はたらくくるまはおもしろい! 最新建設機械とそのテクノロジーが楽しめる『CSPI-EXPO』はメカ好きにはたまらないイベントだった!!

KOMATSU CD110R(全旋回式クローラーキャリア)
建築業界で活躍する最新技術が集結する展示会『CSPI-EXPO』で、メカ好きな自動車ライター・大音安弘氏が興味を持った重機や特殊機械たちをまとめて紹介する!
REPORT/PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

『建設・計測生産向上展=CSPI-EXPO』は、建設業界向けの重機や機械、サービスなどが一堂に集結する大型展示会だ。今年も5回目となるイベントが、千葉県・幕張メッセにて、2023年5月22日~24日の3日間、開催された。
会場には膨大な数の新商品が並ぶ。一般人には縁のないものばかりだが、メカ好きの心を刺激する驚きの商品で溢れていた。そのほんの一部をご紹介したい。

CSPI-EXPO(建設・計測生産向上展)
開催日時:2023年5月22日(月)~24日(水)
会場:幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1)
主催:建設・測量生産性向上展 実行委員会
入場料:無料(要事前登録)

10年ぶりに復活! 価格は4575万円!
KOMATSU  CD110R(全旋回式クローラーキャリア)

日本が誇る重機メーカー KOMATSUが、2023年に発表したばかりの全旋回式クローラーキャリア『CD110R』は、不整地走行車両と呼ばれるもので、ダンプトラックでは対応できない地盤の悪い現場で活躍する。

KOMATSU CD110R

そのボディは、全長5405mm×全幅3330mm×全高3185mmと巨大。車両重量は15.6t。履帯(キャタピラー)から上は、360度の旋回が可能なので、路面を痛めることなく作業が可能。
さらに荷台はダンプとなっており、総積載量は11tを誇る。
動力として8.27ℓ(8270cc)のディーゼルエンジンを搭載し、定格出力247ps/1900rpmを発揮する。

KOMATSU CD110R

KOMATSUとして10年ぶりに復活させたクローラーキャリアであり、時代が求める環境性能や安全性能を強化。公表価格は、4757万円(工場渡し消費税抜き)と高価。キャビンは全面ガラスな上、乗車位置も高いので視界は良好。死角を無くすべく、カメラも備える。

CD110Rのコックピット
CD110Rのコックピット

快適な作業が行なえるようにエアコンもしっかりと装備されていた。まさに無敵な一台だが、公道走行は不可。活躍の場は、私有地に限られている。

幅広の履帯が設置圧を分散する。

屋内高所作業もコレでヨシ!
LGMG シザース式高所作業車

倉庫や工事現場で見かける高所作業車は、作業台を垂直方向に上昇させ、高所での安全な作業をサポートするもの。同製品を手掛けるLGMGは、高所作業車を専門とする中国の建設機械メーカーだ。2018年には中国販売1位を獲得し、2020年には、アクセス機器メーカーとして世界10位の販売規模を持つという。

1972年に設立された『臨工機械集団』グループの一角を担う建設機械メーカー『Lingong Heavy Machinery Co., Ltd.(LGMG)』。電動シザーリフトとラフテレーンシザーリフト、および屈折式ブームリフトと伸縮式ブームリフトを製造する。こちらは最大7.8mまで上昇できるS2632E。

展示された製品の『S2632E』は、室内で最大7.8m、室外で最大6mまで上昇。『S3246E』は、室内で最大9.5m、室外で最大7mまで上昇する。これはビル3階から4階の高さに相当するため、乗っている自分を想像するとちょっと足元がスーッとしてしまう。自走と昇降は電動となり、駆動用バッテリーが搭載されている。

S3246Eは最大9.5mまで伸長可能。

ケルヒャーに乗れる!? お値段なんと1620万円!
ケルヒャー 床洗浄機 B300 R1D

ケルヒャー B300 R1D

高圧洗浄機でお馴染みのケルヒャーだが、こちらは乗れちゃうケルヒャーだ。工場や倉庫、立体駐車場などの建物内の広い床面を清掃するためもので、水を使った床洗浄に加え、乾燥まで行なえちゃう優れものだ。
ボディサイズは、全長2490mm×全幅1570mm×全高1860mmで、ドライバー1名の乗車が可能。なんと動力としてディーゼルエンジンを搭載するというから、まさに小さなクルマである。

B300 R1Dのコックピット
B300 R1Dのコックピット

その清掃能力は、1時間で1万2400平方メートル(約3757坪)というから凄い。そのため、清掃に使う水タンク容量も300ℓもある。ケルヒャーはドイツのメーカーとして広く知られているが、この清掃車はイタリア製造だった。

