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Q:そもそもランドクルーザーってどんなクルマなの?
誕生70周年のメモリアルイヤーに、新型の300系が登場して話題を呼んでいる「ランドクルーザー」。初代モデルが誕生(試作車)したのは、1951年のことだ。警察予備隊(現自衛隊)のための車両のコンペティションに出すために開発されたクルマで、当時は「トヨタジープBJ型」の名前が付けられていた。ちないに、このコンペティンションには三菱ジープ(ウイリス社のライセンス生産車)や日産4W40型(後のパトロール)もトライした。
この試作車は、性能の高さを示すために富士山六合目までの走破試験を実施。当時としては、稀なる性能を発揮した。しかし、結果的には、三菱ジープに制式採用の座を奪われ、トヨタは民生用市販車へと舵を切り、1953年に本格生産を開始する。
しかし、「ジープ」という名称がウイリス社の商標を侵害するため、1954年にランドクルーザーと名を改めた。ちなみにこの名前は、ライバルだったイギリスの「ランドローバー」の“ローバー”に海賊という意味もあったことから、それを駆逐するという意味で付けられたというのが、現在の定説になっている。
ランドクルーザーは20系を筆頭に、40系、55/56型、60系、70系、80系、100系、200系、そしてランドクルーザープラドと拡大・進化を繰り返し、現在の300系に至っている。
300系は現在のランドクルーザーシリーズのフラッグシップモデル。2008年から2021年まで販売された、先代200系に代わって発売された。14年ぶりのフルモデルチェンジということもあり、様々な点で進化している。
Q :新型ランクルのグレード、「GX」「AX」「VX」「ZX」「GR SPORT」の違いは?
まず、300系にはデザイン上で2つの流れがある。「ZX」を筆頭にした標準ボディ系、そしてオフロード4WDでは初となるGRの名を冠した「GR SPORT」に大別される。
標準ボディ系の中でも、世界共通デザインとなる「GX」「AX」「VX」と、よりラグジュアリーな内外装が採用されている「ZX」に分かれる。またZXには20インチのロードホイールが装着されているが、他グレードは18インチとなっている。シート表皮は「GX」「AX」がファブリック、「VX」「ZX」「GR SPORT」には本革が奢られている。
「GR SPORT」 はまったく別なフロントマスクを採用しているだけでなく、18インチロードホイール、電子制御スタビライザー「E-KDSS」、電動デフロックなどを採用し、オフロード走行を強く意識したモデルとなっている。2023年の「ダカールラリー」には、“チームランドクルーザー・トヨタ車体”がGR SPORTで市販車クラスに出場する予定となっている
Q :新型ランクルはどれくらい大きい? 街中でも問題なく扱える?
300系は「ZX 」で全長4985×全幅1980×全高1925mmと、先代200系のボディサイズをほぼ踏襲している。ちなみにライバルとなる「レンジローバー」が全長4999×全幅1983×全高1835mmなので、これに比べると長さ・幅とも若干小さい。ただし、兄弟車である150系ランドクルーザープラドのボディサイズが、全長4825×全幅1885×全高1835mm(TZ-G)であることを考えれば、かなり大きいことが分かる。
そもそも300系は中東や中国、ロシアといった大陸部での使用を前提にしており、日本の道路事情が優先されているわけではない。そのため、住宅街の細街路などでは少々持て余し気味になることもしばしば。
しかし、300系は従来よりもスクエアで見切りのよくなったボディ形状、大きく切れる前輪舵角より、200系よりも扱いやすくなっている。これはオフロードを走りやすくするための基本性能と言えるが、もちろん細街路でもその恩恵を受けることができる。電柱が乱立するような狭い道でも、その巨体を感じることなくスムーズに運転することが可能だ。
Q:新型ランクル、エクステリアデザインの印象は?
