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NATS(日本自動車大学校)の『東京オートサロン』への出展車はオリジナリティ溢れるド派手なカスタムカーの印象が強い。実際、『東京オートサロン』に出展するようになってから、同イベントのカスタムカーコンテストではグランプリを1回、部門賞では合計19回の最優秀層・優秀賞を獲得している。
“カスタムカーの祭典”である同イベントでこういったカスタムカーが注目されるのは当然だが、NATSの展示はそれだけにあらず。特に、袖ヶ浦が展示するレストア車はまるで新車のような仕上がりで同校とその生徒の技術力の高さを窺わせる。
昨年はスバル・アルシオーネVSターボのレストア車が展示されていたが、今年はどんなクルマがレストアされたのだろうか?
オートサロン出展車両では最古級のマツダ・ルーチェ
今回展示されたレストア車はマツダ・ルーチェ(SUA型)。昭和43年(1968年)式の新車ワンオーナーモノだそうだ。装着されたままのナンバープレートがその証拠。NATSと懇意の株式会社吉井自動車工場の会長から譲り受けた車両だそうだ。
来歴を尋ねたところ、もともと吉井会長はマツダ(東洋工業)で働いていて、独立開業する際にその記念として購入したそうだ。その後、NATSが譲り受けて大切に保管していたが、流石に経年劣化が進んできたことから今回のレストアに至ったという。
これまで多くのクルマをレストアしてきたNATSだが、1968年式のルーチェはその中でも最も古いクルマになったそうだ。それだけに、これまで手がけてきたクルマとレストア作業に違いはあったのだろうか?
レストアは欠品パーツと錆との戦い
吉井会長所有時から程度は良く、NATSでもコンディションは維持されてきたが、そこは流石に1960年代のクルマということもありボディまわりの劣化や錆が進んでいた。特に錆は水が抜けにくいところで大きく進行しており、ドアまわりには穴が空いてしまっているところもあったそうだ。また、その錆穴を一度アルミ板で塞いだ形跡もあり、そこから電蝕によりさらに錆が進行している部分もあったという。
板金では錆びた部分を一度切り取り、新たに鉄板を溶接して穴を塞いでいる。また、劣化した黄土色のボディカラーは、純正風のカリビアンブルーに塗装し直された。
塗装に際しては窓なども全部外してボディだけの状態にするのだが、窓のモール類は当然純正部品が手に入るわけもなく、脱着作業では破損しないようにかなり気を使ったそうだ。
また、当時の雰囲気を出すべくタイヤはホワイトリボンタイヤを装着。サイズもなるべく純正サイズに近いものを選びたかったが、条件に合うものがなかなか見つからず苦労したそうだ。
また、ホイールキャップももちろん新車装着のモノで、しっかりと磨き上げている。
ちなみに、このルーチェのグレードはエンブレムを鑑みると「デラックス」で、価格は当時で69万5000円。同クラスではトヨタ・コロナ(T40系)のデラックスグレードが58万4000円〜60万9000円だった。69万円ならワンクラス上のコロナ・マークII(T60系)の1.6Lが買える価格だ。
インテリアの雰囲気は当時のまま!
逆に言えば外装以外はほとんど手を入れる必要はないほど程度が良く、まさに吉井会長が乗っていた当時の状態が保たれている。シートカバーはもちろん、ダッシュボードのスプリングタイプのドリンクホルダーもあえて残している。
何より驚きなのが、リヤドアには新車から付けたままのビニールがそのまま残っていること。インテリアの保護ビニール自体が今では稀だし、当時にしてもあのビニールを剥がすのが新車購入時の儀式・楽しみでもあった。それが綺麗なまま残っているのは奇跡と言ってもいいだろう。
2024年はいよいよ車検を取得して公道走行へ
オートサロンへの出展を目指してまずは外装からリフレッシュを重ねてきたため、まだ車検を通すまでには至っていない。とは言え、NATSはオートサロンに展示した車両はカスタムカーでも車検を通して公道走行するまでがカリキュラム。昨年のNTASアルファード・スーパーデューリーも2023年春の「モーターファンフェスタ」に実走で登場している。
車検を通すにあたっては、現在装着されている一桁のナンバープレートを継承する予定だそうだ。今や二桁すら少なくなってきたナンバープレートだが、一桁に一文字のナンバープレートはさらに貴重な存在だ。
オートサロン当日は元オーナーの吉井会長もNATSブースを訪れ、ほぼ当時のままの姿で美しく蘇ったかつての愛車の姿に感涙したという。さらに、車検を取得し公道を走る姿を見ればその感動も一入のものとなるだろう。