3代目のカナメは○○○ボディと○○エンジン!【連載|スズキ・アルトワークスを語り尽くす】

スズキ・アルトワークス3代目は、軽自動車初! オールアルミDOHCターボエンジンを採用|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.5

アルトワークスの掲載される誌面の写真
低速はNA風だがトルクバンドに乗るとクロスギアが相乗し、8800rpmのレブまで一直線の体感80ps。軽自動車は高速道路の制限が80km/h時代、走りにくかった!?(写真の部品は社外製)
排気量660ccモデルの発売から4年半が経過した94年秋、そこはかとなく2代目の面影を残した3代目ワークスRS/Zが登場した。ボディは最新の保安基準を満たす構造。一番のトピックが軽自動車「初」のオールアルミDOHCエンジンの搭載だ。これにより、ワークスは軽トップの最大トルクを達成!
人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第5回。

TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)

「新乗用」ボディと「軽量」エンジンがカナメの3代目

DOHCターボ車のグレード名はFF、フルタイム4WDともにRS/Z。当初は5MTのみだったが、FFに電子制御4ATを追加。車両価格は約110万円~、約120万円~。写真は前期型

丸目6灯のニューフェイスは車重も軽い

3代目ワークスRS/Zは、丸目の6灯で現れた。発売当日、黒色の新車を前に漫画 “忍者ハットリくん” の顔が浮かび、親しみを感じたことを憶えている。
ボディは、安全面を強化した乗用向けの最新構造だ。ホイールベースとトレッドは、2代目の数値を基本に置く。FFの車重はエアコンとパワステを標準装備しながら、先代の後期型と同等だった。

過去、全高は4WDがFFを約25mm上回ったが、それも5mmに詰まった。だが、なぜか翌年にフロントバンパーなどの外装が、面と角を張った形状に変わる。これは、メーカーでは外装変更の扱いだ。後期型ではタイヤサイズやECU等も改良された。

FOURのF型から軽いKEIのK6A型へ

搭載位置とターボ系の取り回しは、先代とほぼ同一。重量がF型エンジンの78kg前後に対して約10kg軽い。K6A型は軽初のオールアルミDOHCターボエンジンだ。

DOHC4バルブ3気筒はもちろんのこと。ボア68.0mm×ストローク60.4mmのショートストローク。総排気量は658cc。圧縮比が8.4。ヘッドはカムが直接バルブを押し下げ、作動性に優れる直打式に改めた。ブロックは軽初、分割構造のクランクケースを採用し、クランク周辺の取付剛性が高められた。そうして基部を高回転対応に仕上げ、小型の日立製HT06/IHI製RHF3ターボをパワーソースにしている(途中で混載)。対になる5MTは、先代660のギア比を5速のみハイギアードにしたものだ。

ブロックにはクランクのベアリングキャップが存在しない。クランクはブロックとキャップを兼ねるクランクロアケースで挟んで留め、ベアリング部分を適正なクリヤランスで強固に保持

最新制御のSHICで最大トルクが10.5kgm

制御名はSHIC。ブーストとエンジン回転数の条件で、燃料噴射量や点火時期を算出する方式は従来どおり。特徴は中枢に日立製H8/534系の16ビットマイコンが用いられ、処理能力がグンと上がった。機能にはフルシーケンシャル燃料噴射(以前は3気筒同時噴射)、電子式ブースト制御(同機械式)、ノック制御を加えている。低回転で当時では最高圧のブースト1.1kg/cm2を瞬時にかけ、中回転以降は1.0kg/cm2未満に抑えた。K6A型はSHICの緻密さも相まって出力を64ps/6500rpmに収めつつ、最大トルクが10.5kgm/3500rpmに到達。

初代からワークスは高性能を発揮しながら、燃料の指定がレギュラーだ。しっかり掟も守り、クラストップに躍り出る。

制御名はスズキハイパフォーマンスインテリジェントコントロールSHIC。歴代のF型エンジンに対して低中回転域のトルクが大向上。ゆえに過渡領域の出力特性に差が現れる

ie/sは64psのF6A SOHCターボを搭載

ie/sにはF6A型SOHCターボエンジンが載る。先代660のi.e.は最高出力61ps/6000rpm、最大トルク9.2kgm/3500rpm。最終型は64ps。3代目ie/sはライバル車を意識した64ps/6000rpm、10.0kgm/4000rpm。ターボはIHI製、ECUがデンソー製だった。

当初からie系は快適装備が充実。エンジンは低中回転域のトルクが強み。両面から支持を得た。98年11月、ie/sを架装したスズスポーツリミテッドも発売(写真の内装はRS/Z)

シャシーと駆動系は細部を改良

サス、駆動系の構造は先代と変わりない。細部の違いは、まずリヤサスのI.T.L.。いくらかの軽量化でバネ下重量を減らした。さらにFFはハブとアクスルの中心がオフセットしていた形状を、同列にした。
次はホイールのP.C.D.で、114.3が100になった。タイヤサイズは前期型の155/65R13を、後期では155/55R14に低扁平化。あとはフルタイム4WDの機構にRBCを採用、役割はビスカスと同様だ。

ワークスRはハイオク指定。最後期型は特上

競技車ベース、4WDのワークスRも出た。エアコンはなし。5MTはギア比が5速までクロスし、ファイナルが5.705(RS/Z:4.705)。凄いのはエンジンが鍛造ピストン、専用コンロッド、ハイカム、大径スロットル、さらに高風量ターボと大型インタークーラー、R用ECU+260cc/分インジェクター(RS/Z:230cc/分)で固められていた。

なかでも最後期型は仕様が上等だ。ピストンとカムは新設で、圧縮比を公称8.0から8.4にアップ。エンジン上のインタークーラーも特大になり、ボンネットには呼称が甲蟹、それを覆う巨大なエアスクープが後付けされた。5MTにしてもクロス志向が強い。定格は例外のハイオク指定で、64psの遵守に設定ブーストが低めの0.8kg/cm2。それでも最大トルクは11.0kgmと軽ナンバー1を書き換え、ライバル勢に一泡吹かせた。

低速はNA風だがトルクバンドに乗るとクロスギアが相乗し、8800rpmのレブまで一直線の体感80ps。軽自動車は高速道路の制限が80km/h時代、走りにくかった!?(写真の部品は社外製)
3代目フルモデルチェンジ アルトワークス 1994年11月~1998年10月
仕様・諸元(一部)
 駆動方式(RS/Z):2WD(FF)
     (RS/Z):フルタイム4WD
 型式(2WD):E-HA21S
   (4WD):E-HB21S
 エンジン:K6A型DOHC4バルブ直列3気筒インタークーラー付きターボ
 ボア×ストローク:68.0mm×60.4mm
 総排気量:658cc
 トランスミッション:5速MT
 全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1380mm(4WD 1385mm)
 ホイールベース:2335mm
 トレッド:フロント1225mm(4WD 1220mm)/リヤ1210mm(4WD 1200mm)
 車両重量:2WD 650kg/4WD 710kg
 乗車定員:4名
 タイヤ:155/65R13
 車両規格:平成2年1月施行 旧軽自動車規格
 ※車重等の数値はDOHCターボエンジン搭載車の初期モデルを掲載

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著者プロフィール

スズキ 博士 近影

スズキ 博士

当時の愛車、初代ミラターボTR-XXで初代ワークスと競って完敗。機会よく2代目ワークスに乗りかえ、軽自動…