オールシーズンタイヤってどうなの? 高速道路や濡れた路面で確かめたグッドイヤー「ベクター4シーズンズ・ジェンスリー」の実力とは!?【前編】

オールシーズンタイヤ……普通のタイヤとして使えてちょっとした雪ならそのまま走れ、冬用タイヤ(スタッドレス)への履き替えをしなくて済むことから経済性や利便性からこの数年注目度が高まりつつある。しかし一方で、ドライ路面、ウェット路面、雪道……いずれも中途半端なのではないか?という疑問を抱かずにもいられない。そこで、オールシーズンタイヤの老舗・グッドイヤーの最新モデルである「VECTOR 4SEASONS GEN-3」で実際にさまざまな路面を走りその実力を確かめることになった。タイヤに一過言あり!の山田弘樹がレポートします。前編では市街地や高速道路、そして雨天時の濡れた路面をチェック!
REPORT:山田弘樹(YAMADA Kouki)/PHOTO:MotorFan.jp

グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「VECTOR 4SEASONS GEN-3」(ベクター4シーズンズ・ジェンスリー)の試乗会が開催された。2日間かけてそのウインター性能を評価するという自由度の高いメニューだったため、暖冬に雪を求めて長野県南佐久郡にある八千穂レイク方面を目指した。

雪道を求めて一路北へ向かう。大泉から関越道に乗り上信越方面を目指す。雨が降ったり止んだりで路面はセミウェットだった。

グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「VECTOR 4SEASONS」とは?

ベクター4シーズンズのラインナップで言うと、2016年に先んじて発売された「HYBRID(ハイブリッド)」が有名だ。その棲み分けとしてはハイブリッドが日本市場向けに13インチから18インチまで対応しているのに対し、ジェンスリーは15インチから20インチまで。さらに今回試した「ベクター4シーズンズ・ジェンスリーSUV」は17インチから20インチまでの対応となる。

VECTOR 4SEASONS HYBRID

キャラクター的にもハイブリッドがスタンダードな性能を求めたタイヤであるのに対し、ジェンスリーはプレミアムラインと位置づけられている。

VECTOR 4SEASONS GEN-3

試乗車としてアテンドされたのは、ホンダZRーV e:HEVだった。ZRーVにはの4WDのラインナップもあったはずだから、グッドイヤーもベクター4シーズンズ・ジェンスリーには、かなりの自信を持っているということなのだろう。

試乗車として用意されたベクター4シーズンズ・ジェンスリーSUV装着のホンダZR-V e:HEV(FF)。

雪を求めて北へ……市街地と高速道路での感触は?

日本グッドイヤーのある六本木を出発した時のは夕刻で、小雨降る曇天模様だった。ここ数日は暖冬が続いていたが、当日は冬の寒さが取り戻されていた。
走り始めて感心したのは、その乗り味がとてもよいことだった。具体的にはまず静かで、タウンスピードだとロードノイズが気にならない。モーター主体の走行となるe:HEVのシームレスライドとは、非常に相性がよいタイヤだ。

六本木から高速道路に乗るまでの間でタウンスピードでの乗り心地やロードノイズを確かめる。小雨が降り、路面はウェット。

そして夏タイヤだと言われても頷けるほど、タイヤ全体の剛性感が高い。
それはガッチリと角が立ったような硬さではなく、むっちり中身が詰まったかのようなシッカリ感。サイズは純正と同じ225/55R18で、ロードインデックス/速度記号も同じく102V(負荷能力850kg/最高速度240km/h)だ。

試乗は市街地から首都高速へ。

この印象は、高速道路に入っても変わらなかった。
技術的にはトレッド下部の「カバー層」とショルダーブロックの剛性を高めることで優れたドライハンドリング性能を得ているとのことだが、筆者がよいと感じたのは直進性の高さだった。

