トヨタ・スープラ3.0GTターボAはレギュレーションに翻弄された悲運のグループAマシン! 1989年JTCを戦ったバイヨスープラターボレプリカをチェック!!

2023年10月25日(水)〜11月5日(土)の会期で開催された『東京モーターショー』改め『ジャパンモビリティショー2023』(以下、JMS)。その、特別招待日/プレビューデーの10月27日(金)と一般公開初日の10月28日(土)に場外で開催された「CONSORSO DI REPLICA CAR(コンソルソ・ディ・レプリカカー)」。そこには実に様々なレプリカマシンが展示されており、全日本ツーリングカー選手権(JTC)仕様も見受けられた。居並ぶ日産スカイラインGT-R(R32)の中に1台、トヨタ・スープラの姿があった。そんなスープラのJTCレプリカを掘り下げてみたい。
PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

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2023年10月25日(水)〜11月5日(土)の会期で開催された『東京モーターショー』改め『…

A70型スープラのグループAホモロゲーションモデル

1985年から始まったグループA規定による全日本ツーリングカー選手権(JTC)。トヨタは最小排気量クラスのディビジョン1にFFのカローラFX(AE82)とFRのレビン/トレノ(AE86)を、最大排気量クラスのディビジョン3にはヨーロッパでのツーリングカーレースで実績のあるセリカXX(A60系)を投入した。

JTCのグループAを網羅した1冊。スープラについても詳しく書かれている。

そして1987年にはディビジョン3のマシンをセリカXXからA70系のスープラにスイッチ。7M-GTE型3.0L直列6気筒DOHCインタークーラーターボのパワーを活かし、いきなりデビューウィンを飾る華々しいスタート切った。
しかし、同年JTCにフォード・シエラRSコスワースがデビューしたこと、1988年からレギュレーションでターボ係数が変更(排気量1.4倍換算→排気量1.7倍換算)されたことがスープラには不利に働き苦戦を強いられる。
猛威を振るうシエラ(そのエボリューションモデルのRS500)に倣ってグループAホモロゲーションのエボリューションモデルを投入するが、車重の不利を覆すことはできず1990年シーズンを最後にJTCから去ることになった。

スープラは1987年〜1988年をミノルタカラーで、1989年〜1990年を富士通テンのスポンサードで戦った。富士通テンカラーは1989年が同社のカーオーディオブランド「Biyo(バイヨ)」、1990年が会社名の「FUJITSU TEN」のロゴだった。写真は1989年シーズンの37号車。(PHOTO:SAN-EI)

JTCに投入されたスープラは前述の3.0Lターボを搭載した「3.0GTターボ」で、エボリューションモデルが「3.0GTターボA」。「A」はグループAを意味し、そのホモロゲーション取得のために1988年に500台限定で販売。発売当時価格は405万1000円だった。

7Mエンジン搭載のスープラを最大5台所有したオーナーの選択

このレプリカスープラのオーナーであるイシヅカさんは、以前は5台のA70系スープラを所有し、その全てが7M型エンジン搭載車(MA70)だった。現在でも4台、そのうち2台をナンバー付きで所有しているという。そんな状況で、元々は部品取りとして購入した車両を修理したのがこのクルマだそうだ。

イシヅカさんのスープラ3.0GTターボA。限定販売された1988年式で、15年ほど所有している。

イシヅカさんは最初はカローラレビン(AE92)に乗ったものの、その後スープラ……1JZ-GTE型2.5L直列6気筒DOHCツインターボを搭載した後期型の2.5GTツインターボRに乗り換え。一度はスポーツカーは卒業したものの、結局スープラに帰ってきてしまった。1980年代のリトラクタブルライト世代ということもあり、リトラ+大排気量のクルマがやはり好きだと言う。

フロントグリルに搭載エンジンのエンブレム。
左リヤにホモロゲーションモデル「ターボA」のエンブレム。

レプリカ化したのは付き合いのあるデカールショップからオファーがあったからだとか。MA70スープラのグループAはJTCでデビューウィンを飾った1987年(と1988年)のミノルタカラーが有名だが、イシヅカさんは1989年のBiyoカラーをセレクト。

JTCのスープラは36号車と37号車の2台体制。イシヅカさんは36号車のゼッケンでレプリカしている。

イシヅカさんはトヨタ(トムス)のエースドライバー・関谷正徳選手のファン。しかし、このスープラは関谷選手の36号車ではなく37号車仕様。というのも、関谷選手同様に黒澤琢弥選手のファンでもあるからだ。
実は所有する4台のうちの1台がミノルタカラーレプリカで、そちらが36号車仕様なのでこちらは37号車にしたというのもあるそうだ。

