1990年に登場した「史上最愛のワークス」【連載|スズキ・アルトワークスを語り尽くす】

そこのけ、そこのけ、スズキ・アルトワークスが通る。なのだ!|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.4

OPT2誌での谷田部での記録写真
弊社媒体「Option2」(現在は休刊中)での谷田部最高速テストの記録。
平成元年2月(1989年)、軽自動車の規格改定が決まった。一説には消費税導入も関係したとも言われている。平成2年1月施行に合わせてスズキは、いち早い対応に出た。88年9月に発売した2代目を生かし90年2月、先読みしたようなワークス660を誕生させたのだ!
人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。スズキ・アルトワークスを語らせたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第4回。

TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)
2代目アルトワークスのカタログ写真

2代目スズキ・アルトワークスはスタイル一新。コレが速いんだ!|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.3

人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。スズキ・アルトワークスを語らせたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第3回。 今回は、1989年に3代目アルトとともに登場した、2代目ワークスを語ろう。人気キャラクターも立て、幅広い層へアプローチしながらも、さすがのワークス。速いのだ! TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)

ワークス660は2代目ベースの軽乗用車

2代目との大差はバンパー、内装、排気量660ccのエンジン。初期は明確化に660のロゴがつく。グレードはDOHCターボのRS/X(FF)、RS/R(4WD)。車両価格は約100万円(約110万円)

後部座席が拡大。バンパーを合計10cm延長

十数年ぶりの規格改定で、全長の10cm延長と排気量の660cc化が可能になった。メーカーの分類では、ワークス660は3代目じゃない。RS/XとRS/Rは、2代目ベースのマイナーチェンジ車両である。
というのも、この改定では車幅の拡大は見送られた。2代目のディメンションは、それを先読みした(?)車幅等とのバランスから、運動性能と快適性が両立する最良比だったと思われる。
大事なのは50ナンバーで初回の車検が3年後、軽乗用車になったこと。時の求めだ。2代目でクラス一を主張した2335mmの超ロングホイールベースが、いっそう光る。 荷室でもあった2代目の後部席を、乗車専用に転じた。2代目では背もたれが、リアウインドーの中央付近だった。ワークス660は、Cピラー手前だ。座面の配置も改良され、頭上も足元も余裕そのもの。

10cmの延長は、外観に生かす。2代目のバンパー形状に丸みを加え、前後とも僅かに違う見た目に仕立てた。大胆な、曲面のフロントグリルとWORKSロゴ。この反りが人目に映りやすく、新登場を印象づけた (※SOHCターボ車i.e.は90年7月追加)。

リヤバンパーの違い。上が660でマフラー出口の位置はほぼ同一。そういえば俺の90年4月登録、RS/Xは鉄ホイールを履いて届いた。アルミホイールの生産が間に合わなかったとか

排気量は660cc、F6A型エンジンを搭載

DOHC4バルブ3気筒など、基本構造を受け継ぐ新エンジンがF6A型である。ボア×ストロークが65.0mm×66.0mmと、F5B型のストロークを11mm延ばした格好だ。総排気量は547ccから657ccに上り、圧縮比が8.3で以前より高め。ターボは2代目同様にIHI製RHB31型がつく。

排気量が増えたものの情報では、ターボの仕様は据え置き。もっとも最高出力には自主規制がある。小型ターボを大排気量で駆動し、トルクを狙う作戦か。最大ブースト0.9kg/cm2で64psでも、結果的に発生回転数がF5B型の7500rpmに対して6500rpmまで下がっている。そして最大トルクは8.7kgm/4000rpm、F5B型から0.9kgm上積みされ、低中回転でモリっと力を発揮した。

カムハウジング、ヘッド、ブロックの三段構造はF型DOHC系の特徴。白色のカムハウジングは92年中頃から銀色になる。91年登場のカプチーノにF6A型が搭載され、それが関わる

途中でターボがサイズアップ

660ccの効果はテキメンだ。瞬発力が効く。でも、高回転の吹けが鈍い。一応レブリミッターが作動する9300rpmまで意味なく回せたが、F型のDOHCターボらしくない。
ストロークが延びたり、軽乗用車化で小型の触媒がついたりと考えられる理由はあった。とにかく途中でターボが改良された。初期はRHB31型のVZ14 255-A/R7。変更後がVZ25 275-A/R9。コンプレッサーの能力が上がり、排気側のタービンスクロールの絞りも広い。初期に比べて中回転以降に有利なものだ。当時の最新660は上の回転が伸びた、かな。

