コンディション抜群の初代レガシィ・ツーリングワゴンGTはオプションフル装備!? スバルと日本のステーションワゴンを変えた1台

MotorFan.jp編集部は、あるスバルファンのミーティングを取材する機会を得た。そのミーティングはスバル車の世界的コレクターとして界隈で有名な@BOXER_GrA_GC8さんの主催するもので、この時は特に1990年代のスバル車が集まった。そのうちの1台が、BOXERさんが所有する初代レガシィ・ツーリングワゴンGTだ。コンディション抜群、前期型の5速MT、当時のほぼフルオプションという貴重な個体を、"いもっち"こと井元貴幸氏の筆で紹介しよう。
REPOERT:井元貴幸(IMOTO Takayuki) PHOTO:MotorFan.jp

スバルのクルマを激変させたフラッグシップ

初代レガシィは1989年に登場。それまでスバルの主力車種であったレオーネから全面的な刷新により新たなフラッグシップとして君臨したモデルだ。

レガシィデビューの際に常に語られる10万km速度記録挑戦。この記録達成がデビューに華を添え、レガシィの高性能さを名実ともにアピールされた。

レガシィがデビューする前のレオーネは三代目にあたるモデルで、セダンとクーペ、ツーリングワゴン、ライトバンをラインアップ。パワーユニットにはEA82型1.8L水平対向4気筒SOHCのほか、EA71型 1.6L水平対向4気筒OHVエンジンも設定されていた。1.8LモデルにはフルタイムAWDにターボを組み合わせたGTグレードが設定されていたが、SOHCでインタークーラーなしのEAエンジンは、当時の国産車と比較しても一世代前のスペックで苦戦を強いられていた。

レオーネRX4WD。この車両はKITサービスが所有する、当時サファリラリーに出場したグループAカー。

しかし、レガシィのデビューで主力モデルはEJ20エンジンを搭載することでDOHC化。セダンのトップグレードには水冷式のインタークーラー付きターボエンジンを搭載したRSを設定。最高出力は220psを誇り、一気にライバルに差をつけクラストップレベルのスペックを誇るモデルへと君臨した。

トップグレードのRSはセダンのみの設定。デビュー時はこのRSが唯一のターボエンジン搭載車で、ターボ+ATの設定もなかった。

レガシィにはセダンのほかツーリングワゴンをラインアップ。登場時は最上級グレードに2.0L水平対向DOHCエンジンにフルタイムAWDを組み合わせたVZをトップグレードとして設定したが、デビューから約半年後の1989年9月にワゴンにも待望のターボエンジンを搭載したGTグレードを追加。200psとAWDの組み合わせは、当時の2.0Lクラスのスポーツカーと比較しても引けを取らない”スポーツワゴン”という新しいジャンルを開拓。特にスキーブームと相まってゲレンデエクスプレスとして人気を博し、その商用バン離れしたスタイルと共に、レジャーにも使えるスタイリッシュな俊足ワゴンは大ヒットとなった。

レガシィ・ツーリングワゴンGT。200psのハイパワーにAWD、そしてATも設定したことで多くのユーザーの支持を集めた。

世界的コレクターが所有する極上の1台

BOXERさんの所有する1990年式レガシィ・ツーリングワゴンGT。

この初代レガシィツーリングワゴンのオーナーは、熱狂的スバルファンとして知られるBOXERさん。今回紹介する初代レガシィのほか初代インプレッサ、STIコンプリートカー、海外専売のアセントやアウトバックウィルダネス、さらには本物のWRC グループAマシンであるインプレッサや初代レガシィも所有しており、ここにはとても書ききれないほどのスバル車を所有し、コレクションの数は50台をゆうに超える世界レベルのスバリストなのです。

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それらのコレクションはいずれも整備中の物を除き、ほぼすべて車検を通した公道走行可能車両。コンディションも極上の個体ばかりで、BOXERさんの駐車場はSUBARUビジターセンターやSKC(スバル研究実験センター)の資料館でもお目にかかれない貴重なモデルがずらりと並ぶ博物館級のラインアップに驚かされます。所有しているモデルは、圧倒的にインプレッサ系が多く、レガシィはこの初代ツーリングワゴンの他、二代目レガシィグランドワゴン、現行アウトバックウィルダネスと少数派ではあるものの、レアなモデルばかりだ。

当時のWRCチームのサービスカーをイメージして仕上げられている。

初代レガシィは、グループAマシンのメンテナンスでお世話になっているというストリートライフさんで、オールペンされたという車両で、一見するとカタログカラーのインディゴブルーメタリックに見えるが、実は本物のグループAマシンと同じスポーツブルーなのだ。コンセプトはWRCのサービスカー仕様で、本物のWRCマシンを所有するBOXERさんにとっては、初代レガシィというレアモデルに加え、当時のチームを想起させるそのカラーリングに惹かれたそうだ。