ケルヒャーはケルヒャーでも業務用製品を扱うケルヒャープロフェッショナルの製品。イメージカラーも見慣れたイエロー×ブラックではなくグレーとなる。

凄いのはお値段も同様で、なんと希望小売価格は1620万円もする。このため、購入よりもリースやレンタルが主力。日本国内ですでに活躍中だという。
ちなみに、ケルヒャーといえば、黄色と黒のイメージだが、同車は地味なグレー。これはプロユースの『ケルヒャープロフェッショナル』のイメージカラーがグレーのためだ。ケルヒャープロフェッショナルは自動車関連商品として洗車機も作っているそうだ。

最新移動トイレは水洗式で清潔! エアコン完備で快適!
ニットク レストルーム ビークル(自走式仮設水洗トイレカー)

個人的に気になっていたのが、高速道路の道路工事現場などでよく見かけるキャビン付きの軽トラックだ。ご存じの方も多いと思うが、その正体は自走式トイレ。

ニットクの最新トイレカー。

ニットクのトイレカーの内部を見学させてもらうと、小便器と個室洋式便所、洗面台付きと小さいけれど住宅用のトイレと変わらない設備である。さらに快適性を高めるべく、エアコンまで用意。この時期ならば、まさにトイレカーに入っただけで、天国となるのを感じてしまうだろう。

小便器と個室洋式便所を備える。
洗面台の横には大型のエアコンも装備。

イベントや工事現場でのニーズが多い仮設トイレは価格面からも設置型のものが主流だが、自走式のニーズも拡大しているという。
特に設置の簡単さは特筆もので、設置型の場合だと運搬や設置には複数名の作業員が必要で時間も掛かるが、自走式ならば、必要な場所にトイレカーを駐車するだけなので短時間かつ一人で行なえる。また現場内で移動させるのも簡単。数を必要とする場合こそコスト面で設置型に敵わないものの、1か所だけトイレを用意すればよい場合や頻繁な移動が必要な道路工事などでは自走式の方がメリットが大きいのだ。

水洗式で清潔。エアコン完備で快適。女性も安心して使える。

そして、住宅用同様に水洗式となるため、清潔かつ快適なトイレ時間が過ごせるのも重要なポイント。特に女性が活躍する職場では、トイレは軽視できない重要な環境整備となっており、同製品の開発のきっかけも、とある建設会社からの仮設トイレが原因で優秀な女性社員が辞めてしまったことを相談させたことがきっかけになっているそうだ。

腰下はガソリンエンジンの流用
Kubota 3.8ℓ Hydrogen(産業用水素エンジン)

農業用トラクターの印象が強いクボタだが、実は産業機械大手メーカーだ。そんなクボタがこのイベントで日本初公開したのが『産業用水素エンジン』だ。
既存の産業用ガソリンエンジン『WG3800』をベースに開発されており、腰下を流用し、ヘッドまわりを水素用に新設計している。この水素エンジンは備え付けの発電機と組み合わせることが想定されている。

クボタが参考展示した産業用水素エンジン。腰下は既存のガソリンエンジンで、ヘッドまわりが水素用に作られている。デンヨーの可搬式発電機(45kVA水素専焼発電機)の発電ユニットとして搭載されることになっている。

水素エンジンの課題は、燃料となる水素の保管と供給だ。市販されるFCVでも分かるように、車両向けではコンパクトな水素の貯蔵システムが課題となっている。しかし、設置型のエンジンならば、スペースの制約が少ないため既存の水素貯蔵システムを使って供給することが出来るというわけだ。
また既存のエンジンがベースのため、エンジンのみの入替が可能となる汎用性の高さも強み。産業エンジンの脱炭素化の一歩として、近年に市販化される予定だ。

タイヤチェーンのようでチェーンではない
三菱製鋼 タイヤプロテクター

三菱製鋼 タイヤプロテクター

重機タイヤ用のチェーンかと思いきや、採石場やダム工事などの現場にある鋭利な岩石などからタイヤを保護するための金属製のプロテクターなのである。なんと重量は392㎏(1輪分)もあるというからビックリ! 作りはとにかく強固で、接続部も溶接で繋げられており、がっちりとしたフックで固定されていた。装着すれば摩耗や損耗による重機用のタイヤ代が節約できるだけでなく、タイヤトラブルでの工事遅延などを防ぐ役目があるそうだ。

安全と環境と自動化が課題の建設機械

普段は目にすることができない特殊重機や専用機械の見学は、まさに発見と驚きの連続。そのスケールの大きさも、建設業界ならではだ。筆者も時間を忘れ、オープンから夕方まで、会場内をじっくりと巡ってしまった。

上記で紹介したような製品だけでなく、画像技術の活用も積極的で、360度カメラやドローンを活用したソフト面の技術発展も目覚ましく大いに興味を惹かれた。
また安全の強化はどの業界でも重要課題だが、自動車同様にカメラやセンサーの活用した先進安全技術の取り組みも始まっているが、産業機械ならではの課題があることも見えてきた。次回は、その一例も紹介したい。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…