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クルマ業界も災害時の防災拠点(ハブ)として活躍する車両に着目!
2024年元旦に石川県能登地方で発生した大地震は、新年の祝賀気分から一転し、日本中を重苦しい雰囲気に包み込んだ。ご存知のとおり、日本は遥か昔から大地震が多発している地震大国。2011年に発生した東日本大震災や2016年に発生した熊本地震は記憶に新しいが、最近は地球温暖化の影響からか大型台風やゲリラ豪雨も多発していて、地震のみならず各地で大きな災害が発生している。
このような災害が発生すると、さまざまな要因で自治体や行政でも適切な対応ができないことがあり、その都度、被災者の保護や復興支援の在り方に課題を残しているのは確かだ。
そんな状況を受けて、クルマ業界でも災害時に防災拠点(ハブ)として活躍する車両を提供しようという気運が高まっており、年明けに開催された東京オートサロン2024やジャパンキャンピングカーショー2024には、さまざまな「災害対応車両」が出展されていた。
バンコンやトレーラーハウスは「災害対応車両」に最適!
本来、バンコンバージョン(通称バンコン)やトレーラーハウスは、アウトドアやキャンプなどレジャー用途として造られているので、広い室内スペースに加え、ベッド、キッチン、トイレなどを装備していること多い。この特徴を生かして、災害時に役立つ装備を少し付け加えると、比較的簡単に「災害対応車両」となることから、この分野に着目する自動車メーカーやカスタムビルダーが増えている。
とはいえ、特定の場所で住民の避難場所などとして活用するのではなく、必要に応じて移動できるメリットを生かして、主に防災拠点(ハブ)としての役割を目指している。ここでは、そのようなコンセプトから生まれた日産自動車の「Disaster Support Mobile-Hub」を中心に紹介していこう。
■日産自動車「Disaster Support Mobile-Hub」
東京オートサロン2024の日産ブースに出展されていた「キャラバン」をベースにした車両。緊急・災害時の防災拠点にもなる支援車両(Mobile-Hub)というコンセプトで、2023 年9 月に発売された「ポータブルバッテリーfrom LEAF」を多数搭載し、避難時のライフラインをはじめ、さまざまな困りごとに対応できる装備を搭載した「災害対応車両」だ。
悪路走行を可能にするヘビーデューティーなエクステリア
エクステリアを見てみると、リフトアップこそされていないが、チッピング塗装のバンパーやサイドプロテクター、マッドテレーンタイヤ、電動ウインチなどが装備されており、そのフォルムはさながらクロカン4WDのようで荒れ果てた被災地でも縦横無尽に走り回れる仕様となっている。また、ルーフにはスペアタイヤやソーラーパネルのほか、サイドオーニングも搭載されているので、いかにも働くクルマという印象を受ける。
リーフのバッテリーを再利用したポータブルバッテリーやスターリンクを装備
インテリアや装備面に目を移すと、これまた防災拠点(ハブ)としての機能が充実している。まず、目を引くのが、リアのスライドドアを引き出し式に変更した棚に収納された「ポータブルバッテリー from LEAF」。トータルで17台搭載されているポータブルバッテリーは、同社のLEAFで使用していたバッテリーを再利用して造られており、製造時のCO2 発生を抑え、持続可能な脱炭素社会の実現に貢献している。
再利用というと寿命などに懸念が出そうだが、繰り返し充電が約2,000回可能となっており、寿命に関しては新品のポータブルバッテリーと比べても遜色ないレベル。そもそもEV用の高性能バッテリーがベースなので、暑さや寒さに強く、-20℃~60℃の環境において車内での使用や保管できるメリットがある。しかも、自己放電が少なく長期保管が可能なので、災害時の非常時用電源として十分活用できるほか、充電はルーフに設置された大型ソーラーパネルで行うので、電力が枯渇する心配もない。
応急処置スペース、トイレ、シンク、コンロなど災害時に役立つ装備も充実
「Disaster Support Mobile-Hub」のリア部分は、「EXPNDING REAR SECTION」と呼ばれる拡張機能を持っており、展開するとケガや病気などに対応するベッド付き応急処置スペース、トイレ&プライベートスペース、シンク、コンロなどが出現する。ノーマルのキャラバンでは、これだけの装備を収納するのは不可能だが、ハッチゲートごと後方へスライドする構造などを採用することで、プラスαの作業スペースまでも確保している。何とも素晴らしいアイデアだ!
ガラス面には各種情報を表示するサイネージモニターを装備
「Disaster Support Mobile-Hub」のリアクオーターガラスやリアガラスは、さまざまな情報を投影できるサイネージモニターとなっている。例えば、リアクオーターには天気予報やニュースといった災害時に必要な情報を投影し、リアガラスには応急処置スペースの順番待ち状況など、各種案内を表示できる。前述の充電機能などともに被災地のハブとしての役割を幅広く受け持つことが可能だ。
■トレーラーハウスも「災害対応車両」として貢献
地震、津波、豪雨などの災害が起こるたびに目をするのが、一時避難場所として使用される体育館や集会所の光景。そこには寝具や食料などは比較的豊富にあるが、電気設備、通信設備、風呂などインフラ系の設備は不足していることが多い。
そんなときに活躍しそうなのがトレーラーハウスだ。この車両は、Aフレームやラダーフレーム構造のトレーラーに、目的に応じたハウス部分を乗せるだけで完成するので、比較的簡単に製作できるメリットがある。しかも、キャンピングトレーラーと同様にけん引して自由に移動できる機動性を持ち合わせているので、ジャパンキャンピングカーショー2024でも、さまざまなタイプのトレーラーハウスが展示されていた。
今回は、東京オートサロン2024やジャパンキャンピングカーショー2024に出展されていた「災害対応車両」について紹介したが、とりわけ日産自動車の「Disaster Support Mobile-Hub」はアイデア満載で、即実践投入できるほどの出来栄えだったのが印象的だった。とかく災害の多い日本では、今後もこのような車両の活躍の場が広がっていくことは間違いないだろう。