トヨタ「イスト」、米重視で3ナンバー化の2代目は30万円超も価格上昇、日本人気ダダ下がりで販売終了【今日は何の日?4月29日】

2代目イスト
2007年にデビューした2代目イスト
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日4月29日は、2002年に誕生したトヨタの人気コンパクトカー「イスト」が、発売以来14年目で販売を終えた日だ。初代はSUV風の個性的なフォルムで大人気を博したが、3ナンバー化した2代目で人気は右肩下がりになったことで、ヴィッツに統合されたのだ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)

初代イストは大ヒット、2代目で人気が下降して販売を終了

2016年(平成28)年の4月29日、トヨタの「イスト(ist)」が販売を終了した。2002年にデビューした初代イストは、SUVテイストのハッチバックコンパクトカーとして大ヒット。ところが、2007年に登場した2代目は3ナンバー化により日本では中途半端な位置づけとなり、人気が下降して販売を終えたのだ。

2代目イスト
2007年にデビューした2代目「イスト」。車幅を広げ3ナンバーボディに

SUVテイストを加味したコンパクトカーとして大ヒットした初代イスト

初代「ヴィッツ」
コンパクトカーの代名詞となった1999年にデビューした初代「ヴィッツ」

初代イストは、2002年に「ヴィッツ」のプラットフォームをベースに、ヴィッツよりひと回り大きいクロスオーバーSUV風ハッチバックとして誕生。イストは、大ヒット中のヴィッツよりワンランク上のコンパクトカーを目指した。
ボディに合わせて張り出したホイールアーチと大径タイヤがワイルドさを演出し、パワートレインはVVT-i(可変バルブ機構)を採用した1.3L&1.5L直4 DOHCエンンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFとフルタイム4WDが用意され、さらに進化版の衝突安全ボディGOAや歩行者障害軽減ボディなどを採用し、環境性能と安全性能を上手くバランスさせた。

初代「イスト」
2002年に誕生した初代「イスト」。「ヴィッツ」よりやや大きいコンパクトカーとして大ヒット

SUVテイストあふれる個性的なフォルムと広い室内空間、充実した装備で、車両価格は118万~165万円と割安だったので、発売1ヵ月で約4万2000台の受注を獲得する大ヒットを記録した。

●ボディを拡大し3ナンバー化した2代目は人気下降

人気のイストは、2007年に初のモデルチェンジで2代目に移行。初代イストは国内専用だったが、途中から海外でも販売されるようになり、2代目は当初から、特に北米市場を意識し開発された。

2代目イスト
2007年にデビューした2代目イスト

スタイリングはダイナミックなスカルプチャーデザインとなり、全長は同じだが全幅が1695mmから1725mmに拡大し、3ナンバーサイズとなったことが最大の特徴。北米では「サイオンxD」、欧州では「アーバンクルーザー」の車名で販売され世界戦略車となった。
エンジンも、ボディの拡大に合わせ1.3L(87ps)/1.5L(109ps)から1.5L/1.8L(132ps)直4 DOHCエンンジンに変更。1.5LにはCVT、1.8Lには北米を意識し4速ATが組み合わされた。駆動方式はFFをベースに、SUVテイストを意識して1.5Lには4WDも用意された。

3ナンバー化にともない車両価格は165.9万~199.5万円と、初代に対して30万円超上昇し、2代目の国内での人気は失速。結局、2代目イストはモデルチェンジもしないまま2016年のこの日、ヴィッツに統合される形で販売を終え、14年間の歴史に幕を下ろしたのだ。

●北米重視でボディの拡大が日本では裏目に

2代目が日本で評価されなかった理由は、米国を意識してボディが大きくなり、3ナンバー化されたことに尽きると思われる。
日本では、3ナンバー車は、大きくて高級車というイメージがある。コンパクトカーでデビューしたのに3ナンバーサイズになり、価格も大きく上昇し、しかも排気量が1.8Lであれば税制的にも不利になる。これらのことが、日本のユーザーには許容できなかったはず。

トヨタ・イスト
2012年にマイナーチェンジし登場した最後の「イスト」

さらに、当初の狙いであったコンパクトカーとSUVの中間的なスタイルも、ボディが大きくなったことで中途半端な位置づけとなってしまい、人気を落とした要因ではないだろうか。
グローバル基準としては妥当なボディ拡大であっても、日本市場ではやや大きすぎてターゲットにズレが生じ、人気が獲得できないということはよくあること。2代目イストはその典型で、グローバル化が日本市場では裏目となったと思われる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…