公道を走れるレーシングカー「ダラーラ ストラダーレ」のサーキット仕様「ダラーラEXP」は助手席付きレーシングカー

助手席付きのレーシングカー「ダラーラEXP」を雨の富士スピードウェイでシェイクダウン【動画】

レーシングカーのようなダラーラ ストラダーレのサーキット仕様「ダラーラEXP」。車重とパワーは速いフォーミュラ級だ。
レーシングカーのようなダラーラ ストラダーレのサーキット仕様「ダラーラEXP」。車重とパワーは速いフォーミュラ級だ。
レーシングコンストラクターが造ったロードカーである。ダラーラ初のナンバー付きスポーツカー、ストラダーレは当然レーシングカーに比肩する性能を有していたが、それをさらに過激にしたEXPの実力を確かめた。

Dallara EXP

ダラーラEXPのインプレッションを動画でチェック!

あいにくのウエットコンディションだが……

あいにくのウエットコンディションでも良好なグリップを発揮したピレリ製ウエットセミスリックタイヤ。サイズはフロント200/600-17、リヤ245/645-18。
あいにくのウエットコンディションでも良好なグリップを発揮したピレリ製ウエットタイヤ。サイズはフロント200/600-17、リヤ245/645-18。

朝、ホテルの窓を開けると雨だった。天気予報でもやみそうにない。この日、私が乗るマシンはダラーラEXPなのに。

レーシングコンストラクター、ダラーラが造ったサーキットを楽しむための究極のスポーツカー、ダラーラ・ストラダーレ(以下、ストラダーレ)を、よりサーキットで楽しめるように改良を施したのがダラーラEXPである。見てのとおり、フロントウインドウも備わらず、まるでプロトタイプカーのような風貌だ。

搭載されるエンジンはストラダーレ同様のフォード製2.3リッター直4ターボだが、最高出力は100PSアップの500PS、最大トルクは200Nm増の700Nmとなっている。これに6速SCTを組み合わせて後輪を駆動する。スワンネック型の大型リヤスポイラーやフロントフェンダー上にルーバーを採用するなどして、空力性能を大幅に向上させた。車重は890kgと軽量である。

レーシングカーのようなコクピット

サーキットに到着しても、雨がやむ雰囲気はない。後は走れる雨量であるかどうかだ。ナンバー付きのダラーラ・ストラダーレには過去に何度も乗ったことがある。富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、岡山国際サーキットなどのサーキットで、その速さと楽しさは体験ズミだが、今回試乗するのはそのストラダーレをさらに強化したEXPである。

車重とパワーから想像すると、普通のロードカーではなく、速いフォーミュラくらいを想定しておかないといけないので、しっかりシート合わせを行う。シートは固定されたバケットタイプでペダルベースがスライドする。位置と形状を細かく調整して強いGに耐えられるようにする。ダラーラのエンジニアからコクピットドリルを行ってもらい、スイッチ類の扱い方を聞く。

トラクションコントロール(TC)とABSは7段階あるが、今日の様なウエットでは両方とも5〜7番を使用する。メーターに表示される数字は4番までのドライと5〜7番までのウエットで色が変わるので、とても分かりやすい。エンジンマップは「R(レース)」と「QF(クオリファイ)」モードがあり、予選一発ではQFを使う方がよいがウエットでは高リスクだという。

GTとプロトタイプの狭間

あいにくのウエットコンディションでも良好なグリップを発揮したピレリ製ウエットセミスリックタイヤ。サイズはフロント200/600-17、リヤ245/645-18。
あいにくのウエットコンディションでも良好なグリップを発揮したピレリ製ウエットセミスリックタイヤ。サイズはフロント200/600-17、リヤ245/645-18。

走行開始時間が来たのでコースインする。タイヤはピレリのレインタイヤを装着している。雨脚は少し弱まったが、今回の走行がシェイクダウンなので、最初は様子を見ながらゆっくりと走行を開始する。コースインした瞬間から、ストラダーレ同様の高いグリップ感やステアリングからのインフォメーションがある。タイヤグリップとマシンの状態を慎重に確認しつつペースを上げる。

この日は気温10度のコールドレインで、最初2ラップは流石にタイヤが温まりきらず、リヤがパワースライドしてしまう。TCが介入してもスライドしてしまうのでTCに頼らず走る必要があった。安全第一のTCではなく、速く走るためのTCである。しかしタイヤの温まりは早く、タイヤが温まるにつれてEXP本来のポテンシャルを垣間見れた。

