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プレミアムSUV界の2トップ、レンジローバーとメルセデスGクラスの頂上決戦!

SVOがカーボンパーツを多用して仕上げたレンジローバースポーツの最強モデルが限定グレードの「SVRカーボンエディション」だ。対するはGクラス最強となる585ps/850NmのV8ツインターボを搭載するG63。最強SUVの名に輝くのは果たしてどちらだろうか!?

Mercedes-AMG G 63×Land Rover Range Rover Sport SVR Carbon Edition

原初のコンセプトを守り続けながらアップデートを重ねた珠玉の2台

レンジローバースポーツSVRカーボンエディションとメルセデスAMG G63のリヤスタイル
現在のプレミアムSUVブームの先駆けとなった先祖をもつ、レンジローバースポーツSVRカーボンエディションとメルセデスAMG G63。1970年代にまで潮流を遡れる2台はオリジンの匂いを色濃く伝え、実用性を兼ね備えたプレミアムSUVの2トップと呼ぶに相応しい。

オリンピック選手が引退した後に芸能界入りすることは珍しくない。だがかつては泥濘地を走破することに没頭していたオフローダーたちが、プレミアムな世界で覇を競い合うようになるとは誰が予想しただろう?

ベントレー ベンテイガやロールス・ロイス カリナンが幅を利かせているところに、マイバッハGLSもようやく上陸。そんな今という時代にあってもなお、プレミアムSUV界の2トップには特別な地位が与えられている。レンジローバーとメルセデス・ベンツGクラスだ。

2台に共通するのは、ライバルの影すらない1970年代から自らの道をひた走り、結果としてプレミアムSUVというカテゴリーを創り上げてきたという点だろう。

レンジローバーとGクラスはしかし、同じ土俵に立っているとは言い難い。レンジローバースポーツSVRカーボンエディションとメルセデスAMG G63は、価格的にはともに2000万円前後、パワーは575ps対585psと拮抗している。そしてもちろん最上級のSUVという着地点も同じなのだが、そこにアプローチするための方法論がまるで違う。

それでも個人的にベストだと思えるプレミアムSUVを2台選ぶのであれば、迷わず今回のペアに落ち着くのはなぜだろう?

プレミアムSUVにしてスポーティなパフォーマンスを約束するレンジ

レンジローバースポーツSVRカーボンエディションの走行シーン
レンジローバースポーツSVRカーボンエディション。ドライバビリティに優れる5.0リッターV8スーパーチャージャーエンジンはこれぞSVRの真骨頂。

レンジローバーはランドローバーの源流から分派したプレミアム・オフローダーの開祖であり、スポーツはそのスポーティ版という位置づけになる。以前のスポーツは中身がリーズナブルだったが、アルミモノコックを得た現行はホンモノだ。

ボンネットの中央にカーボンの網目が浮き出た「カーボンエディション」は、スペックを聞いただけだとやり過ぎに思えるが、シャシーの余力を理解すると、さらなるブラッシュアップもアリだと思えてくる。

レンジローバーという上品な車名に似つかわしくないバケットシートや、オフロードのことなどすっかり忘れてしまっているかのような22インチタイヤも、必須なのである。陳腐な表現だが、例えるのであれば911でいうGT3なのだ。

「シリーズ最高峰」と言いたいのではない。911 GT3の鋭いハンドリングは、ショートホイールベースで危なっかしかった初期のナロー911を思わせる。これと同じように、レンジローバースポーツSVRの軽快な走りは、2ドアでスポーティだった原初のレンジローバーを彷彿とさせるのである。

レンジローバースポーツSVRカーボンエディションのインテリア
インパネ中央部上下に10インチのタッチスクリーンを配した最新インフォテインメントシステム「Touch Pro Duo」を採用している。

シルエットはSUVのそれだが、オンロードを誰よりも速く、スムーズに駆け抜ける。ジャガーと結婚したことで21世紀のレンジローバーが「ドライブコンシャス」になったことは間違いない。けれどレンジローバーは以前から、ライバルたちと比べれば遥かにレベルの高いドライバーズカーだったのである。