300系のエクステリアは、歴代ランドクルーザーのヘリテイジを踏襲したものとなっている。各部に55/56型や60系、80系などの意匠を感じることがでできる。また、基本は60系以来のワゴン形状がベースになっているが、よりキャビンを後ろ寄りにしたキャビンバックワードプロポーションを採用。スクエアな形状と相まって、、見切りの良さや高いユーティリティを実現している。
エクステリアデザインのコアであり、そして特徴の根幹となっているのがフロントマスクだ。中央部のグリルに加えて、今回、ツインターボの冷却用に設けられたヘッドライト下の開口部がアクセントとなっている。歌舞伎の隈取りを彷彿させるこの開口部は、明色系ではくっきりと、暗色系ではボディに馴染んだデザインになっているのが面白い。
前述の通り、ZXのみがエアロ形状の前後バンパーを装着しているが、これは日本独自の仕様だ。VX以下のグレードの前後バンパーこそが世界共通のデザインとなる。ちなみにGXのみがサイドステップ未装着となるが、サードシートがないことを鑑みれば、無くてもなんとかやり過ごせるだろう。
GR SPORTは同じ形状を使いながらも、グリルのブラックアウト化、ヘッドラインから続くアクセントライン、フォントロゴを使うことでまるで違う表情を実現した。一見すると、60系後期モデルを思わせる顔つきで、オールドファンにも人気が出そうである。
Q:新型ランクル、インテリアデザインの印象と使い勝手は?
エクステリアがいかにも四駆らしさを意識して造形されているのと同様に、インテリアもまた力強さと機能性、そして上品さが融合したものになっている。特にインパネは、ダッシュボードの波打ちを抑えて、低く設計されている。シンプルになったことで往年のクロスカントリー4WDが持つ力強い雰囲気が出たのと同時に、前方の視認性が極めて良くなっている。
メーターにはクロムメッキリングが装着され、計器の雰囲気を演出。特にAX、GXでは油温計と電圧計もアナログとなっているため、よりヘビーデューティな雰囲気を楽しむことができる。
ヒューマンインターフェイスは、センターコンソロールによりコンパクトに集約された。特にマルチテレインセレクトはひとつに、そして小型化され、ドライバーの左手元に配置されている。これにより、走行時に行う操作が直感的にできるようになったのは美点だ。
エアコン、カーナビ、オーディオの操作系も一箇所にまとめられたため、視線の移動が極めて少なくなった。またパネル類で上質感や未来感も演出されている一方で、昭和の意匠もさりげなく再現。まさに、これからのランドクルーザーのコクピットにふさわしいものとなっている。
「トヨタ・ランドクルーザー GR SPORT(ガソリン)」主要諸元
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4995×1990×1925mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2520kg
乗車定員:7名
最小回転半径:5.9m
燃料タンク容量:80L(無鉛プレミアム)
■エンジン
型式:V35A-FTS
形式:水冷V型6気筒ツインターボ
排気量:3444cc
ボア×ストローク:85.5mm×100.0mm
最高出力:305kW(415ps)/5200rpm
最大トルク:650Nm/2000-3600rpm
燃料供給方式:EFI(電子制御式燃料噴射装置)
■駆動系
トランスミッション:10速AT
駆動方式:4WD
■シャシー系
サスペンション形式:Fダブルウィッシュボーン式Rトレーリング車軸式
タイヤサイズ:265/65R18
■燃費
WLTCモード 7.9km/ℓ
市街地モード 5.3km/ℓ
郊外モード 8.2km/ℓ
高速道路モード 9.6km/ℓ
■車両本体価格
770万円
■オプション装備
タイヤ空気圧警報システム(TPWS) 2万2000円/T-Connectナビゲーションシステム 45万7600円/トノカバー(脱着・巻き取り式) 1万1000円/クールボックス 7万1500円/ルーフレール(ブラック) 3万3000円/リヤエンターテイメントシステム(後席11.6インチFHDディスプレイ×2+HDMI端子) 17万4900円/寒冷地仕様(LEDリヤフォグランプ、カメラ洗浄機能、ウインドシールドデアイサー、PTC[補助]ヒーターなど) 2万5300円/ヒッチメンバー 7万7000円/カメラ一体型ドライブレコーダー[販売店オプション] 2万1450円/GRフロアマット[販売店オプション] 4万1800円/GRラゲージマット[販売店オプション] 2万900円