RS4アバントで氷上走行「アウディ ドライビング エクスペリエンス」

450PSのRS4アバントで氷上を走れる「アウディ ドライビング エクスペリエンス」に参加して得た気づきとは?

今回取材したのは、ドイツ本国のアウディが企画した“アウディ・ドライビング・エクスペリエンス”の人気コース。フィンランド北部のムオニオ湖に作られた大小様々なコースを、2日半にわたって走り込む。
今回取材したのは、ドイツ本国のアウディが企画した“アウディ・ドライビング・エクスペリエンス”の人気コース。フィンランド北部のムオニオ湖に作られた大小様々なコースを、2日半にわたって走り込む。
ドライブトレーニングに積極的に組み込まれる雪上走行だが、それには安全に実施できるという側面以外にもメリットがあるという。アウディの辛口モデル「RS」で行った雪上トレーニングをレポート。

Audi Driving Experience

氷上でRS4を思う存分走らせる

フィンランドで開催された“アウディ・ドライビング・エクスペリエンス”に参加。氷結湖に設営されたコースを用いて2日半にわたって開催され、トレーニングには最高出力450PSを誇るRS4アバントが用意されていた。

「フィンランドの氷結湖でアウディRS4アバントを思う存分に走らせてみませんか?」そんなお誘いを受けた私は、2つ返事で「行きます!」と答えると、ヘルシンキ行きの飛行機に飛び乗った。

それにしても、われわれクルマ好きは、なぜこれほどまで氷上ドライビングに惹かれるのだろうか? その問いに対する私なりの答えを申し上げれば、ドライバーの操作もクルマの挙動も、すべてがスローモーションのようにゆっくりと起きるので、限界領域で起きることを分析したり、ドライビング・スキルを磨くのに有利だから、というあたりに落ち着く。今回のイベントでも、改めて自分のドライビングを見つめ直すいい機会になったので、その辺を中心にレポートしていきたい。

会場はフィンランド北部のムオニオ湖。その全長2kmほどの湖に大小様々なコースを描き、2日半にわたって走り込むというプログラムだ。これはドイツ本国のアウディが企画した“アウディ・ドライビング・エクスペリエンス”の人気コースで、通常はなかなか予約がとれないそうだが、今回はアウディ・ジャパンが特別に参加枠を確保。これに応募する形で5名の日本人が参加することになった。そして私も皆さんに帯同してイベントを体験したのである。

初心者でも30分でドリフトが可能に

よくあるドライビング・スクールのように、このアイス・エクスペリエンスでも座学は用意されているが、フリクション・サークルや荷重移動などのエッセンスだけをぎゅっと凝縮した内容で、わかりきったことをクドクド説明するようなことはない。ただし、簡潔ではあるけれど、わかりやすさにかけては、私がこれまで参加したなかでもピカイチだった。

40分ほどで座学が終わると、早速RS4に乗ってコースに移動。まずはオーバルコースを2つに分けて、前半でパワースライド、後半はブレーキングドリフトを練習した。ここでも、インストラクターからの説明は最小限。その代わりに、走り込む時間がみっちりあって、参加者ひとり一人の走りをインストラクターがチェックして要点のみアドバイスするというスタイル。おかげで、初心者の方もわずか30分ほどでドリフトをコントロールできるようになっていた。

というわけで、オーバルコースでのトレーニングが終わると、あとはコーナーが複雑に組み合わされたロードコース(アイスコース?)を順に移動しながら、それぞれの特性にあわせてテクニックを磨いていくのだが、ここでもまずは徹底的に走り込むことが基本で、インストラクターは本当に大切なポイントだけを無線で簡潔に伝授してくれた。しかも、望めば一対一でアドバイスを受けられるし、インストラクターの運転するクルマに同乗することも、逆に自分のクルマにインストラクターが同乗してもらうこともできる。まあ、この辺は個人の好みもあるだろうけれど、やはりインストラクターから直接話を聞いたり、自分のドライビングを直に見てもらったほうが上達は早いように思う。

氷上走行の攻略法とは?

RS4アバントはスパイクタイヤの装着とクワトロシステムによって盤石の備え。数をこなすうちにスリッピーな氷雪路でも車体コントロールを掴むことができる。ドライビングの上達を求めるなら氷雪路は絶好のシーンだろう。

それにしても印象的だったのが、RS4がトレーニングカーとしてぴったりの特質を備えていることだった。クワトロ=フルタイム4WDだからトラクション性能が優れているのは当たり前ながら、荷重移動ひとつで前輪をしっかりグリップさせてターンインのきっかけを作ることも、後輪に駆動力を掛けてそこからオーバーステアを引き出すことも容易。つまりはクルマの前後バランスが優れているのだけれど、このことを、その後ステアリングを握ったRS e-tron GTで痛いほど思い知らされることになった。

その前に自分が学んだことを先に申し上げると、よくいわれるとおり氷上では「急」のつく操作は禁物。ブレーキングドリフトにしても、ステアリングを切った状態でブレーキペダルをそっと踏み込み、ヨーが立ち上がるのを根気よく待つことが重要となる。裏を返せば、ブレーキングしてからリヤが回り込み始めるまでには一定の時間が必要になるわけで、その時間と距離をあらかじめ見込んだラインとタイミングでブレーキングドリフトが起きるようにすることがポイントとなるのだ。

さらにいえば、ヨーを立ち上げるにはどのくらいの車速、どのくらいの舵角、どのくらいのブレーキング(もしくはスロットルペダルの踏み込み量)が必要かも見極めなければならない。この辺は、コーナーの種類によって異なるので、今回のイベントのように車速も曲率も異なる様々なコーナーを数こなすことが、結果的には近道のような気がする。

EVの氷上走行が難しい理由

EV特有の ハンドリングとは? 475kW(645PS)を誇るフル電動モデルのRS e-tron GTにも試乗。床下にバッテリーを満載するためか、その制御はシビアだった。

さて、自分なりにブレーキングドリフトもパワースライドもコントロールできるようになったところでRS e-tron GTに乗り換えたのだが、これがどこをどう操っても荷重移動の効果があらわれず、ステアリング特性をコントロールすることもできなかった。その理由を自分なりに分析してみたところ、要はEV特有のバッテリー・レイアウトに原因があるように思えてきた。ご存じのとおり、EVのバッテリーは床一面に敷き詰めている。これが荷重移動を起きにくくしていると推測されるのだ。

今回は2日半にわたって練習を重ねることで、様々な条件で、これまで以上に正確なアイスドライビングができるようになった。なお、国内外で開催されるアウディ・ドライビング・エクスペリエンスについては、アウディ・ジャパンの公式サイトで紹介されるので、興味のある方はチェックすることをお勧めしたい。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/大谷達也(Tatsuya OTANI)、Audi AG
MAGAZINE/GENROQ 2023年5月号

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…