遅れてやってきたライバルを意識したわけではないだろうが、現行のレンジローバーは個人的には高級感を意識し、重厚になり過ぎているように思う。その点レンジローバースポーツSVRはドライブフィールに遊び心があり、40代のオーナーでも気後れすることのないカジュアルさも持ち合わせている。

初代の意思を継いだレンジローバースポーツSVRだが、実際の走行性能は歴代とも重心の高さとも関係がないくらいに図抜けている。品格ある見た目のSUVでありながら、ラグジュアリーから純粋なスポーツドライビングまで一切妥協したくない。レンジローバースポーツSVRはそんな我がままオーナーの願いを叶えてくれる1台なのである。

マニア心をくすぐり中毒性の高いGクラス

メルセデスAMG G63の走行シーン
585ps/850Nmという途方も無いパワーを叩き出す、4.0リッターツインターボエンジンを搭載するメルセデスAMG G63。

レンジローバーがブランドであるように、Gクラスの記号性も強烈だ。手に入れるまでは他車と比べて迷うことがあるかもしれない。だが一度憑りつかれてしまったら生涯乗り続けるか、もしくは究極のGクラスへと上り詰めたくなる、そんな中毒性の高い一族なのである。

今回のメルセデスAMG G63は3年前に未曽有のマイナーチェンジを果たした現行Gクラスの最高峰モデルだ。高い位置にあるコクピットに乗り込むのは楽ではないし、室内もボディサイズから考えれば狭い。だがコクピットの眺めや、MBUXを含む操作性は最新のメルセデスのそれ。以前のGクラスにあった産業機械的な操作系の渋さや武骨さはずいぶんと洗練されている。

メルセデスAMG G63のインテリア
最新メルセデスのインパネデザイン。インパネ中央にはセンター/リヤ/フロントの3つのディファレンシャルロックが可能なスイッチを装備。

それでもドアを閉める時のガチャッという噛合い感は、超巨大ホッチキスの如し。いまだに「最善か無か」、「メルセデスといえばW124」などと言い続けているマニアが現行メルセデスに乗るとしたら、選択肢はGクラス以外にないだろう。

AMG謹製の585psが刺激的じゃないとは恐れ多くて言えないが、それよりもシャシーの印象の方が遥かに強いことは確かだ。センターコンソールの一等地に陣取った「前、中央、後」という3つの電子制御デフロックのスイッチは、核ミサイルの発射スイッチ並みに出番が少ないかもしれないが、何を差し置いてもGクラスに欠かせない装備であることは間違いない。AMGに乗りたいのではなくGクラスに乗りたい人がほぼ100%だろうから、このスペック優勢ぶりにケチなどつけられるはずもないのである。

今回の2台はどちらも時代相応にアップデートされているが、それよりも原初のコンセプトの方が遥かに強く息づいているという共通点がある。それこそが、迷わずこの2台を選びたくなる理由なのである。装備はこれ以上ないほど充実し、装飾的な部分もあるが、それでもストイックという表現が似合うのである。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 11月号

【SPECIFICATIONS】
ランドローバー レンジローバー スポーツSVR カーボンエディション
ボディサイズ:全長4880 全幅1985 全高1800mm
ホイールベース:2920mm
車両重量:2420kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHC+スーパーチャージャー
総排気量:4999cc
最高出力:423kW(575ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3500-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費率(WLTC):7.6km/L
車両本体価格:1921万円

メルセデスAMG G 63
ボディサイズ:全長4665 全幅1985 全高1975mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2530kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:430kW(585ps)/6000rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/2500-3500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後コイルリジット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費率(WLTC):6.6km/L
車両本体価格:2218万円

【問い合わせ】
ランドローバーコール
TEL 0120-18-5568

メルセデス・コール
TEL 0120-190-610

【関連リンク】
・ランドローバー 公式サイト
https://www.landrover.co.jp/

・メルセデス・ベンツ 公式サイト
https://www.mercedes-benz.co.jp/

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著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。趣味系自動車雑誌の編集部に12年在籍し、モータリングライターとして独立。戦前のヴィンテ…