イチオシはPHEVかも! 新型プリウスPHEV 度肝を抜かれる走りの良さ

新型プリウスのプラグインハイブリッド(PHEV)の発売開始は3月と予告されている。すでに2.0Lと1.8Lのシリーズパラレルハイブリッドモデルは街を走り出している。新型プリウスシリーズのトップグレードたるPHEVは、どんなクルマになっているのか?
PHOTO:Motor-Fan/TOYOTA

新型プリウスシリーズのトップモデル

リヤには「PHEV」もバッヂが付く。

新型プリウスの「ハイパフォーマンスモデル」「トップグレード」に当たるのがプリウスPHEVだ。先代プリウスにもPHEVモデルはラインアップされていたが、「どうしても、プリウスとプリウスPHEVは別シリーズのように捉えられていたので、新型ではプリウスシリーズのトップモデルとしてPHEVが存在しているように見えるようにした」(新型プリウス開発責任者の大矢賢樹さん)という。

同じカタログにHEVとPHEVモデルを掲載することで、PHEVも選択肢に入れてもらいたいという想いを込めたという。北米ではPHEVモデルを「PRIME(プライム)」という名前でブランディングしているから、新型も「Prius Prime(プリウス・プライム)」となるが、国内はあくまでもプリウスのトップグレードが「プリウスPHEV」となる。

詳細なスペックは未発表だが、HEVのボディサイズは全長×全幅×全高:4600mm×1780mm×1430mm ホイールベース:2750mm
新型PHEV。走行モードの変更はセンター右手前のスイッチで行なう。

このPHEVのプロトタイプに試乗する機会を得た。プロトタイプだから、試乗の舞台はクローズドのサーキットだ。与えられた機会は3周。袖ケ浦フォレストレースウェイの1周は2436mだから、約7.5kmの走行体験である。それでも新型プリウスPHEVは強烈な印象を与えてくれた。

気持ちいい! スポーツカーみたいだ!

試乗は新型3周、前型3周。筆者は先に新型に乗ったが、そうすると前型に乗ったときの落差に驚いてしまう。先に前型に乗った方がよかったかも。
モーター駆動の気持ち良さもたっぷり味わえる。
パワートレーンだけではなく、シャシーの出来のよさも確認できた。

試乗の1周目はEVモードでの走行だ。速度は80km/hまでで、というレクチャーを受けていたが、ピットロードからコースに進入するときまでに、すでに「これはスゴイ!」と感動するほどパワフルでスムーズ。モーター駆動の気持ち良さが味わえる。EV走行だからエンジンはかからない。加速性能は0-100km/h加速が6.7秒と発表されている。速い! 少し前に試乗したメルセデスのEQS450+が6.2秒ですごい加速!と感じたのだから、新型プリウスPHEVの6.7秒はほぼそれに匹敵する加速力だ。

しかも、SUVではない新型プリウスの全高は1430mmと低い。加速力もハンドリング(性能をフルに引き出せるドライビングスキルがなくても)も、スポーツカー並みと言っていい。とにかく気持ちがいいのだ。

新型PHEVのパワートレーンは、2.0L直4(M20A-FXS)。モーターは欧州仕様で120kW(163ps)。システム最高出力は164kW(223ps)と強力だ。
走行モードはECO、NORMAL、SPORT、CUSTOMの4つ。回生ブレーキの強さは調節できる。
回生ブレーキの強さは調節できる。が、設定はやや複雑で走行中には変更できない。量産までに改良されることを望む。

新型PHEVのバッテリー容量は13.6kWh

1周走行して一度ピットに戻り、今度はハイブリッドモードで同じように走行する。今度はアクセルを踏み込むとエンジンがかかる。2.0Lエンジンとモーターによるシステム出力は223ps(164kW)と発表されている。だから、EVモード(欧州仕様のスペックが163psと発表されている)よりもハイブリッドモードの方がアクセルを深く踏み込んだときの出力は大きいはずだが、EVモードでの走行の方が力強く気持ちいい。

あっという間の3周を終えて、今度は前型プリウスPHEVを同じように走らせた。

前型PHEVにも3周試乗できた。
HEVのプリウスとは少し違う外観が与えられていた先代PHEV。
センターの縦型モニターは当初はPHEVモデル専用だった。

全然悪くない。新型と比べるともっさりしているし、パワーもトルクもないけれど、これはこれで悪くない。「環境車であるPHEVの割にはよく走るね」という感じ。

新型はパフォーマンスで前型を圧倒する。「環境車のわりには」ではなくて、「新型プリウスシリーズのハイパフォーマンスモデルに相応しいよね」でもなく、「Cセグのセダン/ハッチバックのなかでトップクラスの走りだよね」である。開発陣は、開発にあたって欲しい性能別にさまざまなベンチマークを見ていたという。そのなかにはVWゴルフのPHEVモデル「GTE 」もあったという。

開発コンセプトの「虜にさせる走り」はPHEVに極まっていると言える。

新型プリウスPHEVのバッテリー容量は13.6kWhだ。

開発目標はEV走行距離を前型の50%以上向上させること。詳細なスペックは未発表だが、前型は「68.3km」のEV走行距離だった。ただし、これはWLTCモードに切り替わる前の数字。

すでに数字が出ている欧州仕様のEV走行距離は69kmだ。こちらはWLTCモードだが、欧州と日本では同じWLTCでも少し違う。欧州では最高時速約130km/hのエクストラハイが含まれるが日本のWTLCモードにはそれがない。だから、日本仕様の新型プリウスPHEVのEV走行距離は90km程度と予想する。

ちなみにRAV4 PHEVはバッテリー容量18.1kWh
EV走行距離は 欧州で74km、日本で95kmだ。

プリウスPHEVのモード走行でのEV走行距離は約90kmなら、普通に使っても60-70kmはEV走行できるだろう。となると、日常のほとんどの走行は、この気持ちいいEV走行で賄えるということになる。これは非常に魅力的だ。

価格は未発表だが、前型PHEVはHEVの約57万円高だった。

前型のラゲッジスペースは、バッテリーによってかなり浅い。
新型は従来ラゲッジ部にあった電池パックをリヤシート下に搭載することでラゲッジスペースの拡大を実現。

もし、新型プリウスZ(FF)が370万円の60~70万円高で新型プリウスPHEVが買えるなら、新型プリウスのイチオシモデルはPHEVだと思う。FFに対する4WDモデルが22万円高。東京在住の筆者ならFFで問題ない(PHEVはFF)からPHEVを選ぶ。たとえPHEV代が70万円だったしても、国のCVE補助金や地方自治体の補助金でかなりカバーできるからだ。

価格の話だけではなく、クルマとしての魅力はPHEVはとても高い。

気持ち良く走れて、おそらく走行中のCO₂排出量はとても低く抑えられるはず。なにせ通常はほぼEV走行でカバーできるはずだからだ。BEVの4~5分の1のバッテリー量で効果的にCO₂削減に貢献できるPHEVの可能性をプリウスPHEVは見せてくれた。HEVよりは重いけれど、BEVよりは圧倒的に車両重量も軽い。

正直、欲しくなるプリウスだ。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…