究極のグループAホモロゲーションモデル・三菱ランサーエボリューションVI! 23年間乗り続ける新車ワンオーナーは1998年のカタルニアラリーレプリカ!!

2023年10月25日(水)〜11月5日(土)の会期で開催された『東京モーターショー』改め『ジャパンモビリティショー2023』(以下、JMS)。その、特別招待日/プレビューデーの10月27日(金)と一般公開初日の10月28日(土)に場外で開催された「CONSORSO DI REPLICA CAR(コンソルソ・ディ・レプリカカー)」。そこには実に様々なレプリカマシンが展示されたが、やはり多かったのはWRCで活躍した国産グループAマシン。今回は参戦各社がWRカー(ワールドラリーカー)へ移行するなか、市販車であることにこだわり純グループAを貫いた三菱のランサーエボリューションVIのレプリカマシンをピックアップしてみよう。
PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

スカイラインにセリカ……ラリーもレースもグループAも旧車も! レプリカマシンが集まった『コンソルソ・ディ・レプリカカー』を振り返る

2023年10月25日(水)〜11月5日(土)の会期で開催された『東京モーターショー』改め『ジャパンモビリティショー2023』(以下、JMS)。その、特別招待日/プレビューデーの10月27日(金)と一般公開初日の10月28日(土)に場外で開催された「CONSORSO DI REPLICA CAR(コンソルソ・ディ・レプリカカー)」はご覧になっただろうか? ジャパンモビリティショーを盛り上げた、レプリカカーの祭典を振り返ってみたい。 PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)/MotorFan.jp

第二世代ランエボの最終進化系が「VI」

ギャランVR-4でスタートした三菱のWRCグループA車両は、1993年にギャランの基本コンポーネンツをよりコンパクトなランサーに詰め込んだランサーエボリューション、通称「ランエボ」にバトンタッチされた(市販車は1992年発売)。以降は毎年のようにランエボをのエボリューションが進めてWRCを戦い、1996年に三菱初のドライバーズタイトル、1998年には同じくマニュファクチャラーズタイトルも奪取してダブルタイトルの栄光を手にした。

1996年の三菱WRC連覇の立役者・ランサーエボリューションIVを1995年の1000湖ラリーカラーにしたマニアック仕様【WRCレプリカのススメ】

パジェロと並ぶ三菱のラリーイメージの双璧がランサーエボリューションシリーズだ。片やパリダカールラリー、片やWRC(世界ラリー選手権)で三菱を王座に導いた栄光のマシンである。そんなランサーエボリューションは今でもファンが多く、愛車を大活躍したWRCカラーにレプリカしているオーナーがいるのはこれまで紹介してきたセリカ同様だ。今回はそんなレプリカランエボをご紹介しよう。 PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)/MotorFan.jp/三菱自動車

その間、ランエボはエボI(1992年)、エボII(1994)、エボIII(1995)、エボIV(1997)、エボV(1998)、エボVI(1999)と進化を重ねたが、エボIVはランサーのフルモデルチェンジ(1996年)により大幅に進化した第二世代となった。第二世代エボもV、VIと進化を進め特にワイドボディの採用がこれまでと大きく異なっていた。その第二世代エボの最終進化形こそがランエボVIなのである。

1999年に発売したランサーエボリューションVI。

その当時、WRCを統括するFIA(世界自動車連盟)は自動車メーカーのさらなる参戦を促すべく、4WDターボを後付けできる「WRカー(ワールドラリーカー)」規定が導入されたのが1997年。新規参戦メーカーも思惑通り増加することになるが、既存参戦メーカーも改造範囲が広くなるWRカーに移行。唯一、三菱だけが市販車であることにこだわり純グループAにこだわり続けた。

市販に合わせて同年WRCに投入されたランサーエボリューションVIは、エースドライバーであるトミ・マキネンをドライバーズタイトル四連覇に導いた。(PHOTO:三菱自動車)