俺のRS/Xはポン付けタービン・カム交換仕様。オプション2誌でゼロヨンが15秒48。オプション誌では最高速が190km/h。他誌でゼロヨンが15秒。660ワークス+F6A型は強力

5MTはエンジン特性とギア比をマッチング

エンジン特性に合わせ、5MTのギア比は1速から5速まで、ハイギアード方向に改められた。4.705のファイナル比は不変である。3ATは最終減速比が変ったが、92年6月には電子制御式4ATの採用が始まる。タイヤ幅、外径などは155/65R13で、これまでどおり。

ボディ、ブレーキをマイナー。ABS車も存在

初期はドアノブの位置が2代目と同じく、ドアの端に縦につく。その後、一般的な位置に横にして移された。開閉しにくい? いや、安全対策のサイドドアビーム内蔵にともなう改善だと聞いた。そのため、縦ノブの660は数が少ないと思う。

ブレーキ系では、車両型式がCR22S/CS22S以降はリヤもディスク式だ。そして、ABS付き車。以前、俺が中古で入手した91年式RS/Xはこれ。知らずに買い、ブレーキペダルに伝わる振動で気づいた。たしか制御部は助手席下に、ABS本体は車両後部右の床下にあった。

専用セッティングのサスは、初期ではダンパーの色がレッド。俺は納車の翌日には社外品に交換し、記憶にない。2代目のように3段階の減衰力調整式ダンパーもオプション設定

競技車ベース、40ナンバーの初代ワークスR

商用車の基準でつくられた。92年登場、ワークスRはフルタイム4WDの競技車ベースである。ターボはRHB31型でも、仕様が社外ターボと同等の中高回転向き。スロットル、ECU、排気系も専用だ。5MTは1速から4速間のギヤ比がクロスし、5.705のファイナル比はアルトバン系からの転用とか。内装も簡素なもの。各社、新車販売とともにモータースポーツでも軽ナンバー1の座を競った。

社外の競技用部品は2代目と多くが共通。4WD用フロントL.S.D.も発売。勝利の機会が広がる。筑波のワンメイクレースはN1が復活し、660のN1車両がNEリブレと激闘
2代目マイナーチェンジ アルトワークス 1990年2月~1994年11月
仕様・諸元(一部)

 駆動方式(RS/X):2WD(FF)
     (RS/R):フルタイム4WD
 型式(RS/X):E-CN21S/E-CR22S
   (RS/R):E-CP21S/E-CS22S/ワークスR V-CM22V 
 エンジン:F6A型DOHC4バルブ直列3気筒インタークーラー付きターボ
 ボア×ストローク:65.0mm×66.0mm
 総排気量:657cc 
 トランスミッション:5速MT/3速AT(RS/Xに設定)
 全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1375mm(RS/R 1400mm)
 ホイールベース:2335mm
 トレッド:フロント1225mm(RS/R1220mm)/リヤ1200mm
 車両重量:RS/X 630㎏(3AT 650㎏)/RS/R 690㎏
 乗車定員:4名
 タイヤ:155/65R13
 車両規格:平成2年1月施行 旧軽自動車規格
 ※車重等の数値はDOHCターボエンジン搭載車の初期モデルを掲載
アルトワークスの掲載される誌面の写真

スズキ・アルトワークス3代目は、軽自動車初! オールアルミDOHCターボエンジンを採用|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.5

排気量660ccモデルの発売から4年半が経過した94年秋、そこはかとなく2代目の面影を残した3代目ワークスRS/Zが登場した。ボディは最新の保安基準を満たす構造。一番のトピックが軽自動車「初」のオールアルミDOHCエンジンの搭載だ。これにより、ワークスは軽トップの最大トルクを達成! 人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第5回。 TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)

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著者プロフィール

スズキ 博士 近影

スズキ 博士

当時の愛車、初代ミラターボTR-XXで初代ワークスと競って完敗。機会よく2代目ワークスに乗りかえ、軽自動…