ミュンヘン・モーターショー「IAA」で見た大きな変化とは?

ドイツ・ミュンヘンでのモーターショー「IAA」で見たショッキングな変化を在独ジャーナリストがリポート

ミュンヘン郊外にあるメッセ会場。BMW、フォルクスワーゲングループ、オペル、メルセデス・ベンツのドイツメーカーを中心としたブースが出展すると同時に中国や韓国のメーカーがゴージャスで大きなブースを出展していた。
ミュンヘン郊外にあるメッセ会場。BMW、フォルクスワーゲングループ、オペル、メルセデス・ベンツのドイツメーカーを中心としたブースが出展すると同時に中国や韓国のメーカーがゴージャスで大きなブースを出展していた。
世界でも名立たる自動車王国、ドイツ。だが、お膝元であるミュンヘンでのモーターショーは大きな変化が見られたという。かつては日本企業がゴージャスなブースを出展していたが今は中国や韓国のメーカーが目立つという。在独ジャーナリストがありのままをリポートする。

International Automobil Ausstellung

出展者の半分以上が中国企業

【1】今や上海汽車(SAIC)傘下のMGのEVコンバーチブル「サイバースター」。【2】スイス発のEVメーカー、マイクロリーノ。【3】今や世界屈指のEVメーカーとなった中国のBYD。

長年開催されていたフランクフルトから、我が街ミュンヘンへ移行して、2回目の開催となるIAA(International Automobil Ausstellung)。日本人にとってはフランクフルトモーターショーとして有名で、一度は訪れたい大規模なモーターショーとして有名でした。

しかし、EUやドイツ政府の指針が内燃機関からEVへと移行する中、フランクフルトで開催された最後の2019年には、随分と縮小した規模となっていました。ミュンヘンに移行した2021年の初開催時には、9割以上がEVの展示、そして環境保護の観点か“自転車”のショーかと思う程の佇まいにがっかりしたものです。

第2回目となる今年は、なんだかすっかりドイツが中国化したと錯覚するほどに中国人だらけでした。それもそのはず、出展者の半分以上が中国企業からだったと聞き、本当にビックリしました。

ドイツの経済を揺るがす中国・韓国車

ドイツと言えば、世界でも名立たる工業国、自動車王国です。それがEV化の流れで、ドイツが誇るモーターショーの大半が中国のメーカーになり、そしてドイツと同様に自動車産業が盛んな日本の自動車メーカーの出展がゼロという世の中になるとは、一体誰が想像できたでしょうか。

ミュンヘン郊外にあるメッセ会場には主にサプライヤーのブースが並び、BMW、フォルクスワーゲングループ、オペル、メルセデス・ベンツのドイツメーカーを中心としたブースが出展していますが、一方で中国や韓国のメーカーがゴージャスで大きなブースを出展しているのが目立ちました。かつてはそのポジションは日本企業だっただけに、なんだか寂しい気持ちになります。

中国や韓国のEV車の出展が多くなるという事は、それに関するサプライヤーは今までの内燃機関用とは異なりますから、そちらもやはり中国や韓国に頼る方向になってきますよね。ドイツのとある自動車メーカーの方が「中国はかつて内燃機関ではドイツ車をコピーしたが、ドイツ車のクオリティには届かなかった。しかし、EVに特化して様々な中国メーカーが進出し、安さ勝負に出てきた。ドイツメーカーはあの価格帯で販売する事は不可能」と頭を悩ませていました。中国・韓国車はドイツ車に比べて非常に低価格帯で手に入りますから、購買層は二極化されると思いますが、ドイツの経済を揺るがせている事は一目瞭然です。

ドイツは内燃機関もしっかりと展示

前回と同様に、ミュンヘン市内の中心部に点在する展示ブースは、一般客も無料で自由に見学できるとあり、地元の方はもちろん、数多くの観光客もこのモーターショーを訪れます。運が良ければ自動車メーカーがステキなノベルティを配布している場合もありますし、ショップでグッズも購入できます。

街中の展示ブースも相変わらずほぼ全てがEV中心ですが、特にポルシェやメルセデス・ベンツ&AMGでは内燃機関もしっかりと展示されていたのが嬉しかったですね。2年前のIAAでは全車EV展示だったメルセデスですが、今回は内燃系の展示もあり、ホッとしました。従って、私は1回ではなく3日連続観に行ったほどです(笑)。

また、ドイツの各メーカーは継続して内燃機関の開発と製造を宣言している事から、石油原料に代わる次世代燃料の開発も精力に行われています。未来のモビリティの在り方には様々な選択肢が用意される事でしょう。

会場で展示された様々な移動ツール

今回のIAAでは、将来のドイツや世界の自動車業界を担うエンジニアの卵、ドイツ各国の工科大学の学生のみなさんが開発された運転システムや安全システム等の展示もあり、彼らに未来が託されている事を実感しました。

このモーターショーがフランクフルトからミュンヘンへ移った際、IAAに「モビリティ」が付いたとおり、会場では様々な移動ツールが展示されていました。電動自転車、電動スクーター、電動バイクまたシニアカーに、最近ヨーロッパの市街地で少しずつ見掛ける15歳から運転可能なミニEVなど、多岐に渡りました。以前のフランクフルトの頃からすると考えられないような展示のラインナップとなっています。

パネルディスカッションやキッズコーナーも充実しており、地元ミュンヘン市民はもちろんの事、子供連れの家族からシニア、そして様々な国の方々がこのIAAを訪れ、その数は9月5~10日の開催期間にのべ50万人を超えたそうです。ドイツでは珍しい9月に入っても非常に暑い真夏日が続き、全日程で晴天に恵まれ、いつもにも増して街が活気に溢れました。次回は2年後の2025年に開催となりますが、再びミュンヘンで開催される事を望むばかりです。

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池ノ内 みどり