2022年発表された「911」のニューカマー3台に注目する理由とは?

2022年ポルシェのニューカマー「911スポーツクラシック」「911カレラT」「911ダカール」に注目する理由

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スーパースポーツにも続々とバッテリーとモーターが搭載される時代となった。2023年春にはランボルギーニ・アヴェンタドールの後継モデルが発表される予定だが、それはハイブリッドとなることが確実だ。モーターならでは楽しさもあるので、電動化を一概に否定するわけではない。でも昭和のクルマ好きにとって純エンジン車のスーパースポーツカーがなくなっていくのは、やはり寂しいものがある。『GENROQ』編集長永田が2022年に注目したモデルは3台。いずれも911の限定車だが、その理由とは……。

2022年に登場したポルシェ911注目の3台

千鳥格子柄のシートやグリーンロゴのメーターなど、クラシックな雰囲気となるインテリア。

ポルシェ911タイプ992のトランスミッションはモーター搭載を前提として開発されているというから、まもなくと噂される大規模マイナーチェンジで電動化される可能性が高い。そうなると現在のタイプ992は911最後の純エンジンモデルとなってしまうのか……真相はわからないが、その可能性は大いにあるとみていいだろう。

そんなファンの心理を読んで(?)のことかどうかはわからないが、2022年の911(タイプ992)は原点回帰の動きが盛んな年だった。まず4月に「911スポーツクラシック」が登場、そして10月に「911カレラT」が、さらに11月には「911ダカール」がデビューした。この3車種はいずれも過去の911の伝説のモデルをモチーフとしたものなのだ。

Porsche 911 Sport Classic

ナナサンカレラをオマージュした「911スポーツクラシック」

順を追って見ていくと、911スポーツクラシックはナロー時代のカレラRS2.7、通称ナナサンカレラをオマージュしたモデル。リヤのダックテールスポイラー、フックスデザインのホイールなど、ナナサンカレラを思わせるディテールが採用されている。インテリアもシートセンターやドア内張りに千鳥格子柄を採用したり、ウッドパネルを用意したりすることで懐かしい雰囲気を演出。またメーター中央のタコメーターには356時代を思わせるグリーンのレタリングが用いられている。

だが、この911スポーツクラシックのすごいところは実は中身。エンジンは3.7リットルの水平対向6気筒ツインターボで550PSを発揮し、なんと後輪のみを駆動するRRだ。またトランスミッションは7速MTのみ。そう、911スポーツクラシックは史上最もパワフルなMTの後輪駆動911となるのだ。また排気系にはスポーツエキゾーストが、足まわりには車高が10mmダウンするスポーツサスペンションが標準装備となるなど、もはやGT2に匹敵するほどの硬派な仕様だ。

実はこの911スポーツクラシックはタイプ997の時代にも登場したのだが、今回はさらにそのスポーツ度を高めている。1250台限定で価格は3724万円と現行911最高額。おいそれとは手が出せない価格だが、この内容を見ればそれも納得だ。

Porsche 911 Carrera T

軽量化を施した「911カレラT」

そしてタイプ991に続いてタイプ992でも設定された911カレラTは、1967年にラインナップに加わった伝統の称号、Tを冠したモデル。Tとはツーリングの意味で、よりピュアで軽快な走りを目指したもの。後席は省かれ、サイドとリヤのウインドウは軽量化タイプ。

また遮音材を省いたりバッテリーを軽量化するなどして、トータルで35kgの軽量化を実現している。またスポーツシートプラスやスポーツサスペンションを標準装備し、8速PDKに加えて7速MTが選択できるのも走り好きには嬉しい。ちなみに7速MTモデルはさらに25kgの軽量化を果たしているという。

Porsche 911 Dakar

953をリスペクトした「911ダカール」

最後の911ダカールはポルシェAWDモデルの原点となった953のイメージを復活させたモデル。1984年にパリ・ダカールで総合優勝を成し遂げた953は、のちに959へと発展し、またそのAWDテクノロジーはタイプ964で市販911に活かされた。

911ダカールは50mm上げられた車高でオフロードでの走破性を向上。これはリフトシステムによってさらに30mm上げることが可能で、不整地での走破性を格段に高めてくれる。またカーボン製の固定式リヤスポイラーやエアアウトレットを備えるカーボン製ボンネット、ボディアンダーのスチール製保護エレメントなどを装備。またオプションでルーフバスケットを装備することも可能だ。

機構面での注目はドライビングモードにラリーとオフロードが設定されたこと。ラリーモードはリヤへのトルク配分重視となり、オフロードモードは車高が自動でアップして砂地などでのトラクションを最大限に引き出す。また両モードには20%のホイール空転を許容するラリーローンチコントロールも備わっているという。

2022年に登場したこの3台の新グレードは、いずれも911のヘリテージを活かした原点回帰とも言えるモデル。タイプ992前期のモデル末期に、相次いでこのような「昔の名前」を登場させたのは、純エンジン911の最後の打ち上げ花火では……という気がしないでもない。やっぱり純エンジンの911を、と考えている人は今が最後のチャンスかも!?

SPECIFICATIONS

ポルシェ911スポーツクラシック

■ ボディサイズ:全長4535×全幅1900×全高1299mm ホイールベース:2450mm ■車両乾燥重量:1570kg ■エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ 排気量:3745cc 最高出力:405kW(550ps)/6750rpm 最大トルク:600Nm(61.2kgm)2000〜6000rpm  ■トランスミッション:7速MT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:Fマクファーソンストラット Rマルチリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック) ■タイヤサイズ(リム幅):F255/35R20(9.5J) R315/30ZR20(12J) ■パフォーマンス 最高速度:315km/h 0→100km/h加速:4.1秒 ■車両価格:3724万円

ポルシェ911カレラT

■ ボディサイズ:全長4530×全幅1852×全高1293mm ホイールベース:2450mm ■車両重量:1470kg ■エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ 排気量:2981cc 最高出力:283kW(385ps)/6500rpm 最大トルク:450Nm(86.7kgm)/1950〜5000rpm ■トランスミッション:7速MT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:Fストラット Rマルチリンク ■ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F245/35ZR21(8.5J) R305/30ZR21(11.5J) ■パフォーマンス:最高速度291km/h 0→100km/h加速4.5秒 ■車両本体価格:1640万円

ポルシェ911ダカール

■ ボディサイズ:全長4530×全幅1864×全高1338mm ホイールベース:2450mm ■車両重量:1605kg ■エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ 排気量:2981cc 最高出力:353kW(480ps)/6500rpm 最大トルク:570Nm(86.7kgm)/2300〜5000rpm ■トランスミッション:8速DCT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式:Fストラット Rマルチリンク ■ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F245/45ZR19(8.0J) R295/40ZR20(11.5J) ■パフォーマンス:最高速度240km/h 0→100km/h加速3.4秒 ■車両本体価格:3099万円

JAFの積載車に乗っかった993。2速に入りっぱなしですが進むことはできたので、引っ張られることなく自走で乗りました。

「え? シフトが入らない!」俺の911(993型)の大ピンチをご報告【ポルシェ911(タイプ993)ロングタームレポート:番外編】

GENROQ編集長、ゲン永田の愛車993。エアコン故障中のため秋以降にしか稼働しないが、久々だからこそトラブルは発生する? 渋滞の東名高速で起きた悲劇とは? ポルシェ911(タイプ993)ロングタームレポート番外編。

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。古典的ジャイアンツファン。卵焼きが好き。愛車は993型ポルシェ911。カメラはキヤノン。