直進性に優れレーンチェンジ時の応答性も素直だ。

ベクター4シーズンズ・ジェンスリーSUVもトレッド中央に大型サイプを配置しているが、「ハイブリッド」のようなムービングがなく、直進時の操舵保持感にゆらぎがない。レーンチェンジに対しても応答性が素直で、ブレーキング時も制動Gをリニアに立ち上げてくれる。ここには微細グルーブの中に組み込まれたブレードが、ブロック間をお互いに支え合う「3Dトレッドテクノロジー」が効いている。そしてこのトレッド剛性が偏摩耗を防ぐことも含めて、ハイブリッドに対して30%以上ライフ性能を向上させているという。

タイヤサイズは225/55R18で荷重と速度の記号は102V。

静粛性も同じく良好だ。小雨の影響でパターンノイズも若干抑えられている感じはあったが、高速巡航で目立ってくる振動を含んだノイズは本当によく抑え込まれていた。ちなみにハイブリッドとの比較では、パターンノイズは36%、ロードノイズは31%低減されている。

・パターンノイズ/ロードノイズ テスト条件
テスト車:国産1.8Lセダン(FF)
タイヤサイズ:195/65R15 95V XL
空気圧(kPa):F250/R240
路面:アスファルト路面
試験速度:60km/h
※日本グッドイヤーの資料より
静粛性能に関する日本グッドイヤーの資料より。

本格的な雨模様……ウェット性能を濡れた高速道路でチェック

ウェット性能は、標準的だと思う。
折しも天候は長野に近づくにつれ雨脚を強めた。小雨から大雨に変わるめまぐるしいコンディションに翻弄されたが、ここでもジェンスリーはそつないグリップを発揮してくれた。

都心を脱出する時点では雨は小雨程度。路面もウェットとはいえ水たまりなどはできていない。

優れた夏タイヤに比べれば、抜群のウェットグリップとは言いがたい。しかし手応え感は、きちんと残している。そしてスタッドレスタイヤと比較すれば、段違いで安心感が高い。
そこにはゴム(新オールウェザーシリカコンパウンド)の路面に対する追従性や、剛性感のバランスだけでなく、新型Vシェイプのトレッドパターンも効いているはずだ。Vシェイプは雪だけでなく、水膜も切り裂ける。

夕方スタートだったことから、関越道から上信越道に入った頃にはすっかり暗くなっていた。さらに山間部に入るにつれ雨足が強くなる。

先端を細めて、アウト側に行くに従い溝を広げるパターン形状は、水の排出にも貢献するという。またセンター部分を浅溝化することで、トレッド剛性を高めることができるし、パターンノイズも抑えられる。
そして摩耗が進んでも「アクアコントロールテクノロジー」が途中から溝幅を広げることで、排水性を確保する構造となっている。

雪がなくても冬場にオールシーズンタイヤはアリ?

非降雪地帯のユーザーにとって、雪は驚異だ。年に何度降るかわからない降雪に不安を感じて、冬期にはスタッドレスに履き替える。しかし雪上走行に比べて、雨天の走行頻度は圧倒的に多い。こうした環境下だとオールシーズンタイヤを選ぶのは、理にかなっていると思う。たとえ雪が降らずとも低温化での発動性は夏タイヤよりも早いから、ウインタータイヤとしても選ぶ価値はある。

雪にこそなっていないが、夜間の雨天走行は緊張を強いられる。雪でなくとも冬にオールシーズンタイヤは”アリ”だ。

本音を言えばもう少しウェット性能に圧倒的な安心感があればよかったが、そこは高速安定性とのバランスだろう。タイヤが柔らかくなればそれだけ、剛性は低くなる。冬場に履くタイヤとしての性能は、かなりいい。ということで後編では、その雪上性能に迫ってみたい。

気になる雪道の性能は?後編へ続く。

オールシーズンタイヤってどうなの? 雪・凍結・シャーベット路面はグッドイヤー「ベクター4シーズンズ・ジェンスリー」で走れたのか?【後編】

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著者プロフィール

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山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…