSL史上初の試み。車速100km/hまでは後輪を前輪と逆位相に操舵し、取り回し性を向上。「まるでホイールベースが短くなったかのような」感覚で、方向転換や駐車時などの操作性を高める。一方、車速が100km/hを上回ると後輪を最大0.7度同位相へ操舵。「まるでホイールベースが伸びたかのような」安定感を提供する。ちなみに「43」ではオプション設定となっている。

ちなみにSUVほどの販売ボリュームが見込めないモデルとはいえ、メルセデスにとっての伝統であるSLのクオリティには一切の妥協が許されない。そのこだわりを反映するように、最新SLのボディシェルはわざわざ白紙から開発。先代からの流用はもちろん、他のAMG GTモデルと共有するコンポーネンツもないという。

ボディシェルには軽量かつ剛性に優れた混合材を使用。アルミニウムやマグネシウム、繊維複合材、スチールを組み合わせることで、可能な限りの軽さと剛性を追求した。結果、ボディシェルのねじり剛性は先代比で18%アップ。ドアやボンネット、トランクリッドを外した状態での重量は約270kgに抑え込んだ。さらに、フロントウインドウ周りのフレームには高強度の熱間成形スチールを使用し、万一の際はリヤシート背後に格納されたロールバーシステムと共に乗員を守る保護部材となるよう設計している。

“ハイパーアナログ”なコクピット

メルセデスAMG SL 43のキャビン
メルセデスAMG SLは、“ハイパーアナログ”と呼ぶコクピットを採用。メーターパネル上のフードは太陽光反射を考慮したものであり、センタースクリーンも12〜32度の範囲で角度調整ができるようになっている。

また、新型SLは12.3インチのLCDスクリーンを備えたデジタルインストゥルメントパネルを採用。現行メルセデスに共通の“横だおしタブレット型”ではなく、あえてクラシカルなフード付きデザインとしているのは、オープン走行時の太陽光反射を考慮したものでもあるという。メルセデスではこれを“ハイパーアナログなコクピット”と呼称している。ダッシュボード中央の11.9インチのタッチスクリーンも光の映り込みに配慮し、12〜32度の範囲で角度調整ができるようになっている。

レザーを貼り込んだダッシュボード周りは保守的ともいえるデザインだが、メルセデスの最新基準にもとづくコネクティビティ性能を確保している。新型Sクラスと共通の第2世代MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)システムを搭載し、「ハイ、メルセデス」でお馴染みの自然対話型音声認識機能も利用可能だ。

【SPECIFICATIONS】
メルセデスAMG SL 43(欧州仕様)
ボディサイズ:全長4705 全幅1915 全高1359mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1810kg
エンジン:直列4気筒DOHCツインターボ
ボア×ストローク:83.0×92.0mm
総排気量:1991cc
最高出力:280kW(381hp)/6750rpm
最大トルク:480Nm/3250-5000rpm
ブースト出力:10kW(14hp)
トランスミッション:9速MCT(AMG SPEEDSHIFT MCT)
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
タイヤサイズ(リム幅):前255/45ZR19(9.5J) 後285/40ZR19(11J)
最高速度:275km/h
0-100km/h加速:4.9秒

メルセデスAMG SL 65 4マティックプラスのフロントビュー

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…