目次
Porsche 911 GT3 Cup
ノルトシュライフェを舞台に18位で完走
今回、マルコ・ホルツァーとウーヴェ・アルツェンが、ポルシェ911 GT3カップをドライブ。ノルトシュライフェとグランプリサーキットを組み合わせ、24.458kmに及ぶコースで行われた4時間のセミ耐久レースを総合18位でフィニッシュした。
タイプ992をベースに開発された911 GT3 カップは、今シーズンからポルシェ・モービル1スーパーカップをはじめ、ドイツ、フランス、ベネルクス諸国、北米、日本を含めたアジアの各国で開催されているポルシェ・カレラカップの最新ワンメイク用車両として使用されている。さらに2022年からは、今回走行したNLSのほか様々な耐久シリーズや24時間レースにも投入される予定だ。
ポルシェ911 GT3 カップのプロジェクトマネージャーを務める、ヤン・フェルドマンは今回の参戦について次のようにコメントした。
「911 GT3 カップは、耐久レースデビュー戦となったニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで、予想通り素晴らしいパフォーマンスを発揮しました。開発にあたってはワンメイクカップのスプリントレースだけでなく、耐久レースにも対応できるよう最初から配慮されていました。今回のNLSでのテスト参戦では、開発チームが素晴らしい仕事をしてくれたことが証明されました」
上級レーシング仕様からの様々なフィードバック
911 GT3 カップは、ポルシェのワンメイクカーとしては初めてターボ仕様のワイドボディを採用。パワーユニットは先代モデルの最高出力を25hp上回っただけでなくバイオ合成燃料での走行も可能なため、レース時のCO2排出量を大幅に削減することも可能になった。
911 GT3 カップは先代モデルと同様にシュトゥットガルト・ツッフェンハウゼンの生産ラインから、911の量産モデルと一緒に製造。2021年シーズンに向けて160台が生産された後、現在は第2次生産が行われており、高い需要に応えるために300台以上のレーシングカーが追加製造される予定だ。
先代モデルと比較して、性能の向上とよりアグレッシブなデザイン、扱いやすさと耐久性能は大幅に向上。さらにランニングコストとメンテナンスコスト削減が開発における重点課題となった。これを受けて、ポルシェの最新レーシングマシンからのフィードバックが投入された結果、24時間レースを含むロングディスタンスのレースにも対応が可能になった。
例えば今回から追加されたフレアフェンダーは、フロントに12インチ幅、リヤに13インチ幅のホイールを装着することが可能になり、優れたハンドリング性能をもたらす。これはGTレースにおける典型的な手法であり、レーシングカーのハンドリングとドライバビリティに好影響を与える効果を持つ。
リヤサスペンションはタイプ991ベースの先代911 GT3 カップと基本的に同じ仕様となっているが、フロントサスペンションは現在のトップレーシングモデルである911 RSRと同様に、ダブルウィッシュボーン+ユニボールベアリングが採用されている。
耐久レースを想定した新装備の数々
今回、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェでのレースにあたり、ポルシェは911 GT3 カップにわずかな変更を加えた。
「主な変更点は、より厳しい騒音規制に対応したエキゾーストシステム、タンク充填システムの改良、ダンパーシステムと調和したソフトなスプリントレートなどです。エアロダイナミクスに関しては、フロントには小さなフレアが追加され、フロントアクスルでのダウンフォースが少し増加しています。この結果、ノルトシュライフェにおけるセットアップが対応しやすくなりました」と、フェルドマン。
さらに、ポルシェ・モービル1スーパーカップやカレラカップとは異なり、911 GT3 カップはトラクションコントロールとアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)を装備して耐久レースに挑んだ。ABSは工場出荷時のオーダー、もしくは後付けすることも可能。トラクションコントロールはオプションで電子的に作動させることができる。どちらの装備も、スプリントレース、耐久レースでのセッティングに支障をきたさないように組み込まれている。
フェルドマンは、ニュルブルクリンク耐久シリーズへの参戦に関しては、セットアップを微調整するための純粋なテストの機会としている。総合的な性能に加えて、「1スティント=8周」という目標を達成するため、燃料消費量の測定などにも重点が置かれた。さらに、24時間レースの夜間走行を想定し、開発中のヘッドライトも装着された。
ホルツァーとアルツェンもパフォーマンスを絶賛
コクピットにはカーボンファイバー製モータースポーツ用マルチファンクション・ステアリングホイールを装備。これにより、ドライバー交代時に体格の違いに合わせた調整が、簡単に行えるようになった。
センタークラスターに配置された10.3インチのカラーモニターや、ステアリング右側に設置されたラバー・スイッチ・パネル(RSP)も新たに採用された。ポルシェ919 ハイブリッドのコントロールエレメントを彷彿とさせる10個のスイッチは、ライト点灯やベンチレーション、ドライタイヤからウェットタイヤへのタイヤセッティングの変更など、様々な機能が与えられている。これらはドライバーが長時間ドライブする際に最適な作業環境を提供することにある。
911 GT3 カップの開発初期段階から携わってきたマルコ・ホルツァーは、今回の参戦を終えて次のように振り返った。
「ノルトシュライフェで911 GT3 カップを走らせるのは、とても楽しかったです。凄まじいスピードで気持ち良くドライブできるし、思い通りに動いてくれて予想外のことも起こりません。これまで以上にレーシングカーらしくなりました。そして、最新型は大きなウイングとワイドボディが最高ですね」
ホルツァーとコンビを組んだウーヴェ・アルツェンは、次のように付け加えた。
「ポルシェのカップカーは歴代すべて知っていますが、新型911 GT3 カップはこれまで以上に本物のレーシングカーだと感じました。この抜群のロール剛性は、911 GT3 Rを思い出させます。ノルトシュライフェは独特のサーキットですから、簡単にドライブできません。しかし、今回のレースではポジティブな第一印象を確認できました」
「レース中は、サスペンションのセットアップでいくつかトライをしています。ハンドリングは素晴らしく、ポテンシャルも高い。ドライブしていて本当に気持ちがいいし、人間工学が追求されていることや、ポルシェらしい職人技にも魅了されました。自分でも購入して、ニュルブルクリンクでレースに参戦しようかと考えているほどです(笑)」