目次
三菱トライトンは1978年に生まれた「フォルテ」をルーツとしたピックアップトラック。フォルテから数えると第6世代となる新型トライトンは2023年7月26日にバンコクで発表された。新型と同時に様々な形態のカスタムモデルも公開された発表会は大々的に行われ、その様子はインターネットを通じて中継された。
今回のモデルチェンジに際して、三菱はトライトンを大幅に刷新した。
ラダーフレームを用いることは変わっていないが、クルマの背骨とも言えるフレームそのものを新たに開発。従来型から剛性を大幅に高めながら、ハイテン鋼の採用比率を増やしている。積載時の耐久性や衝突時のエネルギー分散性も向上した。また、心臓部のエンジンには新開発の2.4L直列4気筒ディーゼルターボの4N16を搭載するなど、先代とはまったく別物のクルマとなっている。
SUV級の乗り心地を追求
トライトンのモデルチェンジに際し、三菱は快適性にもフォーカスして開発を進めた。目指したのは「SUV並み」のそれだ。
ピックアップでは快適性を追求するのは難しい。大量の荷物を積載した状態で使用されることも多いピックアップでは、リヤのサスペンションは硬くし、荷台に重量物を多く積んだ状態でも底づきしないようにするのが一般的だ。しかしそうすると、荷台が空の状態ではリヤが跳ねやすくなり、つまり日常生活での快適性が損なわれる。
そこで三菱は今回、リニューアルされて剛性が向上した車体に合わせてサスペンションもリセット。フロントはダブルウィッシュボーン。アッパーアームの取り付け点を高くしたハイマウントタイプとすることで充分なストローク量を確保した。リヤはリーフスプリング式リジッドだが、ダンパーは大径タイプを採用し、乗り心地にも配慮。これまでの走破性と実用性を維持しながらも、日常使いでの快適性を高めるようセッティングを煮詰めてきた。
室内空間についても広く確保されている。後席の乗員がリラックスできるよう後部座席の背もたれの角度は調整されているほか、膝前のスペースは成人男性がゆったりと座れるだけのスペースが確保されている。また、後席用にUSBポート(Type AとC)やサーキュレーターも装備されるなど、家族や気のおけない仲間たちと移動を楽しめるよう配慮されている。
“アウトドア好き”以外もターゲットに
そんなトライトンだが、日本で販売されるのは12年ぶりとなる。
商品企画責任者 チーフプロダクトスペシャリストを務める増田義樹氏は、この度の日本導入はタイミングが良かったことが決め手のひとつであったことを明かした。
「長年、トライトンを担当していますが、ずっと日本でも出したいと考えていました。ただ、色々な条件があります。一時期はディーゼル規制などもありましたし、またピックアップそのものや使い方に対するお客様のニーズの多さなどの条件があったのですが、今回新型にすることとニーズやタイミングが合った。“三菱らしいクルマ”を出すならここじゃないかということで、新型のデビューに合わせて日本導入を決めました」
トライトンは世界約150カ国で年間約20万台を販売している三菱のコアモデルであり、世界戦略車だ。ピックアップトラックというカテゴリーは日本ではあまり馴染みのないものだが、海外では日常やレジャーはもちろん、コマーシャルユースや災害などの非常事態における救援・救命シーンにも用いられるため、需要は高い。
三菱は特にASEAN地域での競争力は高く、荒れた路面でも難なく走れる“働くクルマ”として運用できるトライトンは親和性は高い。
「強いて言えばASEAN、オーストラリアがメインのマーケットになります。ただ、裾野が広い販売で、それ以外の国や地域を合わせると、結構な需要になるんです。それぞれのボリュームは少ないんですけど、たとえば中南米という塊で見ると、なかなかの量になる。ASEANがメインというよりは、世界で広く、しっかりと売っているイメージです」
日本においては、アウトドアでアクティブに使い倒すクルマを求める層がメインのターゲットになる。その一方で増田氏は「そこをベースに拡張していきたい」と話す。
「自分だけの特別感を出したいというライフスタイルをお持ちの方もターゲットになります。ピックアップはカスタマイズしたりして、様々なスタイルで使われているクルマです。一般的に、クルマ作りではターゲットカスタマーを明確に想定して進めるものですが、我々はそこを限定したくない。今回はまず、標準グレードと上級グレードを出しますが、未知のカスタマーターゲットが残っていると思っています。お客さんの声を聞きながら、次のステップを考えていきたいと思います」
発売されるのは2024年の2月15日。現状の日本におけるパイは小さいだろうが、販売計画については次のように明かした。
「2023年度については売り始めからの2カ月間で、まずは1000台を売りたいと考えています。そこでの感触をもって、2024年度の生産と販売計画のボリュームを決めたい。しかし、やっぱり年間数千台はいきたいと思っています」
体験プログラムも展開へ
SUVなども含めれば競合する車種は多数あるだろうが、直接的なライバルとなるのは国産ピックアップトラックの雄、トヨタ・ハイラックスだろう。
ハイラックスは全長×全幅×全高が5340mm×1855mm×1800mm、パワートレインは2.4L直列4気筒ディーゼルに6速ATの組み合わせ。
トライトンは全長×全幅×全高が5320mm×1865mm×1795mmとハイラックスとほぼ同サイズで、パワートレインも2.4L直列4気筒ディーゼル+6速ATとこちらも同じだ。
その一方で、価格では差がついている。ハイラックスは標準グレードの「Z」が税込407万2000円なのに対し、トライトンは標準グレードの「GLS」が税込498万800円と、約90万円の違いがある。
これについて増田氏は「我々が一番、訴求したいのは性能です」と話す。
「今回推している乗り心地の良さ、扱いやすさは本当に自信を持っておすすめするレベルに仕上がっています。ご試乗いただいて、そういったところを実際に感じていただければ、この価格はご理解いただけるか、というかたちでやっていきたいと思っています」
三菱はトライトンの販促に際し、快適性やオフロードにおける走破性などを体験できる試乗プログラムも検討しているという。
2024年は日本上陸を果たした新型ピックアップが日本で存在感を示す年となるか。