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Next Chapterのレクサス
じつはレクサスは今、変革期を迎えている。RZのデビューを控えた2021年10月に「NX」が最初に新世代レクサスとしてデビューした。レクサスでは「Next Chapter」と位置付け、CN(カーボンニュートラル)社会の実現と多様化するマーケットニーズに寄り添うクルマづくりとして大きく変わろうとしている。その後「LX」が続き、「RZ」「RX」と立て続けに次世代レクサスがデビューしているのだ。
Next Chapterと位置付けた理由は当時の豊田章男社長(現:会長)が「レクサスは退屈だ」といったひと言で始まった。当時の佐藤恒治レクサスインターナショナルのプレジデント(現:トヨタ社長)は、このひと言でエンジニア魂に火がつき、次世代レクサスの開発を始めることになる。そこから産み出されたのが「NX」「LX」「RZ」「RX」の4モデルだ。
この4モデルに共通するのは「素性をよくする」「慣性諸元をベストな状態にする」というテーマを掲げ、パッケージの再検討、重心位置、骨格剛性などクルマと一体になることを目指したこと。開発手法にも多くのMBD(モデルベース開発)を利用し、テストドライバーのコメントから慣性指標、定量化を導き、官能評価に繋げていくクルマづくりがスタートした。
バッテリー専用モデル「RZ450e」
こうした背景から生まれたBEVの「RZ」の諸元は、Dセグメントサイズで前後にモーターを搭載するAWDとなった。現在「version L」だけのモノグレードで、全長は4805mm、全幅1895mm、全高1635mm、ホイールベース2850mmというサイズ。最低地上高は205mmで、プラットフォームはe-TNGAを採用し、bZ4Xと共通であるものの専用の変更は行なっている。
e-Axelと呼ぶ電動パワートレインはフロントとリヤにモーターを搭載し、フロントは1XM型モーターで159kW/266Nm、リヤは1YM型で80kW/169Nmのスペックになっている。バッテリーはリチウムイオンで71.4kWhの電力量を持たせ、航続距離はWLTCモード494kmとしている。価格は880万円。
多様なRXシリーズ
一方でエンジンやモーターを駆使する「RX」を見てみると、ボディサイズはRZよりやや大きくDセグメント+といったサイズ。全長4890mm、全幅1920mm、全高1700mm、ホイールベース2850mmで、プラットフォームはTNGA-Kを使用しエンジンは横置きだ。
RXは北米をメインマーケットにしたクロスオーバーSUVで、レクサスブランドの屋台骨であり大成功しているモデル。そのため多様なニーズもあり、パワートレーンを複数用意している。最もハイパフォーマンスなのが「RX 500h F SPORT Performance」でクラウンRSにも搭載したT24A-FTS型の直列4気筒2.4Lターボ+ハイブリッドのAWD+6速ATという組み合わせのモデルで、901万円だ。
「RX450h+ versionL」はA25A-FXS型直列4気筒2.5Lプラグイン・ハイブリッドで価格は872万円。「RX350」にはversion L(2WD666万円、AWD707万円)とF SPORT(AWD707万円)の2モデルがあり、パワートレインは共通のT24A-FTSで2.4Lターボに8速ATを組み合わせている。
そして2023年7月に追加された「RX350h version L」は、450h+のハイブリッド版でパワートレーンは同じA25A-FTS型の直列4気筒2.5L ハイブリッド。2WD(758万円)とAWD(796万円)をラインアップした。
車両価格 補助金を差し引くと
さて、補助金を考慮し実際の販売価格から差し引いて比べてみるとRZは約90万6000円の補助金があるので、789万4000円になる。RX500hは約1万8800円の補助金で差し引くと899万1200円。450h+は約62万円の補助金があり、810万円。350hはAWDが約3万7500円あり、2WDは約3万円の補助金になる。差し引くとそれぞれ、755万円と792万2500円となる。そして「350」は補助金対象にはなっていない。
こうしてみると、「RZ」と「RX」を価格から比べると450h+version L(PHEV)(810万円)とRZ450e version L(789万4000円)の価格が近い。他を見るとRX350 F SPORTはRZより80万円以上お得な価格で、装備が同等のversion Lで2WDであればさらに123万4000円も安い。500h F SPORT PerformanceはRZより約110万円高く、別格というのがわかる。
クルマと対話ができるか
では走行性能はどうだろうか?レクサスはブランド共通の開発の狙いとして、「すっきりとした操舵感」「ドライビングシグネチャーをつくる」そして「クルマと対話ができる」といった言葉で表現している。レクサスらしさを追求し、走りの味を実現することを目標としているのだ。
