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強化されたボディとエンジンによる車両重量の増加を克服
基本コンポーネントは旧型と共通ながらも、ボディは骨格を強固に製作してから外板パネルを上乗せするインナーフレーム化によって、フロントストラット軸曲げ剛性は+60%、車体捩り剛性は+50%、リヤサブフレーム剛性は+70%も引き上げられた現行モデル。エンジンは2.0lから2.4lへと排気量アップを行なったことで、28ps、38Nmの向上を達成している。
エクステリア
だが、一方で従来通りの手法では+75kgも重くなることがウイークポイントで、そこを克服するための改良を行なったところが新型のもうひとつのポイントだ。それはフロントフェンダー、ルーフのアルミ化に始まり、マフラー、プロペラシャフトもまた軽量化している。これでほぼ重量増を吸収してしまったというから驚きだ。
インテリア
さらに全高を10mm下げ、カップルディスタンスはマイナス7.4mm、ヒップポイントは5mm下げるなど、その手法はレーシングカーをつくっているかのよう。ただし、兄弟車のBRZのようにフロントナックルをアルミ化せず、旧型同様の鋳鉄製としたところは拘りのひとつ。レースに投入したとしても、きちんとした剛性を出したかったという狙いがそこにある。また、フロントスタビライザーについてもGR86は中実でBRZは中空。リヤは取り付け方法も異なり、GRはあえて従来通りの手法を選択。トヨタとスバルが目指す走りの違いが垣間見える部分だ。
ボディと足まわりの進化で本格的スポーツカーに変身
従来よりもやや重くなったクラッチを踏み込んでクルマをスタートさせると、低中速のトルクが明らかに豊かになり、かなり走りやすくなったことが感じられる。それでいて高回転へ向けた吹け上がりも失っておらず、レッドゾーンとなる7500rpmまで爽快に吹け上がる。その際、アクティブサウンドコントローラーが、ビートの効いたサウンドを室内に展開してくれるから気分は高まる。排気系で演出しにくい世の中になったが、これならドライバーはこれからも満足できそうだ。
うれしい装備
コーナリングをしてみて感じることは、やはりハコの強さだ。ステアリングをわずかに切り込んだ瞬間から、リヤが即座に追従してくる感覚は旧型にはなかった世界観だ。うねりに対するダンピングも良く、ボディの弱さを感じるようなことはなくなった。GR86は微小操舵角からフロントの応答性が良いところが特徴的で、少ない操舵角でコーナーを駆け抜けることが可能。
テールの追従が良過ぎるくらいなのでテールハッピーだと受け止められやすいが、ボトムスピードをしっかりと落とし、立ち上がりでアクセルを全開にできるように走れば、結果的に速い足まわりとなっている。GR86だからといってドリフト指向であるわけでなく、速さもきちんと備えて登場してきたあたりは旧型とは違う。グリップもドリフトも自在にこなせる、本格的スポーツカーだ。
Country Japan Debut 2021年10月 車両本体価格 279万9000円~351万2000円
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。
http://motorfan-newmodel.com/integration/143/