ルーフのゼッケン。無線のアンテナはダミー。
37号車は黒澤琢弥選手とパオロ・バリラ選手のコンビ。

レプリカの仕上がりもさることながら内外装の各所に感じられるこだわり

レプリカの仕上がりが抜群なだけでなく、35年前のクルマにも関わらずコンディションも良好だ。

イシヅカさんのスープラは見事にレプリカされているだけでなく(上の本物の写真と見比べてみて欲しい)、クライスラーのヘッドライトを移植するという小粋なカスタムも施されているもポイントだ。

リトラクタブルライトが特徴の70系スープラだが、ヘッドライトを開けたフェイスがインパクト大!

さらにインテリアにもこだわりを感じさせる。とはいえ、ロールバーや導風ダクト/パイプを除けば、レース車輌ではなく”当時感”といった方向性か。
追加メーターやオーディオの変更などがあるものの、ダッシュボードやコンソール周りはオリジナルの状態を残しているし、momoの4本スポークレザーステアリングは当時の純正装着/純正オプションに多く採用されたモデルで、スープラにも設定されていたはず。

ホワイト巻きのロールバーや走行風を導くパイプ、追加メーターといったレーシーな装備もあるがインテリアはノーマル寄り。momoの4本スポークステアリング(ギブリ4?)にペダルカバーなど1980年代後半から1990年代後半の雰囲気だ。

シートは運転席をレカロのセミバケット、助手席を他グレードの純正シートとしている。というのも、3.0GTターボAの純正本革シートは重い上に生地が切れやすいので、外してしまって日常使いにはしていないそうだ。しかも、純正本革シートを4脚保管する念の入れ様。

ロールバーは斜行バーも入った本格なもの。ホワイトである点もレプリカされている。開口部の大きな2ドアハッチバッククーペには有効だろう。運転席はスパルコおんヘッドレストに、トムスのパッドを追加したサベルトのバックルタイプ4点シートベルトを装着。助手席側の4点シートベルトはトムス製の当時モノだ!

もちろん見た目だけでなく走行性能も考慮したカスタムが施されている。ホイールは17インチを装着し、タイヤもサイズアップ。ブレーキもフロントにAMGの4ポットキャリパー、リヤにはドリルドローターを組むなど強化している。サスペンションも車高調を入れている。

17インチホイールに、フロント235/45R17・リヤ255/40R17サイズのブリヂストン・ポテンザRE71Rを履く。
グループAのサイド出しマフラーを装着したこともあるが、現在は行動走行を前提の社外品を装着している。

ちなみに、ノーマルのスープラ3.0GTターボAは16インチホイールにタイヤサイズは225/50R16。純正装着タイヤの銘柄はブリヂストン・ポテンザRE71だった。

主治医のこまめなチェックでコンディションを維持

元々部品取りとして入手したものを修理した個体だけに、タービンブローをはじめこれまで多数のトラブルにも遭遇。それでもエンジンを載せ替えたりするなど、その都度復活させてきている。
メンテナンスはDIYでやるほか、スープラオーナーの頼れる主治医の手も借りている。この主治医にこまめにチェックを依頼してコンディションを維持しているそうだ。

現在搭載しているエンジンはHKSのターボキットを組んだコンプリートエンジンで、ブーストコントローラーも装着している。とはいえ、エンジンルームを覗いてみてもパイプ以外はノーマル然とした雰囲気だ。

HKSのコンプリートエンジンを組んだイシヅカさんのスープラのエンジンルーム。縦置きされると直列6気筒エンジンのヘッドカバーを跨いで続くパイプに「HKS 7M-GT」と大きく刻印されている。また、エンジン運転席側のタービンにフロントから続く写真左手前側のパイプにも年季の入ったHKSのロゴが見られる。

素晴らしいコンディションのスープラだが、1988年式ともなればすでに生産から35年。こまめにチェックはしているとのことだが、コンディションを維持するためのポイントを訊いてみたところ、イシヅカさんはボディカバーは1年に1回交換すること、バッテリーのターミナルは外さないことだと答えてくれた。

今回はJMSの「CONSORSO DI REPLICA CAR」に参加したが、先々、このクルマでトヨタ博物館(愛知県長久手市)に行きたいとイシヅカさんは語る。

「バイヨスープラターボ」レプリカ・フォトギャラリー

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