それゆえ、トヨタは日本に導入されていないハッチバックのカローラ(1998年WRC投入)を、スバルは2ドアクーペのリトナをベースモデルとし(1997年WRC投入)、市販車とラリーカーの関連性が薄らいで行った。
毎年エボリューションモデルを市販し、WRカーとがっぷり四つに組んで戦い、栄冠を手にした第二世代ランエボは究極のグループAマシンであったと言えるし、その最終進化系であるランエボVIがその最もたるものと言えるだろう。

2000年シーズンはエボVI(とその進化形、通称エボ6.5)をベースにWRカー化を進めたクルマで戦ったが、かえってバランスが悪化し、ドライバーズタイトル四連覇の王者トミ・マキネンをもってしてもランキングは前年から一転下位に沈むことに……。(PHOTO:三菱自動車)

しかし、WRカー規定を進めたいFIAはWRカーを向こう回しに勝ち続ける純グループAのランエボに対して内面苦々しく思っていた節もあり、リヤスポイラー形状に物言いを付けたりする一方、三菱にはWRカーへの移行を促した。三菱は、広い改造範囲を武器に進化するWRカーに対して競争力が相対的に低下しつつあったことからも、FIAの意向を受けてランエボVIベースの半WRカーを移行期間(2000年)としつつ、フルモデルチェンジしたランサーエボリューションVIIベースのWRカーの開発を進める。しかしFIAはエボVIIをベース車両と認めず、ランサーセディアをベースとしなければならないことから、2001年デビューに漕ぎ着けた三菱のWRカー=ランサーWRCは苦戦を強いられることになるのだが、それはまた別のお話し。

2001年にデビューしたランサーWRCは、ランサーエボリューションVIIではなくランサーセディアがベースとされ、開発は迷走。成績も低迷を続けることになる。(PHOTO:三菱自動車)

1999年モデルのエボVIを栄光の1998年ワークスカラーに

JMSの「コンソルソ・ディ・レプリカカー」に展示されたランサーエボリューションVI(以下、エボ6)は、オーナーの根本さんが新車で購入し、23年間所有する1台。

根本さんの所有するエボ6。発売年の1999年式。

ランサーエボリューションシリーズはグループAホモロゲーションのために2500台の生産を義務付けられるが、驚くことにエボ毎に約7000台〜1万3000台が販売された(エボ6.5のみ約2700台)という。
シリーズでかなりの台数が出回ったためか、根本さんが購入したこのクルマはディーラーの長期在庫車で、安く買えたそうだ。

『モータースポーツジャパン』や2019年の『浅間ヒルクライム』にも参加したことがあり、オリジナルのナンバープレートカバーを装着するなど展示慣れしている。

元々根本さんはいすゞ・ジェミニ(イルムシャー)、三菱RVRのMT車を乗り継いだクルマ好き。しかし、RVRから乗り換える際に欲しいクルマが見つからなかったところ、ディーラーにあった在庫車のこのエボ6を選んだ。
レプリカ化は購入してから2年経った2001年、ラ・アンスポーツで施工。1998年のカタルーニャラリー仕様にしている。

1998年のWRC第5戦となるカタルーニャラリー(第34回ラリー・RACC・カタルーニャ-コスタ・ドラダ)。三菱はトミ・マキネンがエボ5Vを駆り3位入賞(勝者はトヨタのディディエ・オリオール/カローラWRC)。

エボ6の発売とWRCに投入されたのが1999年。1988年はエボ5がWRCを戦っており、根本さんはエボ6にエボ5のカラーでレプリカしたというわけ。
元々WRCが好きなのかといえばむしろ逆で、ラ・アンスポーツで他にカッコいいレプリカマシンを見て影響を受けたのがレプリカ化の理由。レプリカ化したことからWRCにも興味を持ったそうだ。

