国内にわずか5台しか存在しない! 「G63 AMG 6×6」はGクラス史上最強のオフロードモンスター

最近、キャンプの新たな楽しみ方として注目されているオーバーランドスタイル。そのスタイルをいち早く取り入れ、実践しているキャンプグッズ販売の「16BASE OVERLAND」さんが、西湖でキャンプイベントを開催。当日は、代表のイチローさんが日本に5台しか存在しない「メルセデス・ベンツ G63 AMG 6×6(シックスバイシックス)」で登場するというので、満を持してキャンプ地へ。まずはGクラスの6輪車とはいかなるクルマなのか、レポートすることにしよう。
REPORT&PHOTO 小原裕一郎(OHARA Yuichiro)

ベースとなったゲレンデは40年以上の歴史を誇る名車

「メルセデス・ベンツ G63 AMG 6×6」のベースとなっているのは、その名が示すとおり、硬派な本格的クロカン4WDとして名高いメルセデス・ベンツ Gクラスだ。ゲレンデ(ゲレンデヴァ―ゲン)の愛称で親しまれているGクラスは、1979年にリリースされ、すでに40年以上の歴史を誇っている名車で、その起源は1973年まで遡る。

そもそもGクラスは、ドイツのダイムラー・ベンツ社とオーストリアのシュタイア・ダイムラー・プフ社が、一般ユーザー向けに軽量オフローダーの共同開発を目的として協定を結んだのが誕生のきっかけ。武骨なスタイリングから、軍用車由来と思われがちだが、実は当初から市販車として開発が進められていたわけだ。ちなみに、ゲレンデという愛称は、NATOが軍用車として正式採用する際に与えた名称が「ゲレンデヴァ―ゲン」だったことに由来するが、そのイメージが強いがゆえに、軍用車由来と勘違いされることが多い。とはいえ、ゲレンデというワードはドイツ語ではオフローダーを意味するので、起源はともかく、まさにGクラスにはピッタリの愛称といえるだろう。

1979年にリリースされたGクラス460シリーズ。発売当初は4種類のエンジン、2種類のホイールベース、5種類のボディバージョンが用意されていた。<出典:Mercedes-Benz Media>

「G63 AMG 6×6」は日本にわずか5台しか存在しない超希少な特別仕様車

「G63 AMG 6×6」は、今から約9年前の2014年4月25日から8月31日までの期間限定で受注し、日本にはわずか5台しか割り当てられていない超希少車。アジアでは唯一日本にしか投入されておらず、このほかEU、中東、ロシアなどを中心に販売された。これは投入する国のオフロード指向、道路事情、法規制など考慮した結果らしいが、日本ではGクラスの販売が好調なことも背景にあったようだ。

それを裏付けるように、日本仕様には狭い道路でも安全に走れるように、特別に4つのアラウンドビューモニターが装備されており、メルセデス・ベンツがいかに日本市場を重要視していたかが伺える。

フルタイム6WDシステムのG63 AMG 6×6は、砂漠地帯のような過酷な環境下でも圧倒的な走破力を発揮する最強のオフローダーだ。<出典:Mercedes-Benz Media>

国内にわずか5台しか存在しない超希少な「G63 AMG 6×6」だが、そのうちの1台を所有しているのが、今回、西湖でキャンプイベントを開催した「16BASE OVERLAND(https://16-base.jp/)」代表のイチローさんだ。実は2014年の発売当初の車両価格は8000万円だったが、その希少性から、現在は中古車ながら1億円以上のプライス付けられているとのこと。ただ、数台のGクラスを所有し、無類のGクラス好きのイチローさんは、状態のよい「G63 AMG 6×6」が売りに出されていると知り、このクルマを即決したそうだ。

