『ガールズ&パンツァー』をモチーフにしたワンオフ戦車が大洗の街に並んだ!!『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』を賑わせた「日照戦車」とは!?

2024年3月17日(日)、茨城県大洗町にて『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』が開催された。このイベントは大洗町の町おこしのお祭りであるとともに、同地を舞台とするアニメ『ガールズ&パンツァー』のファンイベントとしての性格を持つ。前回はメイン会場となる大洗マリンタワー前芝生広場でのステージイベントや大洗第4埠頭の『ガルパンミニミニホビーショー』、来場者の痛車や痛単車を中心にリポートしたが、今回は歩行者天国の目玉となる「日照戦車を探せ!」で展示されていた日照戦車を紹介する。
REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

痛車に戦車も!? 『ガールズ&パンツァー』の舞台で開催された『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』をモーターファン的視点でチェックしてみた!

2024年3月17日(日)、茨城県大洗町にて『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』が開催された。このイベントは大洗町の町おこしのお祭りであるとともに、同地を舞台とするアニメ『ガールズ&パンツァー』のファンイベントとしての性格を持つ。今回は2019年から5年ぶりにガルパン関連のイベントが開催され、声優トークショー、ガルパンクイズ大会、ガルパンミニミニホビーショー、歩行者天国での1/1戦車模型の展示など盛り沢山の内容になった。さらに大洗町営駐車場には来場者が乗り付けた痛車や痛単車がずらりと並び、お祭りに花を添えていた。 REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』の歩行者天国で展示された「日照戦車」

『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』では、大洗町の目抜き通りである髭釜商店街から永町商店街、松商店街にかけての道路は歩行者天国となり、各商店ではこの日のためにご当地グルメや限定のガルパングッズが販売されたほか、ご当地グルメの出店に加えて、ミニステージライブや茨城交通による「らくがきバス」などの催し物が行われた。そんな歩行者天国のメインイベントとなったのが、商店街の中に隠された1/1戦車模型を探し歩くラリーイベントの「日照戦車を探せ!」だった。

日照戦車の新作・継続高校仕様のIII号突撃砲G型。実車の3/4ほどのスケールで製作されているが、それでも充分にサイズが大きい。

日照戦車とは、地元企業の日照プラント工業が製作したほぼ1/1サイズのレプリカ戦車のことだ。同社の本業は原子力関連の設備を製造する企業なのだが、2013年秋の『あんこう祭り』のため、あんこうチームのIV号戦車D型を製作したのをきっかけに、これまでにさまざまなレプリカ戦車を製作してきた。

『プラモデルを1/1で作る会』が製作したヴィーゼル空挺戦闘車。この車両に関しては次回詳しく紹介する。

『海楽フェスタ2024』で展示された日照戦車は、III号突撃砲G型、ルノー FT-17、Mk.IV戦車(雄型)、そしてCV33の4台。これ以外にも『プラモデルを1/1で作る会』や『大洗の黒騎士』、『こたちゃん⋈BT42戦車作ってる人』などのファン有志が作った戦車も展示されていた(こちらは次回紹介するる予定)。

海楽フェスタ2024で初公開されたIII号突撃砲G型

継続高校のIII号突撃砲G型はフィンランド陸軍が運用したIII号突撃砲G型をモチーフにしており、車体側面の増加装甲兼スタック時の脱出用の白樺の丸太や車体後部の大型雑具箱などがよく再現されている。

展示された日照戦車の中で、今回初お披露目となったのが継続高校仕様のIII号突撃砲G型だ。実車と比べるとスケールは3/4ほどとやや小さく、車体に比べて履帯の幅もやや細い。だが、今回展示された戦車の中では最大級のサイズということで迫力がある。

車体の前面に備わるノテックライト(防空灯)は本物だ。明らかにオーバースケールだが、車両にリアリティを与えるアイテムだ。

履帯は動かないが、車体の中にはルーフを切った軽トラが入っており、底面に隠された車輪によって自走が可能となっている(もちろん、公道走行は不可)。古くからの戦争映画ファンには1977年に公開された『遠すぎた橋』の撮影に使用されたハリボテM4シャーマンと同じ作りになっている、と言えば理解が早いだろう。

実車は48口径75mm戦車砲に比べると日照戦車の主砲サイズは小さいが、マズルブレーキの再現度は高い。劇中に登場するIII号突撃砲G型と同じく、防盾は後期生産型となるザウコプ(豚の頭)タイプとなる。戦闘室上面もコンクリート製の増加装甲風の表現がされている。

よく見ればディティールは実車とは異なるところもあるのだが、何よりもこのサイズの戦車を手作りしたという事実そのものが驚きであるし、またガルパンファンに喜んでもらおうとの製作者の熱い思いがひしひしと伝わってくる。

