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ホンダのスポーツモデル“Sシリーズ”がS2000で29年ぶりに復活
1999年(平成11)年4月15日、ホンダのスポーツモデルの象徴である“S”を冠するオープンスポーツ「S2000」がデビュー。ホンダの創業50周年を記念するモデルで、S800(1966年~1970年)以来、29年ぶりにSシリーズが復活したのだ。
スポーツモデルSシリーズの歴史
1962年、全日本自動車ショー(現在の東京モーターショー)で、ホンダ初の乗用車「S360」と「S500」の2台のオープンスポーツが公開された。初の乗用車としてスポーツカーが選ばれたのは、創業者・本田宗一郎氏の強い意向とされている。しかし、S360は市販化されず、ホンダ初の乗用車はS500となり、ここからSシリーズが始まった。
●S500(1963年~1964年)
FRのオープンスポーツS500は、2輪のエンジンをハイチューンした最高出力44ps/8000rpmの500cc直4 DOHCエンジンを搭載。高回転型エンジンのスポーツカーらしい加速性能が魅力だった。
●S600(1964年~1966年)
わずか半年足らずで排気量を600ccに拡大しデビューしたS600は、スタイリングはほとんど変わらず、最高出力が57psに向上。最高速度は145km/hを誇り、1964年のニュルブルクリンクで優勝を飾った。
●S800(1966年~1970年)
排気量をさらに800ccに拡大したS800は、最高出力が70psまで向上。最高速は160km/hに達し、さらに高性能化が進んだ。
そして、S800の生産終了から29年を経て1999年に登場したのがS2000だ。
ホンダのスポーツスピリットを継承したリアルスポーツS2000
1998年9月、ホンダは会社創立50周年を祝う記念式典で、“Sシリーズ”を継承する新世代のFRオープンスポーツカーを発表。これを、S2000とネーミングし、翌年1999年のこの日デビューした。
S2000は、スポーツカーらしい2シーターのワイド&ローフォルムに、ボタン操作で開閉する電動ソフトトップを装備。339.1万円で復活したS2000は、その俊敏な走りで、1999年から2009年の生産終了までに国内で約2万台、全世界で11万台を超える販売を記録し、多くのスポーツカーファンを魅了した。
以下に、S2000を特徴づける3つの技術を紹介する。
●操る喜びを具現化する50:50の理想的な前後重量配分
リアルスポーツを目指したS2000は、FRレイアウトのエンジンを前輪軸後方に配置したフロントミッドシップで、車体前後の重量配分50:50を実現。ボディについては、X字型の新構造“ハイXボーンフレーム”を採用、クローズドボディと同レベルの高剛性と衝突安全性を確保。これにより、優れたハンドリング性能とレスポンスに優れたスポーツカーらしい走りを実現した。
●NAながらVTECエンジンの進化で250psを発生
エンジンは、2.0L直4 DOHC VTEC(F20C型)で、圧縮比を11.7まで高め、ローラロッカーアームなどの採用でフリクションを低減。さらに、精度の高いPGM-FIにより、最高出力250ps/8300rpm、最大トルク22.2kgm/7500rpmを発生。組み合わせるトランスミッションは、クロスレシオ化とショートストローク化を進めた新開発の6速MTで、スポーツカーらしいダイレクト感と軽快なシフトチェンジを実現した。
●高速安定性を高めた空力性能と僅か6秒で開閉できる電動ソフトトップ
美しいスタイリングと優れた空力性能を融合させ、スポーツカーらしい安定した高速安定性を確保し、さらにオープンスポーツをより快適に楽しむために電動ソフトトップを採用。電動ソフトトップは、構造を徹底的にシンプルにすることで、クラストップの軽量化と風切り音を低減し、スイッチによって僅か6秒程度で開閉する爽快なフィーリングを実現した。
S2000生産終了後の2015年に、軽の2人乗りMRオープンスポーツ「S660」が発売され、納車待ちになるほどの人気を獲得したが、残念ながら2022年3月に生産を終了した。スポーツカー、特にオープンモデルは、販売数は見込めないが、本来のクルマの魅力である走る楽しさを追求するモデルとして今後も逆風が続くが、熱望するファンのためにも存続して欲しいものだ。
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