ダウンフォースは強烈だ。ハイダウンフォースのレーシングカーレベルである。その恩恵でアクアプレーニングが少なく、ウエットでも安定感があり、安心して踏んでいける。1コーナーのブレーキングポイントはおおよそ200mくらい。最高速は約255km/hだった。ドライで最終コーナー出口のスピードが上がり、ブレーキングポイントが奥に行けば270km/hは行くだろう。ちなみに最高速は290km/hだ。

驚愕のダウンフォースと軽量なマシン

1コーナーのブレーキは制動力、ペダルフィール、ABSの介入、マシンの安定感もウエットで最高クラスといえる。限界を試すのが容易ではないレベルだ。3速に落として1コーナーをクリア、コーナーミドル付近で少しアンダーステアが出るが、出口のトラクションは非常に高い。

コカ・コーラコーナーまでに5速に上げ、4速にシフトダウンしてアプローチを行う。このスピード領域でのグリップがとても高い。ステアリング操作に対してフロントの反応が素晴らしい。思い通りにターンインできる。鋭くターンインするとリヤが少し軽くなるが、スタビリティが高いのでコントロールしやすい。その後アクセルを踏んでいってもトラクションがいいので、スライドのスピードが唐突ではない。攻めていてワクワクする。

続く100Rは「楽しい」のひと言。ダウンフォースとマシンの軽さ、そしてセッティングが素晴らしい。ウエットとは思えないレベルのコーナリング性能だ。100Rではブレーキングを必要とせずアクセルコントロールのみでクリアしていける。FSWではコカ・コーラコーナーから100Rと続くこのパートがEXPにとって最高に楽しい。ダラーラの本領発揮という感じで、ダウンフォースを明確に体感させてくれた。

レースの世界でもダウンフォースを得意としており、国内レースではスーパーフォーミュラやスーパーフォーミュラライツといった尋常ならざるコーナリング速度を誇る空力マシンを設計するだけのことはある。慣性が少なく、軽快さとダウンフォースによるグリップが両立されており、想像を絶するコーナリングが可能だ。ドライでセッティングをしっかり決めれば、100Rは全開でクリアできるかもしれないほどだ。

ウエットとは思えぬレベルのスピードだ

ちなみにエンジンモードのRは低回転から高回転までスムーズな特性で、QFは低回転での反応がすこし薄くなる感じだが、中高回転でのパワーは明らかに大きくなり明確に使い分けができる。ウエットではRの方が使いやすいが、この日のベストタイムはQFだった。ABSは6番、トラクションコントロールは7番で走ったが両方ちょうどいいくらいだった。ウエットではかなりマシンに慣れて攻め込まないと、介入の大きさが邪魔することはなかった。

全コーナーで安定感とマシンコントロールが最高レベルだった。唯一ステアリングのギヤ比がもう少しクイックでもいいと感じたが、これもジェントルマンドライバーが体力的に不安なく安全に速く走ることを目的にとしているからだろう。EXPはレーシングカーのように速さだけを中心に追求したマシンではない。

ストラダーレと比較して、ダウンフォースの大きさとパワーが圧倒的に違うものの、EXPはストラダーレの延長線上にあると明確に理解できた。ストラダーレの素晴らしさも継承されている。それを理解したうえで存在意義もはっきりわかった。究極の走りをジェントルマンドライバーが気軽に楽しめるマシンだ。

REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
PHOTO/服部真哉(Shinya HATTORI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年12月号

SPECIFICATIONS

ダラーラEXP

ボディサイズ:全長4180 全幅1870 全高1170mm
ホイールベース:2475mm
車両重量:890kg
エンジン:直列4気筒ターボ
総排気量:2300cc
最高出力:368kW(500PS)/6000rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/4000rpm
エンジン:6速RMT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前205/45ZR17 後255/35ZR18
車両本体価格:4356万円

【問い合わせ】
株式会社アトランティックカーズ
TEL 03-3583-8611

ダラーラ・ストラーダーレ

Photographer 小林邦寿「真夜中のShort Story」/第2話 「ダラーラ・ストラーダーレ」

著者プロフィール

田中哲也 近影

田中哲也