車体下部のボルト留め増加装甲や車長用キューポラのペリスコープが再現されていないなど、ディティールが甘い部分が若干見られるが、このサイズでIII号突撃砲を製作したことには頭が下がる思いだ。日照戦車のことだから、おそらくはこれから細部を煮詰めて完成度を高めて行くことだろう。

展示車両を詳細に見て行くと完成度の高い部分も多く、砲身に備わるマズルブレーキの形状は実写の特徴をよく再現しており本当に素晴らしいし、車体側面に備わるスタイルフォームを加工した白樺の丸太は、詳しく話を聞かなければ本物と見紛うばかりの出来栄えとなっている。

履帯を含む足回りはダミーで、車体内部にはルーフを切った軽トラが入っており、隠されたタイヤによって移動が可能。軌動輪は実写の雰囲気がよく出ている。
III号突撃砲の戦闘室上面。車長用キューポラから内部を覗くと軽トラの運転席が見えた。

シャーマングレーの上から塗られたと思しき冬季迷彩はかなりリアルで、戦車らしい重量感の演出に一役買っている。日照戦車の中では最新作にして初公開の車両ということもあり、III号突撃砲G型のまわりは終日人だかりができていた。

継続戦争でフィンランド陸軍が運用したIII号突撃砲G型。写真はフィンランド陸軍が導入した車両の中でも初期のものらしく、防盾はザウコプではなく、車体側面の丸太もない。日照戦車のIII号突撃砲のモチーフとなった車両である。突撃砲とは第二次世界大戦中にドイツ軍が運用した自走砲のひとつで、戦車のような旋回砲塔を持たず、固定戦闘室に比較的大きなサイズの主砲を搭載していた。もともとは歩兵支援用の兵器であったが、大戦中盤以降は対戦車戦闘に活躍するようになる。III号突撃砲はIII号戦車をベースに開発された突撃砲で、ドイツが戦時中に開発した戦闘車両の中でももっとも多く生産された。なお、『ガルパン』の作中では大洗女子学園・カバさんチームがF型を使用するほか、継続高校がG型を運用している。

履帯を駆動させ自走が可能な完成度の高いレプリカ戦車・ルノーFT-17

『海楽フェスタ2024』で展示されたBC自由学園仕様のFT-17。実写と同じサイズで製作されており、再現度も高く、ぱっと見には本物にしか見えない。

3号突撃砲G型の展示場所から歩行者天国を北東に進むと、次に見えてきたのがBC自由学園仕様のFT-17だ。世界に先駆けて回転砲塔を備えた近代的戦車として第一次世界大戦期に誕生した同車は、全長5.0m×全幅1.74m×全高2.14mと戦車の中では小さく、軽戦車に分類されている。

車体後部のソリや側面の雑具箱などの装備品も素晴らしい出来栄え。雑具箱の南京錠はおそらくは当時の本物。

今回展示された日照戦車のFT-17は、そんな実車と同じサイズで忠実に再現している。その完成度は非常に高く、パッと見には本物にしか見えないほどだ。

車体後部の起動輪を介して履帯を駆動させることで自走する。車体前面のハッチが閉じられていて運転席は見ることができないが、実写と同じレイアウトの2本の操作レバーを動かすことで操縦するそうだ。

この戦車の凄いところは、先ほど見たIII号突撃砲G型とは異なり、履帯が稼働して動くところにある。話を聞くと、履帯1枚1枚をプレス加工で製作し、車体後部の機動輪で駆動させるという。サスペンションは自動車用やバイク用のコイル式スプリングやリーフスプリングを流用しており、その構造は本物に近いという。

砲塔の完成度も文句のつけようがない。FT-17の車長用キューポラには背が高いものと低いものが存在するが、BC自由学園の車両は後者のものとなるので、日照戦車でもこちらを再現している。キューポラのハッチは鍋を流用しているらしいが違和感は全くない。

エンジンはヤンマー製の900ccのものが搭載されているとのことで、おそらくはトラクター用かコンバイン用のものを使用しているのだろう。

誘導輪やコイルバネなどの足廻りは実写に比べてやや華奢な印象を受けるが、形状そのものは実写に忠実。
ボギー式サスペンション(レプリカはリーフスプリングとコイルバネを組み合わせたサスペンション)を収めた足回りの装甲板には日照戦車のオリジナルプレートが備わる。本物はルノーの銘板となるが、字体やデザインはオリジナル風だ。

実車のルノー製4.5L直4ガソリンエンジンに比べれば排気量はずっと小さいが、車重は1tほどと実車の1/6以下と軽く、イベント展示のために動かす分には過不足がないそうだ。