室内保管されているイチローさん所有の「G63 AMG 6×6」は、とても状態がよく、発売から9年経った今でも新車のようなクオリティをキープしている。

6輪駆動をはじめとして軍用車両や特殊車両の技術が満載

「G 63 AMG 6×6」は、その名のとおり、フルタイム6WDシステムを搭載した6輪駆動車だ。各部には、長いGクラスの歴史において世界各国の軍用車両や防弾仕様車などの開発を通じて培った特殊車両技術が惜しみなく投入されており、まさに究極のオフロードモンスターという名にふさわしい装備が搭載されている。

例えば、3つの車軸と5つのデファレンシャルロックをはじめ、アクスルやサスペンションの最適化、タイヤ空気圧調整システムの搭載などは、乗用車史上ほかに類を見ない「G 63 AMG 6×6」だけの特別装備。これにより、砂地、岩場、水溜まりなど、ありとあらゆる悪路を難なく走破することを可能としている。

「G 63 AMG 6×6」は通常のGクラスとは異なり、巨大なオーバーフェンダーが装着されているので、どこから見ても迫力満点だ。
モンスター級の巨大なボディに6つの大型タイヤが装着されたサイドビューは、「G 63 AMG 6×6」がただ者でないことを物語っている。
3つの車軸と5つのデファレンシャルロック機構を持つところが、「G63 AMG 6×6」の最大の特徴。これにより比類なき走破性を確保している。<出典:Mercedes-Benz Media>

ボディサイズは、全長5,875mm、全幅2,110mm、全高2,280mm、車重3,850kgと、エンドユーザー向けの車両としては破格のサイズで、エクステリアの迫力もモンスター級。オフロード性能をつかさどるスペックも、最低地上高460mm、渡河深度1,000mm、アプローチアングル約50度、デパーチャーアングル約45度など、トラック並みの巨体にもかかわらず、まるでボルダリングでもするかのような異次元の高い走破性を誇っている。

荷台には6×6の浮き文字を配したエンボス加工のハードカバーを装備。これは国内で3ナンバー登録をするために特別に用意されたものだ。
リアは本来のバンパーの下にサブパンパーを装備。これも日本の安全基準をクリアするために、特別に装着されたものだ。
荷台の積載力は十分だが、車高が高く、ハードカバーも跳ね上げ式ではないので、荷物の出し入れは若干苦労する。

乗用車初のタイヤ空気圧調整システムを搭載

注目の6WDシステムについては、オーストラリア軍などに納入している軍用車両の技術が転用されており、3つの車軸すべてと、それぞれの車軸間に搭載される5つのディファレンシャルギアすべてにロック機構を採用。センターコンソールの3つのスイッチを操作することで、急勾配や岩場をはじめとするあらゆるシーンで可能なかぎり最大のトラクションを確保できるようになっている。

サスペンションには、防弾仕様車で使われている強化コイルスプリングとラリーレース用に開発されたオーリンズ製のガス封入式ダンパーを採用し、卓越した走行性能と優れた運動性能、高い走行安全性を実現している。

さらに、乗用車としては世界で初めて「タイヤ空気圧調整システム」が搭載されており、運転席からスイッチ操作で6輪すべてのタイヤ空気圧を調整することが可能。砂漠など柔らかい路面を走行する際はタイヤ空気圧を減圧して接地面積を増やすことにより、タイヤの沈み込みやスタックを防止できる。しかも、走行時の空気圧から砂地走行に適した0.5バールまでの調整は20秒以下で完了。通常のトラックなどでは、この作業は10分程度かかるので、「G 63 AMG 6×6」は異例の速さといえる。

サスペンションはオーリンズ製のガス封入式を採用。フレーム上部にはタイヤ空気圧調整システム用のエアタンクが2本装着されている。
オーバーヘッドコンソールに設置されているタイヤ空気圧調整パネル。ここで空気圧の調整やメインタンクとサブタンクの切り替え操作を行う。