一見純正のインディゴブルーに見えるが、見比べるとその違いがよくわかる。サイドシルから内側が元のインディゴブルーだ。
純正ホイールはシルバーに塗装。タイヤは純正サイズ(205/60R15)のダンロップ・ディレッツァDZ102を装着。

後のモデルでは省略された豪華装備もあった? ほぼフルオプション仕様

外見上ではルーフレールも装備されないため、サービスカーのイメージがより強い印象だが、実はこの個体はメーカーオプションのサンルーフが装着されており、初代レガシィはオプションのサンルーフとルーフレールの同時装着ができなかったことからこのような出で立ちとなっている。

オプションのサンルーフ。一段高くなるルーフは二代目レオーネ以来、スバル製ツーリングワゴンの伝統。
オーバーヘッドコンソールのサンルーフスイッチ。開閉の他、チルトもあり。左右はマップランプとそのスイッチ。
サンルーフにはシェードが備わる。
サンルーフを開いたところ。

インテリアはオリジナルの状態を維持しており、純正のmomo製4本スポーク本革巻きステアリングも健在! メーカーオプションはABS、サンルーフ、クルーズコントロールの組み合わせ仕様で、当時としてもかなり豪華な仕様で合ったことがうかがえる。

レガシィ・ツーリングワゴンGTのインテリア。ツーリングワゴンGTの5速MTは貴重。
momo製4本スポーク本革巻きステアリングはRSに装備されたものと同じ。当時の定番純正装着品の1つだ。シフトレバーやサイドブレーキレバーも本革巻き。センターコンソールボックスの蓋もモケット仕上げとなっている。
リヤウインドウのABSステッカー。
エンジンルームの右前端に収まるABSユニット。

元々バブル期に設計されたこともあり、初代レガシィは標準装備品もかなり充実していた。
プッシュオープン式の灰皿や、サンバイザーの照明付きバニティミラー(初代は助手席のみ)は初代以降では四代目(BP/BL型)まで設定が無かった。

助手席にはバニティミラーを装備。
フルオートエアコンは上級グレードの証。
エアコンの操作パネルは開閉式。

ほかにも現行車では当たり前の車速検知式集中ドアロックも装備。レガシィシリーズでは六代目(BS/BN型)まで設定が無かった。トリム類もドアのロア部までしっかりとモケットが貼ってあるほか、ピラートリムもベルベット調仕上げになるなど、歴代レガシィの中でもかなり凝った作りとなっているのが特徴だ。

ドアポケットまでモケットを貼り、ランプも装着。
ドアランプは助手席側はもちろん、リヤドアにも装備。
リヤシート。シートのコンディションも抜群。
フロントシート。RSよりもサポートは浅いが、調整機構は充実。
ストラットタワーの張り出しこそ大きいが、スクエアな容積とフラットフロアの積載性は良好。
巻き上げ機構が壊れて、収納できなくなったり張りが弱くなることもある純正トノカバーも健在。

ワゴンなのに200psのパワーに車重1400kg程度の走りは痛快!

走りの面ではレオーネ時代から培われた実績のあるAWD性能に加え、DOHCインタークーラーターボを組み合わせたパワーユニットが現代のクルマにも負けない胸すく走りにワクワクしてしまう。

GTのエンジンはATとのマッチングのため、カタログ値が220ps→200ps、27.5kgm→26.5kgmに変更されている。ツーリングワゴンGTはMTでもこのスペックとなる。インタークーラーが水冷式なのが後のEJ20ターボとの違い。

それは1400kg程度しかない軽量なボディが、愉しさに拍車をかけている。衝突安全基準が厳しくなる昨今では、どうしても車両重量が重くなってしまう傾向があるが、初代レガシィは、この時代のクルマならではの軽快感を味わえる。

ピラーを内側に収めてブラックアウトしたサッシュレスドアと大きなリヤクォーターウインドウによる広いグラスエリアもツーリングワゴンの特徴。プレスラインの少ないサイドビューや今流行りのフローティングルーフデザインがクリーンでスマートな印象。
基本的に純正が維持されているが、ヘッドライトはHID化。
フロントアンダーガードを装着していた。
ペダルにはスパルコのカバーを装着。

抜群のコンディションを保つBOXERさんの初代レガシィ。グループAマシンと共に、いつまでも輝き続けるその魅力を、現代のスバリストに伝え続けて欲しい。

走行距離7.7万kmで屋内保管という極上コンディション。もちろん自走可能な状態で維持される。

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著者プロフィール

井元 貴幸 近影

井元 貴幸

母親いわくママと発した次の言葉はパパではなくブーブだったという生まれながらのクルマ好き。中学生の時…