アメリカ陸軍が運用するFT-17。砲塔を備えた近代的戦車の元祖となった同車は、開発国のフランス以外にも日本を含む世界各国に輸出された。第一次大戦後期に初陣を飾り、旧式化しつつも一部の車両は第二次世界大戦後期まで運用が続けられた。

菱形戦車の特徴をよく捉えているMk.IV戦車

商店街の月極駐車場に展示されていた大洗女子学園・サメさんチーム仕様のMk.IV戦車。実車は8人乗りの大型戦車ということで、日照戦車は3/4サイズで再現している。

商店街をそのまま歩くと月極駐車場の一角にサメさんチーム仕様のMk.IV戦車が見えて来た。世界初の戦車となったMk.Iの改良型として誕生したMk.IVには、オチキス製23口径6ポンド(57mm)砲を2門搭載した雄型と、ルイス製7.7mm機関銃を3丁搭載した雌型が存在するが、劇中に登場するのは前者の方で、日照戦車もこちらを再現していた。

Mk.IV戦車も車体内部に軽トラが入っており、車体下部に隠された車輪で自走が可能。

スケールは3/4ほどと実車に比べてやや小さいが、製作に当たってはイギリスのボービントン博物館で実車を取材し、設計図を入手して製作したとのことで、形状は菱形戦車の特徴をよく捉えており、ディティールもかなりリアルに作られている。

Mk.IV戦車のリヤビュー。実車の再現度はかなり高い。

内部にはIII号突撃砲G型と同じく軽トラが入っており、車体に隠された車輪で走行が可能とのことだ。移動のため左右の主砲は取り外しができ、消火器を利用した空砲を放つこともでき、2019年の大洗町『八朔祭り』では山車として参加し、空砲を放っては来場者を歓声と拍手を浴びていた。

移動のため車体左右のスポンソンに装備された2門の主砲は取り外すことができる。
世界初の戦車となったMk.Iの改良型として誕生したMk.IV戦車は、第一次世界大戦の後半に登場し、1918年4月にはドイツ軍のA7V戦車と史上初の戦車戦を経験している。武装の違いによって雄型と雌型があるのはMk.Iと同じだが、移動時に左右の主砲が障害物に引っかかるトラブルが多発したことから搭載される6ポンド砲は40口径から23口径に短縮されている。なお、サメさんチームのMk.IV戦車は改造が施されており、5人での運用が可能になっている。

“イタリア先生”こと吉川和篤氏が資料協力
2014年の初登場以来、着々と進化を重ねるCV33

商店の車庫にさりげなく展示されていたCV33。『ガルパン』の監修でお馴染みの”イタリア先生”こと吉川和篤氏が資料提供していることもあって完成度はかなり高い。

今回展示された日照戦車のトリを飾るのはアンツィオ高校仕様のCV33だ。この車両が初めてお披露目されたのは2014年のことで、当初は動かない展示用として製作されていたが、その後に足回りを大幅に改良し、脱穀機用のエンジンを搭載して履帯を駆動させての自走が可能になった。

CV33のリヤビュー。マフラーの形状や装備品も実車の通り。ジャッキ(背面左の黒い棒)はどうやらダミーのようだ。

製作に当たっては『ガルパン』の監修でお馴染みのイタリア先生こと吉川和篤さんが資料を提供。詳細な車体図面に加えて、車体寸法などの情報が明らかになったことから、実車にかなり忠実なレプリカとして製作されている。

主砲の連装8mmフィアットM14/35機関銃もよくできている。
CV33の足廻り。当初履帯は稼働しなかったが、その後の改良で可動式に。履帯は1枚1枚手作りしている。
CV33の操縦席。2014年の完成時は自走できない展示用として作られたが、その後の改良で足回りを作り直し、ヤンマー製の脱穀機用エンジンを搭載したことにより走行可能となった。なお、小柄な女の子でも3人乗るとかなり狭そうだ。

CV33は軽自動車よりも小さな軽戦車ということもあり、兵器にあるまじき可愛らしい姿と相まって日照戦車の中でも人気が高く、イベントともなるとコスプレイヤーの女の子がこの戦車と一緒に記念撮影をすることが多いとか。今回も展示された日照戦車の中では女性人気が高かったようだ。

英軍が運用するカーデンロイド豆戦車を参考にイタリアが開発。1933年に採用されたのがCV33軽戦車だ。早くから自動車工業が発達していたイタリアであったが、国力に乏しく大規模な量産工場も数が少なかったことから、安価で生産性に優れたCV33は戦力を整備するのに都合用の良い軽戦車であった。第二次世界大戦においてはイタリア陸軍が保有する戦車のじつに75%がCV33であったことから、実質的にイタリア軍における機甲戦力の主力となった。

海楽フェスタ2024・日照戦車・フォトギャラリー

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…