トヨタVOXYに27インチ級ロードバイクを積んでみる 【スポーツ自転車積載チャレンジ:第5回 トヨタ・ヴォクシー編】

自転車好きジャーナリストの安藤眞が、さまざまなクルマにあの手この手で「愛車」を載せて積載性をチェックする「スポーツ自転車積載チャレンジ!」 第5回目は、人気のミドルサイズミニバン「ヴォクシー」。ミニバンなのでもちろん積めるだろうが、積み方のバリエーションや注意点などは? 全国の自転車愛好家の皆さん、ぜひ参考にしてください。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto)

連載前口上――全国の自転車好き(と僕自身の)ために――

40年以上、自転車を趣味とする僕にとって、クルマ選びの重要な基準は「自転車が積めるかどうか」実際、最初に買った中古車以外は、すべてそれを基準に選んでいる(最初のクルマはルーフキャリヤに自転車を載せていた)。

ぶっちゃけ前後輪を外してしまえばセダンのリヤシートにも積載できるのだが、居住空間は汚したくないし、なるべく手間をかけずに積載したい。しかし、身長が181cmある僕のロードバイクは、サドル高が1mある。荷室高が1mを越えるクルマとなると、ミニバン以外に選択肢はなくなってしまう。

そこで、「このクルマなら積めそう」というモデルをピックアップして、どうすれば積めるかを試そうというのがこちらの企画。全国の自転車好きドライバーのクルマ選びの参考になれば幸いです!

トヨタ ヴォクシー S-Z(7人乗り)

全長4695mm 全幅1730mm 全高1895mm 車両価格3,740,000円

実に8年ぶりのモデルチェンジだったこともあり、現行ヴォクシー/ノアは何から何まで完全刷新と言えるほどの変わりようだ。新世代GA-Cプラットフォーム、全面刷新のハイブリッドパワートレーン、先進安全支援システム、シート配置や格納方法などのパッケージングなどなど。しばらくはトップ安泰と言えそうな充実ぶりが光る。

載るのは当たり前だが、載せ方や、何台載るかが焦点に

「ミニバンなんだから、自転車ぐらい丸ごと載せられるでしょ?」という声が聞こえてきそうだけれど、そうでもないのが意外なところ。僕が運転席のスライドを合わせて、2列目を思い切り前に出して自転車を積んでみたら、130mmハミ出してしまった。

ということは、僕よりシートスライド位置が100mm前に出せるドライバーで、自転車の全長が30mm短いなら、ピッタリ積めるということだけれど、たぶん身長は155cm以下ではないかと思う。

もっともハンドルを切れば全長は短くできるので、30度ぐらい切ってみたら、はみ出ていた後輪はラゲッジ内に収まった。ハンドルを切ると倒れやすくなるので、後輪スタンドをかけてみた。サドルはさらに高くなるが、さすがミニバン、まだまだ余裕がある。

ならばと、ハンドルを切って載せてみた。ハンドルを切ると左右に不安定になるので、スタンドを使用。無理なく積載することができた。

スタンドをかけただけでは走行中に倒れてしまうので、いつも使っているバンジーコードで固定を試みる。床を見たら、サードシートのストライカーがロープフックに使えそうなのだが、ストライカーは車体の内寄りにしかない。

スタンドだけでは走行中に倒れるため、バンジーコードでタイダウンしてみた。3rdシート用のストライカーがロープフックとして使えるが、片側のみ。反対側はレールに引っかけてみたら、まあまあ落ち着いたが、レールに差し込めるアイボルトのようなアクセサリーがあると、タイダウンベルトでしっかり固定できるだろう。

とりあえず反対側は2列目のスライドレールに引っかけてみたが、なんとなく心許ないし、弾力性のあるバンジーコードでは固定力も弱い。

前後を逆にすれば、真ん中にもう1台は積めそう。大人3名+自転車2台で無理なく長距離移動できる。真ん中に積む自転車は、タイダウンの際に3rdシートのストライカーが有効に使える。

ロードバイクの前輪は簡単に外せるので、無理して丸ごと搭載するより、フォークダウンタイプの車内積みキャリヤを利用するのが現実的のようだ。2列目席背もたれとハンドルバーをタイダウンベルトで巻いてしまえば、確実に固定できそうだし。

ロードバイクの前輪はワンタッチで外せるし、フロントフォーク固定式のキャリヤを使えば、積載した際の安定感も高い。無理に丸ごと搭載するより、このほうがいいかも。
前輪を外す搭載方法でも、前後を逆にすればもう1台は無理なく積めそうだ。

4人乗れる状態で4台積めるかどうかは試していないが、うまくやればいけそうな感触。それも、1〜2列席の居住性を犠牲にしない範囲でどうにかなりそう。シューズやヘルメット、工具や空気入れなどは、ラゲッジ床下に人数分、収納できそうだ。

1列目と2列目を僕が無理なく座れる位置にして、前後輪を外した状態で倒立させて積んでみたら、ピッタリ入った。ということは、ロードバイク3台を搭載して、大人3人がレース会場まで遠征できる(4台+4人はちょっと微妙)。

積載自転車の寸法図

■第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm

車載時に最大のネックとなるのが、サドルの高さ。全長はフレームサイズが変わってもそれほど大きく変化しないのがロードバイクの特徴。身長150cmぐらいのライダーのサイズでも、短くなるのは40mm程度だ。

■第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm

前輪を外せば全長は170mm短くなるが、サドルの高さは35mmしか低くならない。サドルを外せば高さは760mmまで下がるのだが、ロードはミリ単位でセッティングを出すし、真直度を合わせるのも面倒なので、サドルはなるべく触りたくない。

■第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm

前後輪を外せば全長は450mm短くなるが、高さを下げるのは前ギヤ(46t)が限界を決めるので、120mmしか低くならない。サドルを外すとハンドルステムがいちばん高くなり、710mmとなるため、車載可能なモデルは増えそう。

■第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm

このサイズなら、セダンのリヤシートにも積めてしまう。大きめのセダンなら、トランクにも入れることができるだろう。実際、僕の仲間は、ランエボやアテンザ、フィアット500にこうして積んでやってくる。自転車乗りは、運転が楽しいクルマ好きが多いのだ。

著者と自転車のプロフィール

メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。


ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。


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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…