それはRXに置き換えると、北米マーケットが主戦場であり、走りにこだわりすぎて、これまで育った世界観や雰囲気を変えてしまうかもしれないという悩みを抱えながら現在のRXを生み出した、とチーフエンジニアの大野貴明氏は語っていた。一方のRZは、BEVだからといってBEVの特徴をやたらと追求するということではなく、今までやってきたクルマづくりのなかで、レクサスらしさを電動化技術で引き上げていくという発想で開発した、とチーフエンジニアの渡辺剛氏は語った。
つまりモデルが背負う背景や役割によって、作り上げるプロセスは異なるもののゴールは同じであるという難しいタスクが存在していることが垣間見える。
RX系はそれぞれが個性的
実際に試乗してみるとRXはパワートレーンが変わると「クルマとの対話」が変化し、個性が変わると言っていいかもしれない。RX350 F SPORTのAWDは、静粛性は高く乗り心地は小技を利かせ引き締まったいい具合のサスペンションでまとめられ、コーナーではボディ剛性の高さと、そして転舵速度とロールスピード、ヨーモーメントの感じ方などに一体感があり、ひとつの塊が意のままに動いていると、レクサス風に言えば対話ができる。
RX500h F SPORT PerformanceにはDRSというリヤ操舵が搭載され、ハンドリングはスポーティだ。スポーツカーすらも追いかけ回すことができ、RXのなかでも群を抜いてトップ・パフォーマーであることを実感する。ちなみにDRSは車速によって同相・逆位相にステアするが、60km/h以下での旋回性の高さを実感し、また同位相には140km/hで切り替わるというので、ハイスピード領域はサスペンションとタイヤのグリップでコーナリングするコンベンショナルなコーナリングにしている。同位相にステアさせる狙いは、緊急回避(スピン回避)のために操舵させていると説明している。
さて、RX450h+ version Lは落ち着きのある重量感とゴージャスさを感じさせるドライブフィールがあり、まさにラグジュアリーだ。プラグインハイブリッドというシステムもそうした豪華さに寄与しているのだろう。350系のような軽快感ではなく、また500hのような暴力的な走りができるというわけでもなく、RXにおけるThis isがこの450h+ではないかと感じた。
RZ450eは曲がるのが得意
リヤモーター: 1YM型交流同期モーター 最高出力:80kW(109ps) 最大トルク:169Nm
バッテリー:リチウムイオン電池 電池容量:71.4kWh 総伝達:355.2V
そしてBEVのRZ450eは二面性を感じさせる乗り味だ。高速走行はどっしりと安定感がありversion Lらしい豊かさが感じられるが、ワインディングに入るとDirect4の味付けもあり、ハンドリングがコーナリングマシンへと変わる。曲がるのが得意とばかりにノーズがクンクン入っていき、アクセルをさらに踏み込んでいけるスポーティさに目が醒める。
やや制御でのハンドリングであることを感じさせるフィールであるが、「新しい曲がり方」もまさに新鮮であり、アーリーアダプターを刺激することは間違いない。またゆったりと走れば、これまでのレクサスが持つ豪華さや静粛性は担保され、ICEからの乗り換えもスムースにできると思う。
つまり、RX、RZのダイナミック性能ではそれぞれに違いがあり、マーケットの多様性に応えたラインアップと言えるかもしれない。一方、スピンドルボディのように、見た目やインテリア、雰囲気などはプレミアムブランドに相応しいレクサスらしさがあり、存在感が押し出されるのは間違いない。
このように、この2車種にはまったく違った顔があり、それぞれが魅力を持っているわけで、RZはICEでは絶対に真似できないEVならではのダイナミック性能があり、充電環境が整えばさらに魅力は増す。またRXのversion Lもレクサスらしさがあり、ボディの大きさも手伝っての存在感は捨て難く、EV走行領域もリージョナルでは十分なため現実的な選択肢になるだろう。
レクサスRZ450e versionL 全長×全幅×全高:4805mm×1895mm×1635mm ホイールベース:2850mm 車重:2110kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式 モーター: フロント 1XM型交流同期モーター 最高出力:150kW(203.9ps) 最大トルク:266Nm リヤモーター: 1YM型交流同期モーター 最高出力:80kW(109ps) 最大トルク:169Nm バッテリー:リチウムイオン電池 電池容量:71.4kWh 総伝達:355.2V 駆動方式:AWD 一充電走行距離WLTC:494km 交流電力量消費率:147kW/km 市街地モード130Wh/km 郊外モード138Wh/km 高速道路モード161Wh/km 車両価格:880万円 試乗車はオプション(ホイールダークプレミアムメタリック塗装1万1000円、デジタルキー3万3000円、Lexus Teammate Advanced Part4万4000円、マークレビンソンプレミアムサウンドシステム23万1000円、おくだけ充電1万3200円、寒冷地仕様3万1900円、パノラマルーフ26万9500円、ドライブレコーダー4万2900円、バウラック&ソニックカッパー33万円)オプション込み980万6500円