パワートレインはAMG 5.5ℓV型8気筒直噴ツインターボエンジンを搭載

パワートレインは、W463と同様の最高出力400kW/544PS、最大トルク760Nmの圧倒的な動力性能を持つAMG 5.5ℓV型8気筒直噴ツインターボエンジン(M157型)を搭載し、31:42:27の駆動トルク配分でパワーを各車輪へ伝達。トランスミッションは、素早いシフトチェンジを実現する7速A/T「AMG SPEED SHIFT PLUS」が組み合わされており、あらゆる走行シーンで3,850kgの巨体を力強く、かつスムーズに加速させる実力を持っている。

ちなみに、燃料タンクはW463と同様の96リットルタンクを搭載しているが、63リットルの予備タンクも搭載されており、メインタンクの残量が1/4以下になると運転席のスイッチで予備タンクから燃料の転送を行うことができる。

パワートレインは、W463にも搭載されているAMG 5.5ℓV型8気筒直噴ツインターボエンジンを搭載。最高出力400kW/544PS、最大トルク760Nmを発生する。<出典:Mercedes-Benz Media>
 

まるでSクラスのように優雅で快適な室内空間

インテリアは、モンスターチックなエクステリアとは裏腹に極めてゴージャスな造りとなっているのが特徴。シート、ダッシュボード、ドアパネルには最高級のdesignoレザーを贅沢に採用するとともに、随所にカーボントリムを配置してスポーティー感も演出している。

左右が独立したフロントとリアシートには、電動調整機能をはじめ、シートヒーターやシートベンチレーターを備えるなど、至れり尽くせりの機能が盛り込まれている。

さらに、リアエンターテインメントシステム(リアシート後部に設けられたスペース)の採用によって、リアシートは大きなリクライニングスペースが確保されており、ピックアップ形状のボディとは思えないほど快適性をキープ。「G 63 AMG 6×6」のインテリアは、ゴージャスな造りも手伝って、まるでSクラスのように優雅で快適な空間に仕上がっている。

最高級のdesignoレザーを贅沢に採用したインテリアは極めてゴージャス。外観と内装のギャップの大きさには少々驚かされる。
こちらはボディカラーがミスティックホワイトⅡのリアシート。大型のセンターコンソールも装備されており、まさにリムジンのような豪華さだ。<出典:Mercedes-Benz Media>

世界的な人気に押されて最終的には約170台を製造

「G63 AMG 6×6」は、当初の計画では約2年間の製造期間中に中東を中心に世界で100台(日本では5台)を販売する予定だった。しかし、その人気の高さから最終的には約170台が製造されている。

今回は、幸いにも超希少な実車を目の当たりにすることができたが、巨大な「G63 AMG 6×6」の佇まいからは、いかにも中東の富裕層が好みそうなステータスオーラを漂ってくるし、スペシャル感満載のクルマという印象だった。それがゆえに、こんな高価なクルマが約70台も増産されたのは、すんなり納得できた。

その一方で、これまで述べてきたように、「G63 AMG 6×6」は長い歴史を持つGクラス史上最強のオフロードモンスターであることは確かで、現在市販されている数あるオフローダーの中でも走破性も、品格も右に出る者は居ない。「やはり、レーシングカーから大型の特殊車両、そして軍用車まで幅広く手掛けるメルセデス・ベンツだけのことはある」と改めて思い知らされたオフロードモンスターだった。

アプローチアングル約50度、デパーチャーアングル約45度を誇る「G63 AMG 6×6」は、道なき道をどこまでも走破できる実力を持っている。<出典:Mercedes-Benz Media>
「G 63 AMG 6×6」は、6輪駆動の強力な推進力で荒れたダートをもろともせず、高速で突き進むことができる。まさにオフロードモンスターに相応しい走りだ。<出典:Mercedes-Benz Media>
 

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著者プロフィール

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小原 裕一郎

メディアプランナー&ライター。メディア業界でテレビ視聴率調査、マーケティング(リアル&デジタル)、…