恐るべし、『トミカ』! 実はカワサキの新鋭ヘリコプターもラインアップされています! トミカ × リアルカー オールカタログ / No.104 BK117 D-2 ヘリコプター

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.104 BK117 D-2 ヘリコプター (ローター回転・希望小売価格550円・税込)
BK177 D-2型 実機飛行シーン。(PHOTO:川崎重工)
実機フロントビュー(画像はエアバスヘリコプター H145型/イギリス国防省飛行訓練システムプログラム仕様)(PHOTO:Airbus Helicopters)
実機右サイドビュー(画像はエアバスヘリコプター H145型/イギリス国防省飛行訓練システムプログラム仕様)(PHOTO:Airbus Helicopters)

『トミカ』の『No.104 BK117 D-2 ヘリコプター』は、川崎重工業の川崎式BK117型というヘリコプターがモデルとなっています。BK117型ヘリコプターは西ドイツ(当時)のメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム(MBB)社(後にエアバス・ヘリコプターズ社)と国際共同開発された中型双発ヘリコプターで、1983年の初号機の納入以来、機体の改良を重ね、優れた技術力と高い信頼性により全世界で1700機以上の納入を誇っているベストセラー機です。優れた運航・安全性能により警察、消防、報道、さらにドクターヘリなどとして活躍しています。このBK117型シリーズのうち、A型に始まる型式では4代目となるD型、さらにその2番目のモデル(シリーズ通算8世代目)となるのがBK117D-2型で、大幅な性能の向上とパイロットの操縦負担の軽減を実現したモデルとして知られています。ちなみにこの機体は、共同開発したエアバス社ではH145型という型式名で呼ばれます。

コンピューター制御方式の『ARRIEL 2E』エンジンとその動力をメインローターに伝えるトランスミッション部。ちなみに向かって右が機種側、左が尾部側。(PHOTO:Airbus Helicopters)

D-2型は搭載エンジンをコンピューター制御方式のエンジン、サフラン・ヘリコプターエンジンズ社のFADEC(Full Authority Digital Engine Control=コンピューター制御)エンジン『ARRIEL(アリエル) 2E』に換装。最大全備重量が前モデル比65㎏増の3650kgになり、さらなる改良で3700kgまで向上されています。また、このエンジンはタービンを一つ減らして軽量化されており、エンジンの回転数をコンピューターで制御することによってメンテナンスも容易になっています。

ヘリコプターの要点とも言える、エンジン動力をメインローターに伝えるトランスミッション部のメインギヤボックス(MGB)には川崎重工が提案したベアリング歯当たりや材質変更などの技術向上策が採用されています。また、油が漏れて高温になっても回り続けられるドライランにも対応。エンジンの換装とあわせて、これらの技術革新により最もエンジン馬力が必要になる重重量のホバリング状態を前モデルの5分間から30分間への延長を実現、救助作業などの飛躍的な効率化に貢献しています。これは「レスキュー活動の際に連続して人命救助を行なうには5分間では時間が足りない」というユーザーからのニーズにこたえたものだそうです。

新統合型計器『HELIONIX(ヘリオニクス)』が導入されたコクピット。計器は6×8インチの大型ディスプレイ3台に統合されている。(PHOTO:Airbus Helicopters)
高級乗用車を思わせる、旅客輸送仕様のD-2型の機内。(PHOTO:川崎重工)

また、操縦のしやすさを高めるため、エアバス社の最先端の新統合型計器『HELIONIX(ヘリオニクス)』を導入。計器は6×8インチの大型ディスプレイ3台に統合され、画面まわりのフレームに表示されるベゼル・スイッチを押すだけで、フライト・ナビゲーションや機体関連などの必要情報が瞬時に表示されます。

これに加え、ロール(機体の左右傾き)、ピッチ(機首の上下)、ヨー(機首の左右への振り)のほかに推力を変えるコレクティブ・ピッチ(CP)の制御を加えた4軸オートパイロットを導入。全15モードでの自動運航ができるようになり、パイロットの操縦負担が大幅に軽減され安全性能も向上しています。

フェネストロン方式のテールローターにより、BK117 D-2型は他のヘリコプターにはない低騒音を実現し、環境にも優しいヘリコプターになっている。(PHOTO:川崎重工)

そして今までのモデルとの外観上の大きな違いになっているのが機体尾部にある小さな回転翼――テールローター――です。実はこのBK117型ヘリコプターの前世代モデルであるC-2型は、2023年2月現在、『トミカ』の『No.97 ドクターヘリ』としてラインアップされていますが、このモデルでは回転翼がむき出しで装着されています。しかしD-2型では、機体尾部の回転翼は台所の換気扇のように枠で囲われた形になっています。

これはエアバス社によって考案されたフェネストロン方式(あるいはダクテッドファン)と呼ばれるもので、小さな径面積の回転翼で大きな推力を得ることができ、垂直尾翼との干渉がなく、テールローターによるヘリ全体への性能影響が少ない、そして低騒音であるなどの特徴を備えています。これによりBK117D-2型は他のヘリコプターにはない低騒音を実現しており、環境にも優しいヘリコプターになっているのです。

BK117シリーズの優れた特徴の一つである、大きく観音開きになる後部ドア。ドクターヘリ仕様では、患者を素早く搬入できるメリットになっている。(PHOTO:川崎重工)

もちろん何もかも変えてしまったわけではなく、ドクターヘリ仕様にした際には、患者の搬送を容易にするものとして高い評価を得ている、BK117シリーズ最大の特徴であり美点である後部の観音開きドアなどは継承されています。

さらなる改良が施されたBK117シリーズの最新型がD-3型。機体上部のメインローターが4枚から5枚に増えており、長さが短くなっているのが大きな違い。(PHOTO:川崎重工)

このBK117D-2型は2016年から日本での販売が開始されましたが、2021年にはさらに改良が施されたD-3型がデビューしています。現在最新のBK117型ヘリコプターはこのD-3型になります。D-3型はD-2型までに施された改良に加え、機体上部に備えた大きな回転翼――メインローター――にベアリングのないシンプルなハブ構造の設計による最新のベアリングレス・メインローター・システムを採用したことより、整備性が高められています。また羽根――ブレード――が5枚に増えたことで飛行中の振動が抑えられると同時に快適性や乗り心地が向上、さらに羽根の長さが短くできたことでメインローター直径が小さくなったため、より狭い場所で使用することが可能となっています。

『トミカ』の『No.104 BK117 D-2 ヘリコプター』は2023年2月現在、N0,97となっている『ドクターヘリ』に続くヘリコプターであり、「空を飛ぶ乗り物」ということで『トミカ』の中でも一、ニを争う異色作で、どうやら川崎重工の社有機がモデルのようです。『No.97 ドクターヘリ』と同様にBK117型ヘリコプターのスタイルを上手く再現したものとなっていますので、ぜひ新旧2機を並べて違いをみつけてみてください。

■川崎重工 川崎式 BK117 D-2型 主要諸元

全長(mm):13640

全高(mm):3950

ローター直径(mm):11000

空虚重量(kg):1919

最大離陸重量(kg):3700

動力:チュルボメカ アリエル 2E ターボシャフトエンジン(出力575kW) ×2基

超過禁止速度:268.54km/h

巡航速度:248km/h

航続距離:740km

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