1988年シーズンを戦ったエボ5。写真は第10戦のラリーフィンランド。マキネンが勝利を飾った。(PHOTO:三菱自動車)

できる範囲はDIYで! 再現度の高さだけじゃないこだわりのレプリカ

実に見事な仕上がりのレプリカだが、細部にもこだわりが感じられる。レプリカというわけではないが、フロントグリルの奥に鎮座するインタークーラーには赤い三菱のエンブレムが塗装されていたり、ルーフとトランクにはアンテナを設置。クルー名が記されるリヤサイドウインドウには通風用のパネルを設置している。

フロントグリルはエボ5とエボ6で大きく異なる部分。
インタークーラーに三菱のエンブレムを描く。
ルーフに1本、トランクに2本のアンテナ。マグネット脱着式だ。リヤスポイラー形状もエボ5とエボ6の違い。
通風用のウインドウダクトはラ・アンスポーツ製。左右に装着されている。

さらに、WRCレプリカの定番とも言えるルーフダクトを設置したほか、ミラーはDTMをタイプを装着している。もちろん、ホイールはワークスと同じくエンケイ製をセレクトしている。
また、テールランプを見た目をノーマルのままLED化するというDIYテクニックも光る。

ルーフのダクトはカーボン柄。ワークスではホワイトに塗装されていた。
ミラーはWRCではなくDTMタイプをセレクト。
エンケイ製アルミホイールに225/45ZR17のミシュラン・パイロットスポーツ3を履く。

エンジンまわりはあまり大きく手は入れていないが、オイルキャッチタンクを加工して装着したり、二次エアパイプ作ったりしたほか、エアクリーナーに社外品を装着するなどライトチューンを施している。

エンジンルームは23年モノとは思えないほど綺麗に保たれる。エアクリーナーはモンスター製、エアクリーナーボックスはラ・アンスポーツによるものだ。ラリーアートのパイプやサムコのホース、クスコのストラットタワーバー、ラジエーターシュラウドも追加される。
エボ3から採用された二次エア供給システム=アンチラグ(ミスファイアリング)システム。市販車ではWRCのような動作はしない設定だが、根本さんはDIYでパイプを作成した。

“ジョイスティック”まで用意された驚きのコックピット

レプリカは外観だけに留まらず、コックピットまで及んでいる。圧巻はダッシュボードセンターに生えたジョイスティック! モータースポーツでシーケンシャルシフトが隆盛するとともに、ハンドルからなるべく近い位置にシフトレバーを設置するために導入されたレバー配置だ。

追加メーターやペダル、ラリーアート製シフトノブ、クイックリリースのステアリングのコックピット。何より目を見張るのがダッシュボードのパネルとジョイスティックだ。

このジョイスティック、実はダミーでカーボンパネルごと脱着可能だという。確かに、よく見るとシフトボジション表示は液晶ではなくシールが貼ってあるだけ。見た目のためにここまでやるレプリカ魂を讃えたい。

アルミ削り出しのジョイスティックが生えるダッシュボードのカーボンパネルには、ソレっぽいスイッチも並ぶ。
その下にはヒューズボックスとやはりトグルタイプのスイッチが並び、グループAマシンらしい雰囲気を演出している。
スパルコのフルバケットシートにサベルト製カムロック式4点3インチ幅のシートベルトを装着。

購入からすでに23年経った根本さんのエボ6だが、これまで大きなトラブルもなくそのコンディションは驚くほど良い。というのも、カビ対策を施して車庫保管されており基本的にイベントなどに乗っていくのが主な出番だという。
7000台以上(6.5と合わせて約1万台超)を販売したエボ6だが、競技で使用された個体もあり今や貴重な存在となりつつある。根本さんにはぜひ末長くこのマシンを楽しんで欲しいと思う。

「コンソルソ・ディ・レプリカカー」展示会場に並ぶ根本さんのエボ6。

ランサーエボリューションVI・1998年WRCカタルニアラリーレプリカ
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